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住宅のマネーと制度

2020.06.09

相続税が課される財産とされない財産の違いは?

 相続税は、遺産総額から基礎控除額を差し引いた金額に基づき計算されます。遺産総額を計算するには、プラスの財産について、相続税が課される財産と課されない財産を把握しなければなりません。財産の計上漏れ等がでることなく、争わない遺産分割や正しい相続税計算、効果のある相続対策を行うために、とても重要な論点となります。

ポイント

  1. 相続税が課される財産は、被相続人が亡くなった時点に所有していた財産だけではありません。
  2. 相続税が課されない財産を知ることで、相続対策にも役立ちます。

INDEX

相続税が課される財産

相続税が課される財産といえば、そのほとんどが、被相続人が亡くなった時点に所有していた財産になります。しかし、相続税が課される財産はこれだけではありません。「みなし相続財産」や「被相続人からの贈与財産で一定のもの」も相続税が課される財産に含まれることを押さえましょう。まずは、その内容を簡単にみていきたいと思います。

図1【相続人が亡くなった時点に所有していた財産の一例】
N0 財産名 備考
1 土地・建物 先代名義共有名義の不動産の有無も確認
2 現預金 名義預金※も対象
 ※家族名義の口座をつくり、被相続人がその口座にお金を積立て、管理しているもの
亡くなる直前に引き出した現金やタンス預金も対象
ゆうちょ銀行口座の有無も確認(漏れやすいため)
3 上場株式、投資信託、国債 名義株式※も対象
※被相続人が出資金をだしているが、名義が被相続人以外のもの
4 貸付金・未収入金 友人や会社に対する貸付金など
5 事業用財産・家庭用財産  
6 書画骨董・貴金属など  

(1)被相続人が亡くなった時点に所有していた財産

図1をご参照ください。代表的なものについて、留意点とともに列挙してあります。

(2)みなし相続財産

被相続人が亡くなった時点では手許に所有していないが、被相続人の死亡により受け取れるような財産を、相続税法上、みなし相続財産として、相続税が課されます。代表例として、下記のものがあります。
・被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金
・死亡退職金

なお、この死亡保険金と死亡退職金については、相続人が取得した場合に、非課税限度額(500万円×法定相続人の数)を超える部分のみ相続税が課されます。

(3)被相続人からの贈与財産

生前に、相続人が被相続人から贈与を受けていた場合、その贈与財産が、相続税の対象となるケースがあります。
贈与には、暦年贈与と相続時精算課税贈与の2種類ありますが、相続時精算課税贈与による贈与財産は、もれなく相続税の対象となります。暦年贈与による贈与財産は、相続財産を取得した相続人が、被相続人から相続開始前3年以内に取得した財産のみが相続税の対象となります(贈与税の特例を受けた場合を除く)。

相続対策の観点からは、相続税の対象とならぬよう、早めの贈与実行を心がける必要があります。なお、相続税の対象となった贈与財産が、贈与を受けた段階で贈与税が課されていた場合、その分は、相続税から差し引けますのでご安心ください。

相続税が課されない財産

(1)墓地や墓石、仏壇など

日常礼拝のためのものが前提となりますので、美術品としてや、貸金庫に保管してある純金製のものなどは相続税が課される財産になります。この墓石や仏壇などは、生前に購入し代金の支払いを済ませることで、その分だけ相続財産(預金)が減少するため、相続税対策につながります。

図2 【生命保険契約の死亡保険金の取り扱い】ex)被相続人:父、相続人:母と子の場合
保険契約形態 課税関係 非課税限度額
契約者
(保険料負担者)
被保険者 保険金受取人
母or子 相続税が課される財産
(受取人の固有財産)
適用あり
孫など
相続人以外
適用なし
子に贈与税
母に所得税(一時所得)

(2)死亡保険金や死亡退職金のうち一定額

いわゆる非課税限度額であり、前述の【1】に記載したとおり、500万円×法定相続人の数で計算された金額までは相続税が課されません。ただし、この非課税限度額が使えるのは、死亡保険金等の受取人が相続人の時だけに限られますのでご注意ください。なお、図2に生命保険契約の死亡保険金の取り扱いについて簡単にまとめましたのでご参照ください。

この生命保険金等の非課税限度額については、相続税対策時の検討事項にもなります。現預金を保険金という財産に変えることで、非課税限度額までは相続税がかからないことになるのです。

▼具体例▼ 生命保険契約の内容
契約者/ 保険料負担者:父(被相続人)、被保険者:父(被相続人)、保険金受取人:母(相続人)
生前、父が保険料を支払っており、父が亡くなったときに、母に、死亡保険金として3,000万円おりることになっている。法定相続人は5名。
・相続税が課されない非課税限度額は 500万円×法定相続人5名=2,500万円
・相続税が課される財産(みなし相続財産)は3,000万円-2,500万円=500万円

(3)土地のうち、不特定多数の者の通行の用となっている私道部分については、相続税評価額は0円となるため、実質的に相続税は課されません。

(4)お葬式の際の香典収入についても相続税は課されません。

なお、香典返礼費用については、相続財産から差し引ける債務に含まれません。香典関係については、税金の計算上、考慮しなくてよいことになります。

 相続対策の内容について検討したり、正しい相続税額の計算をするためには、まずは、相続税が課される財産について漏れなく把握する必要があります。財産のたな卸しを行ううえで、テレビCMで流れている「エンディングノート」を使って整理してみるのも一つの手法です。効果的な相続対策の検討が可能となるように、相続税が課される財産と課されない財産を正しく把握しましょう。

※本文で紹介させていただいた内容は概略となります。また、2020年5月23日時点の情報に基づいております。実際のお取引の際には、改めて詳細をご確認ください。

執筆・情報提供

利根川 裕行(税理士)

利根川税理士事務所 代表。
大学卒業後、大手会計システム関連の会社に入社し、約8年間営業に従事。
その後、税理士を目指し会計事務所に転職してから、他業種の法人業務に携わる。
都内税理士法人の資産税部責任者として、多くの資産税案件に携わったのちに、
令和元年12月に、池袋にて独立開業。

Ⓒ2020 Next Eyes.co.Ltd

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