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住宅のマネーと制度

2020.11.30

これからは永く住める家! 長期優良住宅のススメ

Q 家を建てるなら収入を得られる賃貸併用住宅がよいと思っています。
駅に近くない場合でも成立させるための留意点を教えてください。

A 今回のポイント

●「長期優良住宅」とは、長期にわたって安心、快適に暮らせる一定の基準をクリアしていると認定された住宅のことです。
・耐震性、省エネルギー性などの安全性、耐久性能、快適性能のアップ
・劣化対策、維持管理のしやすさや維持保全計画の策定といった、価値を維持する
ための基準
・居住環境の維持向上
といった内容が定められています。

●住宅を「建てては壊す」ではなく「建てて大切に維持していく」ことは、地球温暖化対策にもなり、国としても大きな方針になっています。

●一般的な仕様に比べてコストは高くなりますが、一方で、税金の特例措置の拡充、住宅ローンの金利優遇、地震保険料の割引きなどが利用できます。

INDEX

長期優良住宅とは?認定基準の概要

これまで建物は築年数が経つと評価が低くなり、いずれは土地のみの評価しかなくなるため、遺された子供たちにとって親の住まいが重荷になってしまうケースが社会問題になっています。
今後は、質のよい住宅を建て適切な維持管理をすることで、建物そのものの評価を維持し、子供や孫たちに価値ある資産として住まいを受け継がせていけるようにすることが重要になってきます。

住宅は、建築基準法や所管行政庁が定める条例などの基準に従って建てられます。
長期優良住宅は、その建築基準法で定める一般の基準を上回り、長期にわたって良好な状態で使用できると認定された、いわゆる「長持ち住宅」です。一般的な住宅を上回った、この基準を認定基準と言います。長期優良住宅の認定戸数は年間約10万戸。新築される一戸建て住宅の約4戸に1戸は長期優良住宅の認定を取得しています。

認定基準の概要(新築一戸建ての場合)は、以下の通りです。(表1)

  1. 長期にわたって使用するための構造と設備(劣化対策・耐震性・省エネルギー性・維持管理更新の容易性)
  2. 居住環境への配慮
  3. 良好な居住水準を確保するために必要な住戸面積
  4. 維持保全計画の策定

長期優良住宅認定基準の概要(新築一戸建てのケース)

認定基準項目 主旨 認定基準内容
住宅性能表示における基準(※) 長期優良住宅独自基準
劣化対策 数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できる。 劣化対策等級3 木造の場合
床下・小屋裏に点検の設置、床下空間の有効高さ330mm確保
耐震性 極めて稀に発生する地震に対して損傷のレベルの低減を図る。(改修が容易にできることで継続して利用できるようにする。) 次の①~③のいずれかを満たすこと。
①耐震等級(倒壊等防止)
等級1
限界耐力計算で、木造の場合、
安全限界変形1/40以下

②耐震等級(倒壊等防止)
等級2

③免震建築物であること
維持管理・更新の容易性 内装・設備の維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行える。 維持管理対策等級(専用配管)
等級3
省エネルギー性 断熱性能等の省エネ性能確保 断熱等性能等級 等級4
居住環境 良好な景観の形成、居住環境の
維持、向上への配慮
地区計画、景観計画、条例によるまちなみ等の計画等の内容との調和。
住戸面積 良好な居住水準を確保するに必要な規模 床面積合計75㎡以上、かつ、少なくとも1つの階の床面積が40㎡以上。
維持保全計画 建築時から、定期的な点検・補修等に関する計画の策定。 維持保全計画事項

  • ・構造耐力上主要な部分、雨水の進入を防止する部分、給排水設備
    について、仕様に応じた点検の項目・時期(点検時期間隔10年以内)
  • ・点検の結果、必要に応じて補修等を行うこと。
  • ・地震、台風時に臨時点検を行うこと。
  • ・維持保全の実施期間が30年以上であること。 等

(※)住宅性能表示における基準 : 国に登録された第三者機関が評価を行う、住宅の性能の表示基準。等級や数値で表す。等級は数値が大きいほど、性能が高い。

「長期優良住宅」の認定を受けるためには、必要書類を揃えて所管の行政庁に申請する必要があります。上記認定基準の内容について、行政によって別基準を設けている場合もあり、工事完了後は継続的に点検と報告が義務付けられています。

長期優良住宅の3つのメリットと注意点

長期優良住宅は、以下のようにメリットがあるのは当然ですが、注意すべき点もあります。長期優良住宅にする意義をしっかり理解して、計画の当初から方針を検討しましょう。

メリット

  • 1.性能がよいため、安全・安心・快適な家の実現。
  • 2.維持保全計画とそれに基づく点検・修繕・調査をすることで、
  • 2-①良質な状態を長く保てる。(資産価値の維持につながる。)
  • 2-②修繕、増改築、リフォームがしやすくなる。

上記2つのメリットの結果、

  • ●子供達へ継承する資産として受け継がれやすくなる。
  • ●売却や賃貸時における評価にも反映することができる。(よい条件で売却や賃貸が可能)
  • ●中古住宅の購入者側も建物の質を把握しやすく安心な購入につながる。(中古市場の活性化)

優遇制度の活用ができる

長期優良住宅の認定を受けた住宅は、税の特例、住宅ローンの金利の引き下げや地震保険料の割引などを受けることができます。(表2)

税の特例措置(戸建ての場合)

2021年12月31日までに入居した場合 2022年3月31日までに取得または新築した場合
・所得税(住宅ローン)減税:限度額引き上げ ・登録免許税:税率の引き下げ
控除対象限度額4000万円⇒5000万円 ①保存登記 0.15%⇒0.1%
(控除率1.0%、控除期間10年間、最大控除額500万円) ②移転登記 0.3%⇒0.2%
・所得税(投資型)減税 ・不動産取得税:控除額の増額(新築)
標準的な性能強化費用相当額(上限650万円)の10%を、 控除額 1200万円⇒1300万円
その年の所得税から控除。 ・固定資産税 : 減税措置(1/2)(新築)
適用期間延長 1~3年間⇒1~5年間
●住宅ローンの金利引き下げ
フラット35S
金利Aプラン フラット35の借入金利
当初10年間、年0.25%引き下げ
フラット50
返済期間の上限50年間。
住宅売却の際に、購入者へ住宅ローンを引き継ぐことが可能。
●地震保険料の割引き
●耐震等級(※)割引き
耐震等級2:割引率30%
耐震等級3:割引率50%
●免震建築物(※)割引き
免震建築物:割引率50%
(※)住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく
耐震等級(倒壊等防止)または免震建築物であること。

注意点

■性能がよいぶん建築時のコストが高くつく。

■認定のための手続きが必要。
実際に長期優良住宅の基準を満たした性能であっても、認定を受けなければ長期優良住宅として認められません。手続きは着工前から始まり、着工までに認定を受け通知書を受領している必要があります。

■建築後も維持保全計画に則った点検・修繕・調査→修繕が義務付け。
竣工後は、計画的に点検を行い、適切に補修及び改良工事を行ない、その内容を記録し保存する事が義務付けられています。

具体的な認定基準やその手続き、そして優遇制度の活用の具体的な内容について、各ハウスメーカーは熟知していて対応に慣れています。長期優良住宅に興味がある場合や、より具体的に内容を知りたい場合は、計画の早めの段階で相談することで、検討や判断がスムーズになるでしょう。住宅展示場でモデルハウスを見学しながら気軽にたずねてみてください。

※2020年10月16日時点の情報をもとに作成しております。特例措置等の期限については延長される場合があります。ご計画前に最新の情報を国土交通省などのホームページでご確認ください。

執筆・情報提供

川道 恵子(一級建築士)

(株)住まいと街設計事務所 代表取締役
住宅メーカー設計部にて、戸建住宅の設計業務 デベロッパーにて、マンション等の企画・監理業務を経て設計事務所において不動産開発業務に携わる。土地の活かし方、住宅の間取り提案等、幅広い実績多数。

Ⓒ2020 Next Eyes.co.Ltd

コラムはネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。本記事に掲載しているテキスト及び画像の無断転載を禁じます。

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