2023.11.06
家を建てる費用はどれぐらい必要?建築費とは何を指す?予算の目安について
建物の広告などで見かけることも多い「坪単価」は、住宅建築の際にハウスメーカーを選ぶ際に使われます。しかし、坪単価だけで資金計画を立てても、工事やそれ以外の費用が発生する場合があるため後から想定外の費用がかかってしまったようなケースが起こりやすいです。
そのため注文住宅を建てる際には、どのような支払いが必要なのか事前に理解しておくことが大切です。また土地購入からスタートする場合には、土地と建物にかけるお金のバランスも考えておく必要があります。
本記事では、家を建てるための予算や土地との関係について詳しく解説します。
INDEX
家を建てる際の予算の平均は?
家を建てる際の予算を考えるためには、まずは平均的な予算を把握しておきましょう。住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」の結果をもとに、土地ありで家を建てる場合と土地なしで家を建てる場合の平均費用をご紹介します。
土地ありで家を建てる場合の平均費用
土地あり(すでに土地があり土地購入が不要)で家を建てる場合の平均費用と平均面積は、以下の通りです。
地域 | 価格 | 面積 |
---|---|---|
全国 | 3,194.6万円 | 111.5㎡ |
首都圏 | 3,117.9万円 | 107.7㎡ |
近畿圏 | 3,133.4万円 | 112.5㎡ |
東海圏 | 3,394.4万円 | 116.0㎡ |
その他地域 | 3,223.8万円 | 112.5㎡ |
住宅面積が広い分、東海圏の住宅価格が最も高い状態です。しかし、広い面積を確保しにくい首都圏では、㎡あたりの単価が高い傾向にあります。
土地なしで家を建てる場合の平均費用
土地なし(土地購入が必要)で家を建てる場合の平均費用と平均面積は、以下の通りです。
地域 | 価格 | 面積 |
---|---|---|
全国 | 3,715.2万円 | 122.8㎡ |
首都圏 | 4,015.9万円 | 123.4㎡ |
近畿圏 | 3,990.5万円 | 126.1㎡ |
東海圏 | 3,788.0万円 | 125.2㎡ |
その他地域 | 3,502.3万円 | 121.3㎡ |
土地なしで家を建てる場合、首都圏の価格が最も高くなっています。家を建てるために土地を購入する場合、購入するエリアや規模によってトータルでかかる費用が大きく変わってくる点に注意しましょう。
そのため建築費だけでなく、全体でかかる予算をもとに計画を立てる必要があります。
家を建てるときにかかる費用の内訳
注文住宅を建てる場合の費用は土地の購入代金を除くと大きく「本体工事費用」「その他工事費用」「諸費用」に分けられます(その他、設計費や監理費が別途かかる場合もあります)。「本体工事費用」は建物そのものを建てるためにかかる費用で、一般的に図表1のような内容を指します。
基礎工事 | 住宅全体の土台となる「基礎」を造る工事 |
木工事 | 柱や梁などの加工、現場工事 |
外装工事 | 外壁のサイディングや塗装など |
屋根工事 | 瓦やガルバリウムで屋根を造る工事や雨どいの取り付け工事など |
内装工事 | 床、壁、天井など室内の仕上げ工事 |
左官・タイル工事 | 外壁や内壁などの左官工事や玄関、洗面などのタイル工事 |
建具工事 | ドアやクローゼットの扉などの建具を取り付ける工事 |
給排水設備工事 | 給排水の配管工事 |
住宅設備工事 | システムキッチン、浴室、トイレなどを取り付ける工事 |
電気設備工事 | 配電盤、コンセントなどの取り付け工事 |
仮設工事 | 工事に必要な足場やシート、電気、水道の設置などの工事 |
通常「坪単価」では、本体工事のみをもとに計算しているケースが多いです。ハウスメーカーによって坪単価の計算に含める項目には多少違いがあるので、単純に「坪単価」の数値だけで比較するのではなく、見積りに含まれているものやいないものを確認することが大切です。
「その他工事」には、外構工事(門や駐車場、庭などの工事)など図表2のような工事のが該当します。
外構工事 | 門、塀、駐車場、庭の工事 |
擁壁工事 | 高低差のある土地を購入した場合に、斜面が崩れないようコンクリなどで固める工事 |
解体工事 | もともと住んでいた住宅や購入した土地にある古い建物を解体する場合に行われる工事 |
地盤改良工事 | 地盤が弱い場合に行われる強度を高める工事 |
引き込み工事 | 水道管やガス管などを敷地内に引き込む工事 |
見積りの初期段階では、地盤改良工事などが必要かどうかも分からず、外構工事なども金額はざっくりとしたものになっているはずです。そのため見積りをチェックする際には、今後変動があるかもしれない可能性を念頭におき、少し高めに予算を考えておくことをおすすめします。
「諸費用」については、登記費用や土地の仲介手数料、住宅ローンにかかる融資手数料や保証料など様々な費用が存在します。諸費用は見積りの初期段階では概算でしか出せない点に気をつけましょう。また見積りの項目に含まれているかどうか確認することも重要です。
土地と家にかける予算のバランス
注文住宅では本体工事費用やその他工事費用、諸費用がかかることを考えた上で資金計画を立てる必要があります。特に諸費用は見落としがちなので、気をつけましょう。
諸費用は、土地と建物合わせた金額の6~10%程度かかります。たとえば予算が6,000万円だとしても諸費用に400万円かかるとすると、建物と土地に充てられる金額は5,600万円までとなります。
総予算が決まっている場合には、建物価格を高くすると土地の価格が安くなり、逆に土地の価格が高いと当然建物にかける予算は減ってしまいます。そのため立地を重視するか、建物を重視するかで、予算のバランスは異なります。
たとえば、建物を重視する場合には土地の価格が安くなる傾向にあります。そのため、立地面で不便になる可能性があるでしょう。
また新型コロナウイルス感染拡大に伴い、通勤は週2~3日でそれ以外は自宅で仕事をするような働き方も増えました。そのため通勤に便利な土地より、多少通勤には不便でも間取りを広く取れる建物のほうが好まれるかもしれません。自身のライフスタイルやライフプランを踏まえた資金計画がより必要になっているといえるでしょう。
なお、土地探しはハウスメーカーと一緒に行うことをおすすめします。なぜなら土地探しを自分たちだけで行ってしまうと、土地購入時に資金計画全体が見えておらず、後で想定外の経費がかかる可能性や希望の建物が建てられない可能性があるからです。
建物にかかるお金や資金計画などは、ハウスメーカーに確認しながら進めると良いでしょう。
※2020年11月15日時点の情報をもとにしています
【費用別】建てられる家のシミュレーション
次に費用別に建てられる家のシミュレーションをご紹介します。具体的にどのような家が建てられるのかや、各種費用・ローン返済額について詳しく解説します。
1,000万円台
1,000万円台で建てられる住宅は、一般的に「ローコスト住宅」と呼ばれます。ローコスト住宅の特徴は以下の3つです。
- シンプルなデザインや間取り
- 標準仕様の設備
- 規格型住宅
ローコスト住宅では、外観や間取りをシンプルにしてコストをおさえています。外観は凹凸を少なくして、間取りも部屋数を減らし、水まわりをまとめるなど無駄を省いた設計が特徴です。
またキッチンやバス、トイレなどは、標準仕様の設備が多く採用されています。さらに、事前に用意されたプランに沿って建築する「規格型住宅」が多いです。間取りやデザインの自由度は低くなりますが、コストをおさえやすいメリットがあります。
1,000万円台で家を建てる際のシミュレーションを「土地あり」「土地なし」に分けて解説します。
土地あり | 土地なし | |
---|---|---|
土地代 | ー | 1,000万円 |
建築費用 | 1,500万円 | 900万円 |
頭金 | 200万円 | 200万円 |
ローン借入額 | 1,300万円 | 1,700万円 |
月々の返済額 | 41,741円 | 54,585円 |
※元利均等・35年返済・固定金利1.8%・ボーナス払いなし
家を建てるための土地込みで1,000万円台に収める場合、建物や立地などの選択肢が絞られてしまうと考えましょう。なぜなら首都圏など土地価格が高い地域では、まとまった広さの土地を購入するのが難しいからです。また土地が狭くなったり、利便性が低くなったりする恐れがあるので、気をつけましょう。
一方土地ありの場合は、土地なしの場合に比べて住宅のグレードを高められます。建築費用が1,000万円台後半になれば、ある程度のカスタマイズもできるはずです。
2,000万円台
2,000万円台で建てられる住宅は、1,000万円台のローコスト住宅と比べて、以下のような特徴があります。
- 間取りやデザインの自由度が高くなる
- 設備や仕様のグレードがアップする
1,000万円台のローコスト住宅は規格型住宅が多いため、間取りやデザインの自由度が低いデメリットがあります。2,000万円台になると自由設計の注文住宅も選択肢に入ってくるため、家族の好みやライフスタイルに合わせて理想の住まいを実現しやすくなります。
またキッチンやバス、トイレなども2,000万円台になると、高級感のある設備や最新の機能が搭載された設備を採用できるでしょう。
2,000万円台で家を建てる際のシミュレーションを「土地あり」「土地なし」に分けて解説します。
土地あり | 土地なし | |
---|---|---|
土地代 | ー | 1,500万円 |
建築費用 | 2,500万円 | 1,400万円 |
頭金 | 300万円 | 300万円 |
ローン借入額 | 2,200万円 | 2,600万円 |
月々の返済額 | 70,640円 | 83,483円 |
土地なしの場合、1,000万円台の住宅と同様に建てられる地域は制限されると考えましょう。一般社団法人土地情報センターの「都道府県地価調査」によると、東京・神奈川・大阪は1㎡あたりの土地価格が15万円を超えています。
- 東京都:389,100円
- 神奈川県:183,300円
- 大阪府:152,200円
- 全国平均:75,600円
そのため、100㎡の土地を購入するのに1,500万円以上の資金が必要になります。しかし、上記以外の道府県ならばまとまった広さの住宅を建てられるでしょう。
3,000万円台
3,000万円台で建てられる住宅は標準的な注文住宅に該当し、高級住宅の部類に入る場合もあります。
3,000万円台の家の特徴は、以下の通りです。
- カスタマイズの自由さ
- 高品質な材料と設備
- 良好な立地
3,000万円台の予算では、家族構成やライフスタイルに合わせて、間取りを自由に設計できるのが特徴です。1,000〜2,000万円台の住宅ではカスタマイズに制限がありましたが、3,000万円台であれば好きなようにカスタマイズできるでしょう。
また材料や設備も高品質なものになり、耐久性や機能性に期待しやすくなります。エコな材料やエネルギー効率の良い設備を選べば、ランニングコストも削減できるでしょう。
3,000万円台で家を建てる際のシミュレーションを「土地あり」「土地なし」に分けて解説します。
土地あり | 土地なし | |
---|---|---|
土地代 | ー | 1,500万円 |
建築費用 | 3,500万円 | 2,400万円 |
頭金 | 400万円 | 400万円 |
ローン借入額 | 3,100万円 | 3,500万円 |
月々の返済額 | 99,538円 | 112,381円 |
※元利均等・35年返済・固定金利1.8%・ボーナス払いなし
ローンの借入額が3,000万円台になると、月々の返済額が10万円を超えます。そのため住宅購入の予算を考える際は、単独ローンだけでなくペアローンなども含めて検討してみましょう。
4,000万円台
4,000万円台で建てられる住宅は、一般的に「高級注文住宅」と呼ばれます。4,000万円台の家には、以下のような特徴があります。
- ハイスペックな設備
- 豪華なオプション
- ランドスケープデザイン
4,000万円台の家では、キッチンや浴室などあらゆる設備がハイスペックになり、高級感のある室内になります。完全オーダーメイドの住宅になるため、満足度も高まるでしょう。
また床暖房や全館空調、太陽光発電システムなど豪華で快適なオプションが追加できます。さらに庭や外構もデザインされ、美しいランドスケープが実現できるため外から見ても他の住宅と差別化できます。
4,000万円台で家を建てる際のシミュレーションを「土地あり」「土地なし」に分けて解説します。
土地あり | 土地なし | |
---|---|---|
土地代 | ー | 1,700万円 |
建築費用 | 4,500万円 | 3,200万円 |
頭金 | 500万円 | 500万円 |
ローン借入額 | 4,000万円 | 4,400万円 |
月々の返済額 | 128,436円 | 141,280円 |
※元利均等・35年返済・固定金利1.8%・ボーナス払いなし
4,000万円台の住宅は土地や建物が広くなることに加えて、高級な素材や設備を導入するケースが多いです。しかし、評価額が高くなるため、税金が高くなる可能性に注意しましょう。
そこで住宅を建てる前に、いくらの税金がかかるのかを試算してもらうことをおすすめします。
家を建てる際の費用をおさえるポイント
家を建てる際は、予算オーバーで失敗しないために以下の3つのポイントをおさえておきましょう。
- 優先順位を設定する
- シンプルな設計・間取りにする
- 複数のハウスメーカーを比較する
それぞれ詳しく解説します。
優先順位を設定する
最初に予算を明確にして、何にどれだけの費用をかけるかの優先順位を決めましょう。必要な機能や設備、希望する仕様についてリストアップし、それぞれの重要度を考えながら予算を配分します。
注文住宅のオプションは色々と追加してしまい、予算オーバーになってしまうケースが少なくありません。そこで事前に優先順位を決めておけば、適切な計画を立てられるでしょう。
設備はオーバースペックではないかなど、悩んだ際には優先順位に立ち返って考えてみましょう。無駄な出費を避けて、コストパフォーマンスを意識した計画を立てることが重要です。
シンプルな設計・間取りにする
建物は形状が複雑になるほどコストがかかります。予算をおさえるためには、シンプルで機能的な設計と間取りを選ぶのがおすすめです。
建物に凹凸があるとデザイン面ではおしゃれかもしれませんが、その分コストがかかります。土地の形状にもよりますが、なるべくフラットな作りを意識してみましょう。
また無駄な廊下や通路を減らし、生活空間を確保することも重要です。効率的な間取りにすれば建築面積をおさえられ、建築費用を削減できるでしょう。
複数のハウスメーカーを比較する
複数の工務店やハウスメーカーに相談をして見積りを取ることで、より良い条件で家を建てられる可能性が高まります。工務店やハウスメーカーによって得意としている住宅は異なるため、多くの選択肢を知るためにも幅広く検討してみましょう。
ただし、安価な提案が良いとは限りません。長く住む住宅であるため、品質やアフターサービスも考慮に入れて選びましょう。
また将来のリフォームなど、長期的な付き合いになることを踏まえて考える必要があります。
まとめ
本記事では家を建てる平均的な費用や、費用をおさえるためのポイントを解説しました。住宅はグレードやカスタマイズの自由度によって価格が大きく異なります。1,000万円台で建てられるローコスト住宅があれば、4,000万円台の高級住宅もあります。
費用をおさえて理想の家に住むためにも、家族のなかで優先順位を決めましょう。またハウスメーカーを比較検討すれば、より良い条件で家を建てられる可能性が高まります。様々なハウスメーカーに相談して、理想の家に住みましょう。
執筆・情報提供
岡﨑渉(おかざきわたる)
国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はWebライターとして活動中。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとして主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。宅地建物取引士の資格を保有。
© Housing Stage All rights reserved.
この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。