2020.12.26
幸せな住まいの秘訣は「家事がラク」
Q せっかく家を建てるなら、とにかく家事の手間を省きたいと考えています。そんな家づくりのコツを教えてください
A 今回のポイント
家事効率がよくなると、からだが楽になるだけでなく、家族との時間や自分のための時間を増やすことができます。お仕事を持っている方にとっては、家事の負担は仕事との両立の可否にも関わります。
家づくりに際して家事が楽になるように工夫をすることは、幸せな住まいを実現するために、とても大きな意味があるのです。
そのためのポイントは2つ。「間取り自体の考え方」そして「仕様や設備機器の選択」です。
1)家事を楽にする間取りは動線で考える。
各部屋や水廻りの配置やつながり方を考える際には、そこで暮らす日常の動線をイメージします。その中でも「家事動線」はもっとも効率を重視するべき動線です。家事をする人だけでなく、家族みんなの動線次第では、家事負担をさらに軽減する効果があるのです。
2)住宅の仕様や設備機器の選び方が、家事を楽にする。
掃除や物の管理など、日々の小さな負担の積み重ねが家事の負担を大きくするものです。掃除のしやすさ、汚れにくさ、動作のしやすさ、管理のしやすさは、家づくりにおいて、各部の仕様や住宅設備機器の選び方次第で変わります。最新の住宅設備機器の賢さ(スマートさ)を知って上手に取り入れてみましょう。
INDEX
家事を楽にする間取りは動線で考える。
家の中でもっともよく動くのは、「家事をする人」と言えます。家事を楽にするためには、まずこの家事動線を短くすることを考えましょう。そのポイントは、同時並行あるいは連動して行われる家事は何かを整理してみます。家族構成や暮らし方によって、各ご家庭で多少の違いはあると思いますが、ここでは一般的な例を【表1】に書き出してみました。 現実には、より細々とした家事はたくさんありますが、せめて、おおまかな家事だけでも移動を最小限、もしくはストレスフリーな動き方にできれば、全体として家事の負担感を減らすことができます。
1. | キッチン(料理・後片付け)⇔ 子どもの見守り ⇔ 洗濯 |
2. | 洗濯 ⇒ 干す ⇒ 取り込む ⇒ たたむ・アイロン掛け ⇒しまう |
3. | ゴミ出し |
4. | 買い物 ⇒ しまう |
5. | 子育て・親の介護関係 |
6. | 掃除(片付け ⇒ 掃除機 ⇒ 拭き掃除)・水廻りの掃除 |
7. | 書類の整理(DM処理・手紙・子供の連絡帳・PC作業その他) |
8. | 庭仕事(掃除・植栽手入れ) |
9. | 裁縫 |
10. | 季節の変わり目作業(季節ものの入れ替えなど) |
【表1】の1~5は、同時並行もしくは連動、または子どもを見守るニーズがありそうな家事と動線です。そのようなスペースは、隣接させることが理想です。
家事をしながら子どもや高齢の家族の見守りができれば、様子を見に行き来するムダな動きやストレスも軽減できます。
そしてもうひとつ、できれば実現したいのが巡回性です。家の中をグルっとまわれる間取りにすることで、あっちへ行っては引き返し、こっちへ行っては引き返すという重複動線を減らし、各スペースとのつながりが生まれ、自然な移動が可能になります。
家事を楽にする秘訣は動線以外にも、主婦1人でかかえこまず、家族が自主的に動く姿勢が大切です。家族が「自分のことは自分でやる」「自然に家事を手伝ってくれる」そんな仕掛けを工夫しましょう。
たとえば、洗面所に掃除のモップやぞうきん、ゴミ箱などをしまうスペースを設け、洗面やお風呂上りに、自分で汚した箇所は自分でさっと掃除してもらうのです。【図1】
また、洗濯物をたたむ場所にまとめて置ける棚を設けることで、家族がそこを通ったついでに、自分の洗濯物は自分で取って自分でしまうという仕掛けになります。【図2】
住宅の仕様や設備機器の選び方が、家事を楽にする。
仕様や設備機器の選び方のポイントは3つあります。
拭き掃除がしやすい仕上げ素材
壁や扉の表面材は、拭き掃除がしやすい材料を選ぶとよいでしょう。子供が小さい家庭向けには、クレヨンやマジックの落書きも拭いて落とせる表面材があります。
床のフローリングには、傷に強い被覆を施したものもあります。更にコーティングすることで、より水や薬品、汚れや日光による傷みの進捗を遅らせることができます。
コーティングの施工は、家具を入れる前の新築時にこそおすすめです。
汚れにくい、掃除がしやすい設備機器
家事の中でも特に掃除は負担が大きいです。昨今では、トイレや浴槽に汚れがつきにくい表面材や、継ぎ目をなくした製品が各メーカーから出ています。主婦を悩ませるキッチンのレンジフードの換気扇も、油を一箇所にためたり、ワンタッチで取り外してさっと洗えるなど、各メーカーが清掃のしやすさを競っています。【図3】 掃除の負担は今や設備機器の発達で大きく軽減できる時代になりました。ここ数年で耳にする機会も多くなった、ロボット掃除機を活用する場合は、待機場所のコンセントの設置や段差をなくすなど、利用するための環境整備にも気を付けましょう。
管理しやすい引き出し収納
キッチンだけでなく洗面や居室の収納で、奥行が深い場合は、開けたときに中の物全体が見渡せるよう、引き出しタイプにすることが理想です。【図4】 天井などの高い位置に取り付ける収納だと引出しタイプにはできません。その場合は奥行きは浅めにして物を取り出しやすい工夫をしましょう。
家事効率を考えた間取りや、掃除が楽になる最新の設備機器、これらを実際の住空間に備えた事例は、住宅展示場で見ることができます。あなた自身がそこに立ち、家事をイメージしながら動いてみましょう。家事が楽で幸せな住まいを思い描くことができるはずです。
執筆・情報提供
川道 恵子(一級建築士)
住宅メーカー設計部にて、戸建住宅の設計業務 デベロッパーにて、マンション等の企画・監理業務を経て設計事務所において不動産開発業務に携わる。土地の活かし方、住宅の間取り提案等、幅広い実績多数。
Ⓒ2020 Next Eyes.co.Ltd
コラムはネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。本記事に掲載しているテキスト及び画像の無断転載を禁じます。