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家づくりの雑学

2021.07.15

家事・育児、仕事も無理はしない。 どこまでも自然体で叶える理想の住まい。

妻、母として多忙な日々を送る一方で、雑貨ブランド「LOTA PRODUCT」のデザイナー、イラストレーター、そしてモデルとして幅広く活躍している香菜子さん。仕事と家事、育児をバランスよく両立するための秘訣は「無理をしないこと」だといいます。この春に引っ越しを終えたばかりの新居も、自然体を貫く香菜子さんの思いをそのまま具現化したような、シンプルな中にも穏やかな心地よさに包まれていました。

INDEX

課題解決に向けて試行錯誤を繰り返す

リビングダイニングの大きな窓の向こうには、雲ひとつない澄んだ青空。新居の部屋をぐるっと囲うバルコニーからは、新宿の高層ビル群や東京スカイツリー、東京タワー、さらには羽田空港を飛び立つ飛行機までも望むことができるそう。香菜子さんの新たな住まいは、まるで東京の空を独り占めしたような贅沢な眺望が魅力です。

「この部屋に引っ越しして、人目を気にせずに過ごせることが、こんなに快適だとは思いませんでした。周囲の木々も見渡せるので、朝はバルコニーでコーヒーを飲んだり、夜はワインを飲んだりと、もう1つのリビングのようにここで過ごすことが増えました」

新たな楽しみを見つけた一方、住み始めてから使いづらさに気づくことも。その1つがキッチンだといいます。
香菜子さんの要望で取り付けたIKEAのキッチンは、まだ慣れていないこともあるそうですが、使い勝手や収納の場所などに戸惑うことも多いとか。

「前の家はドイツ製のキッチンだったのですが、使いづらさはあまり感じませんでした。
でも、この新しいキッチンを使い始めたら、引き出しや吊戸棚の使い勝手、シンクの水撥ねなど気になるところがいくつか出てきて……。これは困ったと思って、どうしたら使いやすくなるだろうと、キッチンの真ん中に座ってずっと考え込んでいた日もあったくらい(笑)。
それで改善策が見つかると、急いでIKEAやホームセンターに駆け込んで部品などを調達する。その繰り返しですね。何より、これまで使っていたキッチンの感覚をいったん白紙に戻して、ゼロから使い勝手を覚えていく作業はかなりのストレス……。でも、こればかりは自然と体が覚えていくしかないのでしょうね」
設計士との打ち合わせでは何度も設計図を確認していたものの、そこから使い勝手やサイズ感をイメージすることは難しかったと話す香菜子さん。

「家づくりって本当に難しいですね。実際にできあがったものを前にすると、自分のイメージしていたものと違うなってことも出てくるし。
だから、住宅展示場などに行って、実物に近い物を見てイメージすることはすごく大事だなと思いましたし、そうしていれば、より精度は上がっただろうなと思います」

外で過ごす時間はオンとオフが緩やかに交差する大切なひととき

さらに、新居は前の家よりも少し狭くなるため、居住スペースを優先し、収納スペースは最小限に抑えられました。
香菜子さんは友人たちを招いて自宅でフリーマーケットを開いたり、粗大ごみに出したりと、家の中にあった物を半分近く処分。新居は厳選した物だけをおき、以前よりもさらにすっきりとした空間に仕上がったといいます。

「人生の中で一番断捨離したといってもいいかもしれません(笑)。
今は物を買うときは『本当に必要?』と前よりも考えるようになりましたし、これまで『2個処分したら1個買ってもいい』という暗黙のルールも、『10個処分したら1個買う』くらいに意識が変わりました。
また余分なストックは持たず、なくなったら近くのコンビニに買いに行けばいいと思うようにもなりました。この地域、環境だからできることですが、コンビニは『我が家の倉庫』と思って大いに利用しようと思っています(笑)」

画像(左):アメリカのビンテージのカップボードには、香菜子さんやご主人が購入したお気に入りの食器が並んでいます。

画像(右):玄関収納の一部に作られたニッチには洋書をディスプレイ。ガラスの器の上には、昨年の自粛期間中に生まれたキャラクター「おぱんつ君」のキーホルダーが。

そして、これまでは自宅の1室を香菜子さんのアトリエとしていましたが、今回の引っ越しを機に、ご自宅から徒歩5分ほどの場所に新たにアトリエを構えました。今は朝10時ごろにはアトリエに行き、その日の仕事をこなしているそうです。

「私は、仕事も家事も育児も無理をしないことが一番だと思っています。
それでも気持ちがいっぱいいっぱいになってしまったときは、自分へのご褒美だと思って、美味しいご飯を食べたり、ふらっと箱根などに行ってみたりと気分転換をはかるんです。私はもともと外に出ることが大好きなので、普段からお気に入りのカフェでお茶を飲んだり、買い物をしたりと、1人で過ごす時間を大切にしています。そういう時間は、自分の気持ちを緩めるのと同時に、情報をインプットする時間でもあるから」

お茶を飲みながら眺める洋書や、お店のディスプレイ、洋服がクリエイティブな仕事のヒントになることもあれば、カフェの料理の盛り付けや紙ナプキンの使い方、色使いが生活のヒントになることも。
忙しい合間をぬって過ごすその時間は、香菜子さんにとってはオフのようであり、オンでもある。そして、日々の暮らしの質を高めるためには欠かせない時間なのだといいます。

ベストな住まいを目指し、自分らしくアレンジを加えていく

外で過ごす時間を何よりも大切にしてきた香菜子さんですが、昨年春は新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言により、外出もままならない状況でした。
でも、そんなときも香菜子さんは、「今、この状況でできるベストなことは何だろう?」とポジティブに思考を巡らせます。そして、1個ずつラッピングした手作りの焼き菓子とコーヒーを用意して、ピクニックのように庭で過ごしたり、余っていたファーの端切れを使ってぬいぐるみを作り、「おぱんつ君」という新たなキャラクターを誕生させたりと、その状況だから楽しめることを見つけて満喫していたといいます。

「どれも楽しかったですね。
私がやっていることは、子どものころからあまり変わっていないんです(笑)。
おこづかいで買った飴を袋に詰めて家族に売ったり(笑)、採ってきた草の汁をゼラチンで固めてみたり、生地屋さんで買った布でスカートを作ったり。実家が物づくりに携わっていたことも大きいかもしれませんが、周りに面白い人たちがたくさんいて、子どものころから知らず知らずのうちに創作活動のようなことをしていました。だから、仕事でもついつい作り手側に意識が向いてしまいますし、みんなで1つの作品を作り上げていくことが好きなんです。それが物理的に大変なことであっても楽しいからできちゃう(笑)」

画像(左):玄関に飾られた大きな花のポスターは、ご主人が撮影した写真を加工したものだそう。シンプルな空間に華やかさを添えています。

画像(右):キッチンとダイニングと繋ぐ入口はアール型に。これだけでドラマチックな印象になるから不思議!

新居での生活は始まったばかりですが、将来的に思い描く理想の住まいをたずねてみると、香菜子さんは「タイニーハウス」と答えてくれました。

「以前、テレビでタイニーハウスが紹介されていたのですが、あれこそ、究極の住まいだなって(笑)。私は海のない土地で生まれ育ったので、窓から海が見える環境よりも、窓から木々の緑が見える環境のほうが好きなんです。風通しがよくて光がたっぷりと入って、木漏れ日が降り注ぐ庭のある家が理想。そういう家を地方に建てて、東京にも小さな部屋を借りるという、そんな二拠点生活にも興味があります」

その理想の家が実現するまでは、今の住まいをその時々で常にベストな状態になるように自分らしくアレンジを加えていきたいと話す香菜子さん。その変化していく過程を香菜子さんご自身も楽しみにしているようです。

「今はまず友人たちを招いて、バルコニーでビールを飲みながら、この眺めを一緒に楽しみたいですね(笑)」

【DATA】
家族構成:夫婦+子ども1人
居住形態:マンション(築38年)

【リンク】
インスタグラム
おぱんつ君

編集・執筆:石倉 夏枝
撮影:大崎 晶子

執筆・情報提供

香菜子

1975年、栃木県足利市生まれ。
女子美術大学工芸科陶芸専攻卒業。
在学中にモデルを始める。
1998年、出産を機に引退。
2005年、第二子出産を機に雑貨ブランド“LOTA PRODUCT(ロタ プロダクト)” を設立。母の立場から「こんなものほしい」をかたちに雑貨をデザインし人気を集める。
2008 年よりイラストレーターとしての活動もスタート。
また、モデル業も復帰し、さらなる活躍の場を広げている。
モデルのかたわら2018年7月より架空のホテルVILHELMS (ヴィルヘルムス)を作り、備品などイメージしたプロダクトの制作を開始。2015年、コーディネートブック「普段着BOOK」(主婦と生活社)を出版。たちまち重版となり、シリーズともに好評発売中。近著は2021年3月出版の「ハピネスドリル」(主婦の友社)。

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