2022.03.18
想定外の出費を防ぐには 予算オーバーを防ぎ、家づくりのお金を節約するポイント
注文住宅を建てる場合、予算をオーバーしてしまうことがよく起きます。今回はその原因と対策について考えます。また、家づくりと関係する部分、たとえば住宅ローンなどにおいて、ムダな出費を節約できる場合もあります。合わせて解説していきます。
●注文住宅で予算オーバーになってしまう原因と対策
●住宅購入に関連した、お金の節約ポイント
INDEX
【1】注文住宅で予算オーバーになってしまう原因と対策
住宅購入前には資金計画をきちんと考える必要がありますが、しっかり考えても予算オーバーになってしまうことが起こりえます。今回はその大きな原因のうち2点について解説します。
原因① 諸費用を考えていなかった
注文住宅を建てる際に当初の予算をオーバーしてしまう1つの原因に、「諸費用を考えていなかった」という点があります。住宅を新築するときには登記の費用や金融機関への手数料など、さまざまな費用の支払いが必要になります。
土地を購入して注文住宅を建てる場合の諸費用の目安は、土地代と建物工事代合計の6~10%くらいになります。たとえば予算が5000万円だからといって土地と建物合わせてピッタリ5000万円にすると、諸費用分が予算オーバーとなってしまいます(図表1)。諸費用を含めて5000万円におさまるような資金計画を立てる必要があります。
図表1:予算5000万円の資金計画
原因② 後から設備などをグレードアップしたくなる
諸費用まできちんと考慮して資金計画を立てても、後から建物の仕様を変更するなどして当初の予算をオーバーしてしまう、ということもよくあります。たとえば「キッチンをやっぱりもうワンランク、グレードアップさせたい」というようなことです。住宅は3000万円程度の大きな買い物のため、それに比べて数百万円程度のプラスはあまり高く感じない、ことも影響しているでしょう。
対策としてはまず、どこにお金をかけるべきか、優先順位をつけて考える必要があります。また、後から金額が増えるかもしれないという前提で、当初の予算を少なめに考えておくというのも対策になります。
なお住宅ローンを考える上では、審査に一度通ったあと、借入金額を増やすのは危険。審査がやり直しになり、最悪の場合、増額が原因で落ちてしまうこともあります。逆に、審査に通った後に借入金額を減らすことはそこまで大変ではありません。注文住宅での住宅ローンの申込時には、設備などはグレードの高いものにする前提で、少し高めの金額で審査に申し込んでおくと安心できます。
【2】住宅購入に関連した、お金の節約ポイント
注文住宅で予算オーバーになる原因を見てきましたが、今度は、住宅購入に関連して節約できる部分を解説します。
●住宅ローンを正しく選ぶ
住宅ローンをきちんと比較して選ぶと節約につながる場合があります。図表2は10年固定金利0.625%のA銀行と1.00%のB銀行を比較した例です。A銀行の方が金利は低く魅力的に映ります。でも、11年目以降のA銀行では、金利優遇幅が小さくなることでB銀行より金利が高くなってしまいます。35年返済にする前提では、結果的にA銀行よりも300万円程度、B銀行の方が得になります。
図表2:10年固定金利の返済額比較
借入金額4500万円、返済期間35年、元利均等返済と仮定
A銀行(10年固定) | B銀行(10年固定) | ||
---|---|---|---|
当初 10年 |
適用金利 | 0.625% | 1.000% |
毎月返済額 | 119,316 | 127,028 | |
11年目 以降 |
基準金利の仮定 | 2.341%※ | 2.475%※ |
金利優遇 | ▲0.800 % | ▲1.950 % | |
適用金利遇 | 1.541% | 0.525% | |
毎月返済額 | 133,140 | 119,912 | |
総返済額 | 5,426万円 | 5,122万円 |
※11年目以降は変動金利を選ぶものとし、その時の基準金利は今と同じと仮定しています。
このように、住宅ローンを選ぶ際は、見た目の金利の低さだけで選ぶのでなく、金利優遇の条件など細かいところまでチェックすると、無駄な出費を防ぐことができます。
●生命保険の見直し
住宅ローンを組むと団信(団体信用生命保険)に加入します。ローン契約者が死亡した場合などに保険金が支払われてローン残高が0になり、遺族に借金は残らない仕組みになっています。その分、住宅購入前に入っていた生命保険の保障を減らし、保険料を節約できる場合があります。住宅購入後は保険の見直しを忘れないようにしましょう。
●登記を自分で行なうことで、費用を節約するのは危険
注文住宅の新築には関連してさまざまな登記が必要です。これらの登記を専門家に任せるのではなく、自分で行なうことで費用を節約したいという人もいますが、これは危険な考え方です。
たとえば、住宅が完成すると「表題登記」→「保存登記」・「抵当権設定登記」という順に登記を行なっていきます。もし最初の表題登記の申請に不備があるなどして、予定の期日に完了しないと、その後の保存登記・抵当権設定登記の日程も狂ってしまう場合があります。
金融機関での契約(金銭消費貸借契約)では、融資を実行する日(抵当権設定登記を行なう日)を契約書などに明記しますが、その実行日までに表題登記が完了していないと、融資の実行ができなくなります。そうなると再度契約手続きからやり直す必要が出て、予定していた日に入居できなくなることもあります。登記についてはやはり、司法書士や土地家屋調査士などの専門家に任せた方がいいでしょう。
今回は注文住宅で起こる予算オーバーの原因や節約のポイントを解説しました。諸費用にいてはハウスメーカーなどによく確認して資金計画は考えていく必要があります。住宅ローンについても表面的な情報に惑わされることなく、きちんと調べる必要があります。
ハウスメーカーには提携住宅ローンが用意されているので、ハウスメーカーや提携銀行にも話を聞いてみるとよいでしょう。
※2022年2月25日時点の情報を基にしています
執筆・情報提供
井上 光章(ファイナンシャルプランナーCFP®)
独立系FPとして、住宅購入時の資金計画や住宅ローンのコンサルティングを行なう。
注文住宅を建てる人向けの住宅ローンコンサルティングが得意。
豊富な相談実績を基にした、マイホーム購入時の資金計画や住宅ローンで失敗しない秘訣をお伝えします。
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