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今どきの住まい・暮らし

2023.04.14

―私のとっておきのおうち時間- イラストレーター・津田蘭子さんの 「家は“私”という個性を爆発させた特別な世界」

イラストレーターとして活躍する傍ら、自身が着る洋服を年間100着以上手づくりしている津田蘭子さん。2021年8月、ご主人と3匹の猫たちとともに都心のマンションから移り住んだ新築一戸建ては、蘭子さんならではのチャーミングな遊び心をふんだんに取り入れた住まいへと変化を遂げていました。

INDEX

【1】カラフルな色使いで遊び心をプラスした住まい

生活感のある物が見当たらず、まるでモデルルームのようなご自宅。仕事場を兼ねていることもあり、適度な緊張感も必要な要素だという。
また、1階は防犯面を考慮して掃き出し窓は設けず、最低限の開口に留めている。

10年住んだ賃貸マンションの更新を機に住まいづくりを考え始めたという蘭子さん。当初は中古マンションを購入してリノベーションを検討していたそうですが、タッチの差で購入できなかったり、3匹の猫がネックになったりとなかなか条件の合う物件が見つからず、新築一戸建てへと舵を切りました。

「当時はまだマンション暮らしのイメージが抜けきらず、インテリアもライトグレーを基調としたシャビーな空間を意識していました。でも、実際に住み始めると1階の薄暗さが重苦しくなり、またそれが“自分らしさ”とはかけ離れているようで、ちぐはぐな印象を抱くようになりました」


画像(左):カラフルなイエローでペイントした玄関。2階に洗面所があるため、コロナ禍でトイレ前に設けたセカンド洗面が重宝したそう。

画像(中):2階には在宅ワークの多いご主人の仕事部屋も。普段から使わない物は家の中に溜め込まず、その都度、リサイクルに出しているそうでスッキリ。

画像(右):生活感のあるごみ箱は、キッチンのカウンター下から納戸へ移動。納戸の壁もピンクとミントグリーンでペイントしてアーティスティックに。

それまでも取っ手を付け替えたり、階段の手すりを取り替えるなどのリフォームはしてきたそうですが、住み始めて1年が経ったころ、蘭子さん自らリビングダイニングの壁をペイントすることにしました。

「ここは私たち夫婦の家。誰に遠慮する必要はないし、色が合わなければまた塗り替えればいいんだと思い、まずリビングダイニングの壁をピンクで塗ってみました。そうしたら部屋のイメージがガラッと変わって明るくなったんです。それまで重々しい印象だったヴィンテージ家具の存在感も和らぎました」

住み始めて1年はさすがに我慢したという蘭子さん。
でも、リビングダイニングの壁をピンクに塗り終わった後は、ペイント熱にますます拍車がかかり、
家の中はさらにカラフルになっていく。

このことをきっかけにペイント熱が高まっていった蘭子さん。その後も空いた時間を見つけては、ご主人と一緒に家中を好きな色で染めていきました。

「最初はインテリアのアクセントとして塗り始めましたが、今では白い家具が空間のアクセントカラーになるほど色が溢れていますね(笑)。このカラフルさに『落ち着かないのでは?』といわれることもありますが、私はこの空間が一番落ち着くし、自然と気持ちも明るくなります」

【2】イラストと服づくりの両立が相乗効果を生む

蘭子さんがイラストを描いたり、洋裁をする1階の仕事部屋。
蘭子さんならではの遊び心が、爽やかなミントグリーンの壁やイエローの天井に表現されている。

蘭子さんがイラストレーターとして独立したのは2001年のことです。それから日常のふとした瞬間に心が癒されるイラストを数多く描いてきましたが、10年を過ぎたころから少しずつ物足りなさを感じるようになっていったそう。

「イラストの仕事は大好きですけど、自分が描きたいものとは違うものを描くことも多く、また同じような依頼を受けることも増えていって、どこかで変化を求めていたのかもしれませんね。それで以前から興味のあった服づくりを始めたんです。そしたら、不思議なことにこれまでとは違うイラストの面白さが見えてきました」


画像(左・右上):もとはご主人のコレクションケースだったが、現在は蘭子さんの洋服づくりに欠かせない布やボタンなどを収納する棚として活用。「目の届く場所に飾りながら収納することで、どこに何があるかがひと目で分かるんです」。

画像(右下):壁の色とは異なるイエローで窓枠の内側をペイント。これだけで奥行感が違ってくる。

年間100着を超えるという洋服づくり。イラストレーターの仕事との両立は、さぞや大変なのでは?

「それが全く(笑)。服づくりは自分が着たいものを作ることが大前提なのですが、あとはこの服はどういう風に作るんだろう?という好奇心からです。私の中では、イラストも服も“生み出す”という点で共通しているし、その2つを両立することでバランスが取れているんだと思います。だから、ミシンに触っていない日が続くとだんだん鬱々してくるし、イラストを描いていないとモヤモヤしてくるんです(笑)」

壁をラベンダー色にペイントし、大人っぽさが増したシックな寝室。日当たりがいいので、愛猫たちのお昼寝スペースに。

画像(左):寝室の隣にあるウォークインクローゼットの中には、蘭子さんが手づくりした洋服がぎっしり。

画像(右):枕元に飾られたアートはリサイクルショップでゲットしたもの。「最近はリサイクルショップにはまっています。宝探しのような楽しさがあるんです」。

何かを生み出すことは「人間の本能的な欲求」だと語る蘭子さん。家の中には、そんな蘭子さんのクリエイティビティを刺激するような、数多くのアート作品が飾られています。

蘭子さんの家具選びの基準は「自分でリメイクできること」なんだそう。寝室に置かれたソファや椅子はリサイクルショップで購入し、蘭子さん自ら張り地を替えた。「自分で手をかけた家具はどれもお気に入りです。特にソファなどの大きな家具は、部屋の印象を大きく変えてくれるので、リメイクするのが楽しい(笑)」。

「家にあるアートの多くはリサイクルショップで手にしたものです。リサイクルショップに何回も足を運んでいると、自分の好きなものや惹かれるものが自然と分かってきて、そこでピカッーと光るものに出合えるんです。実は寝室の椅子やソファもリサイクルショップで買ったもので、自分で生地を張り替えたんです」

【3】大好きな物に囲まれて過ごす、その時間すべてがお気に入り

ライトグレーの壁が味気なかったキッチンは、大胆な柄のクロスをDIYで貼ったり、ミントグリーンでペイントして華やかさをプラス。

蘭子さんにとって、この家は生活の場でもあり、仕事の場でもあります。つまり、“自分の世界そのもの”といっても過言ではありません。だからこそ、蘭子さんは居心地のよさを求めて自分流を貫きます。

「以前、随筆家の白洲正子さんの文章にすごく共感したことがあるのですが、そこには『家はどんどん変わっていくものだ』という言葉が書かれていたんです。確かに家は建てて終わりではなくて、自分たちの暮らしに合わせて変えていくことが楽しんだと気づかされました」

「前は電子レンジを置いていたのですが、あの存在感がとても嫌で。思い切って撤去したらスッキリしました(笑)」と蘭子さん。ほかにも、炊飯器やトースター、コーヒーメーカーなどは使わず、土鍋や蒸し器、グリルなどを活用しているそう。また、本来は吊戸棚が付くはずだった壁やカウンターには、お気に入りの物を飾って楽しんでいる。

以前のマンション暮らしでは制約も多く、特にミシンを使うことに躊躇することもあったそうですが、今はそういった制約から解放されて伸び伸びと暮らせるようになったといいます。それは猫たちも同じようで、以前にも増して家の中を活発に動き回るようになったそう。

「家ってものすごくプライベートな空間ですよね。だからこそ、もっと自分らしさを出していい場所で、もっと目に楽しいものや楽しい色に溢れていてもいいんじゃないかなって思います。だから、今もどこを塗ろうかなとペイント熱がムクムクと湧いてくるし、その中で大好きなモダンとヴィンテージのバランスを取りながらインテリアを楽しんでいきたいなと思います」

画像(左):以前は振動を気にしてミシンを使うのも躊躇していたそう。でも、今は時間を気にせず、服づくりに没頭できるのが嬉しいと蘭子さん。

画像(右):階段は愛猫たちのために絨毯張りにリフォーム。この家に越してきてよかったことの1つに、16歳のまーそんさんの運動量が増え、元気に過ごしていることだそう。

既成概念を取り払い、住まい手のセンスがインテリアの隅々に行きわたった津田邸。今では居心地の悪い場所は1つもなく、以前にも増して家にいる時間すべてがお気に入りになったそうです。

住宅展示場では自分らしい住まいづくりのヒントが数多くあります。蘭子さんのような居心地のよい住まいを目指して、住宅展示場に足を運んでみてください。

取材協力

イラストレーター 津田蘭子さん

熊本県出身。武蔵野美術大学短期大学部卒業。2001年からフリーのイラストレーターとして、雑誌、書籍、広告、WEBなどのイラストを数多く手がける。毎日着ている洋服は100%手作りで、年間100着以上の服を作っている。ブログ「ねこもしゃくしも」やインスタグラム、YouTubeなどで「手作り服」を紹介している。著書は「家庭科3だった私が365日、手作り服で暮らしています。」(ワニブックス出版)など多数。

【リンク】
ホームページ(リンク:http://ranko.moon.bindcloud.jp/)
Instagram(リンク:https://www.instagram.com/t.ranko/)
YouTube(リンク:https://www.youtube.com/channel/UCOACvpZ_r8klO6H08aVJOHQ

Ⓒ2023 Next Eyes.co.Ltd| 取材・執筆:石倉 夏枝 撮影:小島 沙緒理

コラムはネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。
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