2023.10.03
新耐震基準はいつから?旧耐震と現行の耐震基準との違いは?
最終更新日:2024/12/03
地震の多い日本で住宅を建てる場合には、耐震性が気になる方も多いのではないでしょうか。住宅における耐震基準では、大規模災害の発生によって旧耐震基準から新耐震基準、現行の耐震基準へと厳格化されました。
本記事では、新耐震基準の内容やいつから施行されているか、旧耐震基準と現行の耐震基準との違いについて解説します。住宅を建てるうえで耐震基準の知識は役立つため、ぜひ参考にしてください。
INDEX
そもそも耐震基準とは?地震に耐える構造の基準
耐震基準とは、建物が地震の揺れに耐えられるために国が定めた最低限クリアすべき基準です。大地震による家の倒壊から、住んでいる人の命を守ることを目的としています。
耐震基準を満たしていないと、建物は建てられません。また既存住宅の耐震基準を確認するには、「建築確認済証」の発行日を調べましょう。
1981年6月1日以降に建築確認されている建物には、新耐震基準が適用されています。マンションの場合は建築確認申請日と竣工日が離れているケースも多いため、竣工日ではなく、建築確認申請日をチェックしましょう。
なお、耐震基準と類似した用語に「耐震等級」があります。耐震等級とは、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」にもとづいて地震に対する建物の強度を示す指標です。
耐震等級は、耐震基準とは異なり任意の制度であり、希望者のみ認定を受けられます。評価は等級1から等級3までの3段階で行われます。
新耐震基準と旧耐震基準、現行の耐震基準(2000年基準)の違いは?
建築物は、建てられた時期によって、耐震性能が異なります。この項では、以下の3つの基準に沿って建てられた建物の、耐震性の違いについてご説明します。
- ● 新耐震基準
- ● 旧耐震基準
- ● 2000年基準
新耐震基準
新耐震基準とは、中古物件の購入を判断する際などでもっとも大切な指標で、1981年に制定されたものです。震度6~7程度の地震でも建物が倒壊しない=人が建物の下敷きにならないように計算された構造基準です。
旧耐震基準に追加して、許容応力度計算と保有水平耐力計算が義務付けられました。これは地震で受ける水平の力に耐える力がどこまであるかを確認するものです。地震発生時に建物の中にいる場合の安全性が向上しています。
新耐震基準で建てられた1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物は、住宅ローンの借り入れの際に「住宅ローン控除」や「不動産取得税の減税措置」を受けることが可能です。フラット35で借り入れを起こすうえでの条件にもなっています。
また、旧耐震基準の建物より地震保険料がお得になります。
旧耐震基準
旧耐震基準は、1950年~1981年5月まで適用されていた耐震基準です。この基準では、震度5の地震に際して、建物が倒壊しないことを目的に制定されていました。
旧耐震基準は、建物の自重の 20%に相当する地震力に対して許容応力度計算を行うものです。
この間、1968年の十勝沖地震を教訓に、1971年に耐震基準の一部が改正され、鉄筋コンクリートの建物のせん断補強基準強化がはかられました。しかし1980年代までの住宅は木造が主流を占めるため、特に大きな変化にはなりませんでした。
震度6以上に対応できなかった旧耐震基準ですが、1978年宮城県沖地震で大きな被害が出たことが、新耐震基準への検討のきっかけとなりました。
2000年基準
2000年基準は現行まで続く耐震基準です。1985年の阪神淡路大震災を教訓にして制定されました。
震度7までの地震対応について、より科学的で正確な基準が設けられ、さらに安全性が高まっています。
四分割法による規定で耐力壁をバランス良く配置し、弱い箇所に力が集中しないように設計します。また、床の剛性測定や、地盤調査の義務付け・地盤に見合った基礎の基準など、地震による損傷や倒壊に強い建物を作り、人的被害をやわらげることに成功しています。
3種の耐震基準の定義
旧耐震基準 | 震度5程度の地震では倒壊・崩壊しない |
---|---|
新耐震基準 | 震度5強程度の地震では軽微なひび割れ程度にとどまり、震度6強から震度7程度の地震でも倒壊・崩壊しない |
2000年基準 |
3種の耐震基準の分類
関連リンク:一戸建ての耐震性で重要なのは〇〇!見るべきポイントを紹介
耐震基準の確認方法
耐震基準を確認する方法は、建築確認申請日によって判断します。正確には建築確認通知書(建築確認済証)に記載された申請日が、正式な決め手の証明書になるのです。
たとえば、旧耐震と新耐震の境目は2024年現在、築年数で40年までであれば問題はないでしょう。しかし1982年の微妙なタイミングであれば、この建築確認申請が頼りとなります。
建築確認申請の日付が昭和56年=1981年の6月1日よりもあとであれば、新耐震基準の建物です。
誤って竣工の築年数を基準にしがちですが、大規模なマンションなどは建築確認申請から竣工までの日にちが離れている場合も多いため、確認済証の正式な確認が必要です。
なお、築年数が古ければ必ず地震に弱いというわけではなく、家を作っている際の耐震基準よりも高い耐震性で建物が作られている可能性もあります。また、あとから耐震補強の工事を行うこともできます。
耐震診断と、耐震補強設計・施工は、建築士に相談して行ってもらいましょう。
耐震基準と耐震等級の違い
両者の違いは簡単にいうと、耐震基準は命を守るもの、耐震等級は建物を守るものです。
建物が倒壊すると、中の人が生き残れる確率は大幅に下がるため、倒壊を防ぐ基準として耐震基準は機能しています。
これに対して、耐震等級は建物の損傷を防ぐかなるべく最小限にとどめ、財産としての家を保持するよう考えられているのです。
耐震等級1の定義は「建築基準法の耐震性能を満たす基準」となっているので、つまり現在の耐震基準(2000年基準)とイコールです。等級2、等級3と進むにしたがって、より壊れにくい、強い家となります。
各住宅メーカーや工務店は木造・鉄骨・鉄筋コンクリートなどの構造を問わず、独自の耐震技術を開発し、低コストで耐震等級を上げるノウハウをめぐって競っています。
以下は各耐震等級によって、どのくらいの性能を持つかを示したものです。戸建ての住宅も普通に耐震等級2や等級3を取得できます。
耐震性の高い家を建てるポイント
家を作るにあたって、耐震性の高い家を建てる工夫はできないものでしょうか。以下は施主の希望が反映される、耐震性強化の代表的なポイントです。
- ● ハザードマップを確認する
- ● 建物構造の強化
- ● 第三者機関の検査
ハザードマップを確認する
地震に強い家を作るためには、建物の構造と同じく、どのような土地(地盤)かも、とても大切な要素です。土地を購入する際には、自治体の発表しているハザードマップで、地震の際の揺れやすさを必ず確認しましょう。
併せて、その地域の古い地名や地形を調べ、川や谷、水の出る柔らかい土壌の場所であったかなどを調べてみるのも良いです。
また、地盤調査を行ったり、その結果をもとに杭を入れるなど強めの地盤改良を行ったりすることもできるので、事前に調査や相談を行いましょう。
建物構造の強化
耐力壁や部材の接合部の金物を増やすことで、建物の耐震性は向上させられます。これを意図的に多めにするよう、設計段階からオーダーしてみましょう。
屋根材や外壁材を工夫して、建物の重量を軽くすることでも、地震に強い家になります。屋根はスレート、壁材はサイディングがおすすめです。
第三者機関の検査
検査だけを専門に請け負っている専門業者に依頼し、一般的な完了検査以外に、施工中の状態で耐震対応の状況をチェックしてもらうことができます。
事前に施工業者に依頼したうえで、接合部の金物の入り方や耐力壁の状態などを確認してもらえば安心です。
以下は、住宅を所有している、あるいは購入を考えている人を対象にした、住宅性能で何を重視するかの調査結果です。複数回答で、耐震性が最重要視されているのが分かります。
「住宅性能」のうち、あなたが特に重視することは?
まとめ
本記事では新耐震基準の内容や、旧耐震基準と現行の耐震基準の違いについて解説しました。新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れで家屋が倒壊・崩壊するのを防ぐために、1981年6月1日から施行された基準です。また1995年の阪神・淡路大震災の被害を受けて、2000年には新耐震基準をさらに厳格化した「現行の耐震基準」が制定されました。
耐震基準は、過去に発生した大地震を受けて、建物が簡単に崩落しないように何度も見直されてきました。現行の耐震基準は、大地震が発生しても倒壊しない基準で建てられるため、安心して家づくりを進めましょう。
執筆・情報提供
矢野 秀一郎
宅地建物取引士。
大学卒業後、不動産会社2社に就職。
時間貸駐車場の開発営業や運用・不動産売買の仲介・新築やリフォームの営業および現場管理・分譲工事のプロジェクトリーダーなどに従事。不動産と建築に幅広く携わった経験を活かし、現在は不動産特化ライターとして記事の執筆や監修を行う。
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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。