2024.05.31
登記簿謄本とは?取得方法や手数料について解説
不動産の取引を行う際は、まず登記簿謄本を確認しますが、謄本は日常見るものではなく、何が書いてあるか分からないのが一般的かと思います。本記事では、登記簿謄本とは何かや取得方法、読み方、手数料などについて解説します。
INDEX
登記簿謄本(登記事項証明書)とは?
不動産の登記簿謄本は土地、建物の所有者の氏名・住所を記載した公式の書類です。新しく不動産を登記したり、既存の不動産の所有者を変更したりする際には、登記手続きが必要となります。
所有者の氏名・住所のほか、所有者の変遷や抵当権などの権利関係の経緯も、登記簿謄本に記録されます。
登記の意義は、不動産に対する権利関係を公正に保つことです。たとえば民法では、所有権を争っている場合、先に登記をした方の権利が優先されるという効力を持っています。
したがって登記するというのは何より重要で、所有者として権利を登記しなければ、第三者に所有者としての権利を主張できません。
つまり、自分が第三者である買い主に不動産を売る前に、先に登記をした誰かが所有者を名乗って売ってしまう「二重売買」が起きる可能性があるのです。
2024年4月から相続登記が義務化されますが、この背景にも、権利関係のあいまいな空き家の発生を抑制するという目的があります。
登記簿謄本は約20年をかけてオンライン化が完了し、現在では管轄以外のどこの法務局でも閲覧や証明書発行が可能です。この証明書データを印刷したものを「登記事項証明書」といい、いままでの紙の登記簿謄本と同様の効力を持ちます。
不動産以外にも企業の基本情報を登記しますが、こちらは「履歴事項全部証明書」といいます。
登記簿謄本の主な用途は、以下をご覧ください。
必要なタイミング | 登記簿謄本の入手方法 |
---|---|
|
発行・取得 |
|
閲覧 |
登記簿謄本の種類
登記簿謄本には4種類あり、用途によって使い分けます。それぞれの記載内容は以下です。
全部事項証明書
登記記録にある不動産の経緯を示す記録が全て記載されています。閉鎖記録に関する記載は含まれませんが、抹消されてから一定期間の記録は表示されます。
現在事項証明書
登記された記録の中で、直近に効力を持っている事項のみが記載された書類です。過去の所有者や、抹消されたあとの抵当権などは記載されません。
一部事項証明書
登記記録の一部を記載した証明書です。地権者の多いマンションの敷地権の詳細などを出力すると記録が多すぎる場合などに利用します。
閉鎖事項証明書
閉鎖事項とは、オンライン化される以前の記載内容や滅失した建物、合筆などによってなくなった土地などの記録です。閉鎖事項を参照したい場合にはこの証明書を利用します。
全部事項証明書を取得しておけば、基本的な経緯は全て辿れますが、大規模のマンションの場合は一部事項証明書にするというところでしょうか。
上記の4種類の証明書のほか、現在の所有者のみを知りたい場合などに、登記事項要約書という簡易的な書類が請求できます。
書類ごとの用途と申請時の伝え方は、下記の表を参考にしてください。
登記簿謄本の種類と申請時の伝え方
種類 | 内容 | 申請時の伝え方 |
---|---|---|
登記事項証明書 登記簿謄本・抄本 | 登記されている情報の全てを記載(閉鎖事項を除く) | ・全ての登記か、現在効力のある登記かを選択して伝える |
一部事項証明書・抄本 | 登記記録の一部を記載 | ・一部とは、どの部分か(対象の物件など)を選択して明示する |
登記事項要約書 (所有者事項証明書) |
所有者の状況(住所、氏名、持分)を記載 | ・どの所有者・共有者についての情報が欲しいかを明記する |
閉鎖登記簿 (コンピュータ化に伴うもの) |
オンライン化で閉鎖された紙の登記の内容 | ・閉鎖登記となった謄本を欲しい旨を明記する |
閉鎖された日から土地は50年間、建物は30年間保存されている | ||
閉鎖登記簿・記録 (合筆、滅失) |
隣接する複数の土地を合併する「合筆」や、建物が失われる「滅失」によって閉鎖された登記の内容 | 合筆や滅失の場合は、いつの登記が欲しいのかを明記する |
登記簿のオンライン化は完了しているのですが、一部にデータ化できずに管轄の法務局で照会しなければ確認ができない記録が存在しています。該当する例は以下です。
- ● 共有者の持分を足しても1に満たない物件。
- ● 同一の地番・家屋番号が複数存在している。
- ● 電子化の際に、何らかの理由で所有者の特定ができなかった。
上記にあてはまる記録は、そもそも不動産として権利関係に問題を抱えている可能性があるため、詳細を調査する必要があると考えられます。
登記簿謄本の取得方法
登記簿謄本の取得は、手数料を支払えばどなたでも可能です。申請書以外に、取得のために提出する書類もありません。
登記簿謄本の取得方法は、以下の3種類があります。
- ● オンライン
- ● 法務局の窓口
- ● 郵送
オンラインでの取得
オンラインを利用して登記簿謄本を取得する場合は「かんたん証明書請求」で、以下の流れで手続きを進めます。
- 1. 法務局のサイトに情報を登録する
- 2. 登記事項証明書の申請書を作成し、送信する
- 3. 手数料をPay-easyに対応したATM、インターネットバンキングなどで電子納付する
- 4. 登記簿謄本を窓口か郵送で取得する
引用:登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です|法務局
引用:かんたん証明書請求の登録方法|法務局
また、もう一つの方法として、「申請用総合ソフト」により請求ができます。申請用総合ソフトで請求書を作成し、請求書情報を登記・供託オンライン申請システムに送信して請求します。
引用:申請用総合ソフトによる請求方法|登記ねっと
オンライン請求の手数料は法務局からの郵送で500円、法務局の窓口に行く場合は480円です。
オンライン申請システムの利用時間は以下です。
月曜日から金曜日 8時30分~21時まで。
(国民の祝日・休日、12月29日から1月3日までの年末年始を除く)
登記情報提供サービスで閲覧:証明書の取得ではなく、閲覧のみ必要な場合は、オンラインの「登記情報提供サービス」で閲覧が可能です。
登記情報提供サービスは一般財団法人民事法務協会が提供するサービスで、手数料は全部事項の請求で、1件につき332円です。
閲覧には利用者登録有無が選べ、登録しておけば次回以降は利用者情報の入力が不要です。
法務局窓口での取得
登記簿謄本を法務局の窓口で取得できます。希望の種類の申請書を記入し、手数料分の金額の収入印紙を申請書に貼付して提出します。
窓口で取得する場合の手数料=印紙代は申請1通ごとに600円です。収入印紙は、法務局の窓口のそばに販売所があるほか、コンビニエンスストアや郵便局などでも購入できます。
オンラインシステムで最寄りの法務局での取得が可能なので、前述の特別な例を除き、不動産の管轄の法務局まで行く必要はありません。
最寄りの法務局は、以下のリンクでご確認ください。
引用:管轄のご案内|法務局
郵送での取得
オンラインを利用せず、法務局に行く時間がない方は郵送の依頼もできます。郵送で登記簿謄本を取得する場合は、以下の手順で行います。
- 1. 法務局のホームページから申請書を印刷し、必要事項を記入する
- 2. 切手貼付済みの返信用封筒・手数料600円の収入印紙貼付の申請書を法務局へ郵送
- 3. 謄本が返送される
法務局からの返送は、郵送より数日~1週間程度かかります。
登記簿謄本取得に必要な費用や書類
登記簿謄本の取得の際は、前述のように特別に必要なものはありません。用途に合った申請書を記入、あるいはWeb上で入力するだけです。
手数料は下記をご確認ください。手数料は全て書類1通につきの価格です。
法務局に収める各種手数料(2013年年4月1日~)
区分 | 手数料額 | |
---|---|---|
登記事項証明書 (謄抄本) |
書面請求 | 600円 |
オンライン請求・送付 | 500円 | |
オンライン請求・窓口交付 | 480円 | |
登記事項要約書の交付・登記簿等の閲覧 | 450円 | |
証明(地図・印鑑証明を除く) | 450円 | |
書面請求 | 450円 | |
オンライン請求・送付 | 450円 | |
地図等情報 (土地所在図,地積測量図,地役権図面,建物図面,各階平面図) |
オンライン請求・窓口交付 | 430円 |
印鑑証明書 | 書面請求 | 450円 |
オンライン請求・送付 | 410円 | |
オンライン請求・窓口交付 | 390円 | |
筆界特定 | 筆界特定書の写し | 550円 |
図面の写し | 450円 | |
手続記録の閲覧 | 400円 | |
登記識別情報に関する証明 | 書面請求 | 300円 |
オンライン請求・交付 | 300円 |
表内の「登記識別情報に関する証明」とは、登記名義人(不動産の所有者)が取引の前に権利の所在をあらかじめ確認しておく際に申請する証明書です。
登記簿謄本の交付申請書の書き方とは
この項では、登記簿謄本を取得する際の、申請書の書き方や注意事項をご説明します。以下が申請用の書式です。
記入する氏名と住所は、名義人ではなく請求者を書きます。請求対象の不動産の表示は地番や家屋番号で記入します。
謄本の取得や閲覧の際は、番地でも索引は可能です。しかし可能であれば土地の地番(権利の範囲や土地の場所を示す番号)や建物の家屋番号(建物を示す番号)が分かっていれば、スムーズに手続きできます。
都市部の物件は地番が住居表示と違う場合も多いため、地番が分からない場合、法務局には備え付けがありますが「ブルーマップ」を閲覧して探しましょう。
ブルーマップは住宅地図と法務局の「公図」を重ねた地図で、図書館やインターネットでも無料で閲覧できます。
地番が分からない場合には、不動産番号(土地や建物固有の13桁の番号)で登記簿謄本の取得や閲覧ができます。とくにオンラインや郵送の申請の場合は、地番や不動産番号を事前に調べておきましょう。
共同担保目録が必要な場合には、上の欄にチェックした該当する物件の種別欄の番号を指定し、全記録か、現在効力のあるものか、担保の番号を指定するか、いずれかの種別を指定します。
共同担保目録とは、別の不動産を担保にしている記録です。抵当権の状況を把握できることがあります。
その下で該当事項にチェックを入れ、前述の4種類の所要事項を記載します。
法務局の窓口での取得の場合は「売却のために所有権確認」「住宅ローンを組むため、抵当権の状態を金融機関に見せたい」など、やりたいことを係員に伝えましょう。
どの様式で申請すればよいかを教えてもらえます。または、何が必要かを不動産会社に相談してみましょう。
登記簿謄本の読み方
つづいて、交付された謄本の読み方をご説明します。以下は謄本の見本ですが、大きく表題部・権利部甲区・権利部乙区・(共同担保目録)に分かれています。
表題部:表題部には土地や建物など、対象となる不動産のプロフィールが記載されています。
表題部の記載事項(土地)
記載事項 | 記載内容 | 備考 |
---|---|---|
不動産番号 | 土地や建物などの不動産を一括して管理するために法務局が定めた固有の番号 | |
所 在 | 土地は丁目か小字まで記載 建物は所在地番まで記載 |
日常で郵送先や住民票などで用いる住居表示とは異なる場合も多い |
地 番 | 法務局が定めた土地の番号 | |
地 目 | 土地の用途を記載 | |
地 積 | 土地の面積を記載 | |
原因及びその日付 (登記の日付) |
登記が完了した日付を記載 | |
敷地権の表示 | マンションの敷地権 | マンションの場合のみ記載される |
建物の登記簿謄本には以下の事柄が記載されます。
表題部の記載事項(建物)
記載事項 | 記載内容 | 備考 |
---|---|---|
家屋番号 | 法務局が定めた建物固有の番号 | |
種類 | 建築の主な材料や屋根の種類及び階数 | 例)木造瓦葺2階建て |
構造 | 建築の主な材料や屋根の種類及び階数 | 例)木造瓦葺2階建て |
床面積 | 建物の各階の床面積 |
権利部(甲区):
不動産の所有権に関する状況が記載されます。甲区は登記の目的に始まり、所有者の住所や氏名などが分かります。
登記の目的には、売買や相続などで所有者が変わる「所有権移転」や注文住宅の新築や、新築物件を購入した際の最初の所有者をあらわす「所有権保存」などを記載します。
権利部(乙区):
不動産の所有権以外の権利が記載されています。所有権以外の権利とは、たとえば抵当権や賃借権、地上権などです。マンションや一戸建てなどを居住目的で購入する際に住宅ローンを組んだ場合は、融資をする金融機関が抵当権を持つ権利者となり、「抵当権設定」がされます。住宅ローンを完済すると、抵当権は抹消できます。
共同担保目録:
共同担保の状況が記載されています。共同担保目録とは、1つの抵当権に対して担保に入っているほかの不動産の一覧表示です。たとえば不動産を購入した際の担保として家屋、土地、その他の不動産が担保となっている状況が分かります。
まとめ
登記簿謄本とは何かや取得方法、読み方、手数料などについて解説しました。
登記の際の申請は司法書士に依頼して代理で行ってもらうのが一般的なため、日常で不動産の登記簿謄本に触れる機会は多くはないでしょう。
しかし前述のように、不動産の権利を証する大切な制度ですので、家づくりや買い替えなどを進める方は、ぜひ基礎的なことを知っておくことをおすすめします。