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2024.05.13

構造計算とは?費用感や必要性に関して徹底解説

家の設計を行ううえで、安全基準の大切な役割を果たすのが、構造計算です。

今回は、構造計算とは何かや費用感、必要性などについて解説します。災害に強い家をつくるための参考に、ぜひ最後までお読みください。

INDEX

構造計算とは

構造計算とは、建物の構造の安全性を物理的に検証し、確認するための計算です。法的に定められている規格に適合しているかを確かめる手段であるほか、災害時の安全上の指標ともなるでしょう。

建物にかかった重さや力によって、建物がどう変形し、どう応力が生まれるのかを計算します。

構造計算を行ううえでは、縦方向だけでなく横方向にもかかる力をもとに計算します。縦方向の力は、外部からの荷重だけでなく、居住中の建物すべての重さが加算される決まりです。

住宅への荷重は2種類

住宅にかかると想定される荷重は、鉛直荷重と水平荷重の2種類があります。鉛直荷重は重力と同じ方向に、縦にかかる力を想定します。水平荷重は、横方向から家が受ける力のことです。

住宅にかかる荷重の分類

鉛直荷重 積雪荷重 建物の上に積もる雪の重さ
固定荷重 建物そのものの自重
積載荷重 屋内の家具調度、人など、床に乗る重さ
水平荷重 地震力 地震の揺れで横にかかる力
風圧力 台風などの横風の力

雪の重さはどのくらいか、イメージが湧きづらいかもしれません。都市部の近郊でも10年に1度くらい、多めの雪が降りますが、その際に屋根に30センチ積もったとしましょう。

30坪の家の屋根の平均的な面積60平方メートルに、30センチの雪が積もると合計6トンで、ミニバンクラス の車3台分・象1頭分にも相当します。

住宅は相当の荷重に耐えられる設計になっていることが分かります。

構造安全性を図る手段は3種類

住宅の構造安全性を確認する方法として、仕様規定、性能表示計算、構造計算の3つの方法があります。

仕様規定とは、壁量計算・壁と配置バランスを知る四分割法・柱と柱頭柱脚の接合方法を知るN値計算法の3つの簡易計算と、8項目の仕様ルールで構成され、すべての木造建築で義務付けられています。

性能表示計算は「住宅の品質確保の促進等に関する法律」=「品格法」に規定されている計算を行う手段です。仕様規定より計算項目が増え、長期優良住宅には性能表示計算が必須となります。

構造計算は、上記2つの方法に加えて、柱や横架材、基礎などの許容応力度計算を行うもので、木造3階建ての設計では必須とされます。

以下の表は、建物の強度を検討する際の検討項目の違いです。構造計算・性能表示計算・仕様規定の順に、厳重な検討がされていることが分かります。

検討の項目(一部)
基準の種別↓ 壁量 部材 地盤基礎
構造計算(建築基準法)
性能表示計算(品確法)
仕様規定(建築基準法)

また、上記のように、より強度を必要とする建物ほど、構造計算が義務付けられていることが分かります。構造計算が最も安全な確認方法といえるでしょう。

構造計算の費用の相場はどのくらいなのでしょう?木造の場合の構造計算の費用は20~30万円となります。

そして構造計算による柱や梁の構造材の補強などを合わせると、「壁量計算」のみの建物よりも、建築費は50~60万円ほど建築費がアップする傾向にあります。

外構や設備などのちょっとした見直しで捻出できると考えれば、安全のために高い費用とはいえないかもしれません。

構造計算の検討項目

建物にかかると想定される荷重が計算できたら、それに耐えるための仕様を検討することが必要になります。

構造計算では、以下の3点についての検討を行います。

  • ● 壁量の検討
  • ● 部材の検討
  • ● 地盤と基礎の検討

壁量検討

壁面は雨風を受け、構造によっては家全体を支える役割を果たすため、構造の安全上で大きな役割を持ちます。

壁量の計算は耐力壁の数や配置の確認から壁の力の検討、壁の配置のバランスの検討、柱の接合方法などの検討を行います。

部材検討

部材の検討では、木造住宅の骨組みである柱や梁の組み方、大きさを決めます。部材は柱、梁、たるき、棟木、土台などの設計を、家の重さ(固定荷重+積載荷重)をもとに検討します。

地盤と基礎の検討

地盤と基礎の検討は、まず家を支えられる地盤かを調査のうえ、必要に応じて地盤補強工事を行います。また、地盤に合った基礎の設計となっているかを検討します。

検討項目の諸要素

壁量検討
  • ・壁量計算
  • ・壁の配置バランス
  • ・柱の柱頭柱脚の接合方法など
部材検討
  • ・柱、梁の設計
  • ・たるき、棟木の設計
  • ・土台の設計
地盤・基礎の検討
  • ・地盤調査
  • ・地盤補強工事
  • ・基礎設計など

構造計算が必要な理由

ここまで繰り返し述べているように、構造計算は3階建てでない限り、木造家屋には法的な義務付けがありません。

家づくりのうえでの構造計算の必要性はどのようなものでしょうか。構造計算の有無によって、いざというときにどのような差が出るかをご確認ください。

構造計算により半壊を防げる

正しい構造計算や耐震等級の取得によって、建物は半壊や全壊の被害を防げます。しかし、「半壊になっても地震保険に入っていれば修繕できるのでは?」と考えるかもしれません。

地震保険の補償額は火災保険の50%、半壊の補償額は契約金額の60%が標準となります。つまり火災保険額面の3割です。この金額では半壊した家屋を修繕することは困難です。

構造計算を行った家か否かで、罹災後スムーズに元の生活に戻れるかの違いが出ることがあると考えましょう。

壁量計算は審査されないことがある

前述のように、構造計算はほとんどの木造建築が対象外です。建築基準法に四号特例という条文があり、対象外の根拠となっています。

四号特例は「500㎡以下、2階建て以下の木造建築物で、建築士の有資格者の設計したものについては、構造設計に関する部分他について、建築主事の審査を要しない」という内容です。

2025年4月から、上記の500㎡は200㎡まで厳格化される予定ですが、それでも200㎡=60.5坪強以上の面積の住宅は、ごく一部でしょう。

また、耐震等級3の建物も、性能表示計算まで行っていれば建築確認が提出できるのが現状です。施主が自覚を持って安全基準についてのオーダーを出さない限り、法令では家の安全は守られません。

自然災害は自己責任

大地震などの自然災害時には、その被災からの復旧は自己責任で行うことになります。

住宅ローンでは団体信用生命保険はありますが、被災して債務が補償される制度はありません。地震保険などでの補償額も限られ、仮に全壊で契約満額補償となっても、それで命が失われては意味がないでしょう。

住まいとその中の生命は、建物の安全性で守ることが一番となります。

建築基準法の四号特例などの貝瀬については、こちらの記事もご参照ください。
建築基準法の改正内容とは?影響と変更点について解説|住宅展示場のハウジングステージ

構造計算が行われない場合の理由

あらためて、構造計算が行われない点について、現状考えられる理由をまとめます。

コストアップ

前述のように構造計算は、50~60万円のコストアップを伴います。

そもそも建築業者も「義務でもない構造計算のコスト上乗せ分で、他社に比べて安くできないなら、構造計算までしないほうがいい」と考えるかもしれません。

大地震などの自然災害で設計・施工者の責任を問われることはないのだし、お金も時間もかからない簡易的な壁量計算で十分だろうとなってしまうのです。

建築基準法による勘違い

建築基準法にかなった家づくりなのだから、基準を満たしていると考えるケースも多いでしょう。しかし現状の建築基準法は、安全上最低限の基準と考えるのが正解です。

近年の大規模な災害の増加によって防災意識が高まり、不動産の購入の際には地域のハザードマップを確認するのが普通のこととなりました。

地震の場合、地盤の状況に左右されることはもちろんあります。しかし被災地の写真を見て、同じような築年数の家の損壊の度合いに差が出ていると、考えさせられることはあるでしょう。

構造計算を行い、部材や構造を工夫することで、メーカーによっては想定を超えた最大級のマグニチュードも想定したプランも存在します。家が倒壊するまでに避難が間に合って、命が助かるように想定し、設計されています。

木材の強度が不明

構造計算では、部材の検討の際に、使用する木材の強度という要素がありますが、この強度があいまいなために、構造計算を行う意味に懐疑的な人もいます。

JAS(日本農林規格)に、強度等級という基準があります。この基準をクリアした構造用集成材を利用すれば、強度の点ははっきりできるでしょう。

また、JIS(日本産業規格)では、ヤング係数という木材の強度基準があります。この係数で強度が高いのは高価なヒノキなどより、大量に流通している米松などが勝るといいます。

まとめ

構造計算とは何かや費用感、必要性などについて解説しました。建築業者が構造計算を行わないケースの要因として、コストアップに見合うメリットを施主に感じてもらえない、という点があるでしょう。

つまり家づくりをする方の意識で、安全に対する予算の割り振りが変わることになります。設計の段階で安全性の違いを知ったうえで、構造計算を依頼し、仕様なども選びましょう。

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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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