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住宅のマネーと制度

2024.10.17

自宅兼店舗とは?間取りの工夫や事例、費用の目安などを徹底解説!

職住接近、テナント家賃などさまざまなメリットが考えられる自宅兼店舗ですが、公私の区別や法令の基準など、作るうえで注意すべき点があります。

土地活用と住まいづくりの両方を知る必要があるのが、自宅兼店舗です。とはいえ、住宅ローンで店舗や事務所が持てる点は大変魅力的で、積極的にトライしたいもの。

本記事では、主に自営に利用する方を対象に、自宅兼店舗の間取りの工夫やおすすめの事例、費用の目安などを解説します。これから自宅兼店舗をお考えの方は、参考にしてください。

INDEX

自宅兼店舗とは?

自宅兼店舗は店舗兼住宅ともいい、自宅と同一建物内に店舗や、不特定多数の人が出入りする事務所を設け、双方が行き来できる構造の家屋です。一方、双方が独立している建物を店舗併用住宅 といい、自宅兼店舗とは建てられる場所の用途地域指定が異なっています。店舗併用住宅はテナントとして賃貸事業を営むこともできます。

店舗の用途として多いのは、カフェや食堂、小売店舗、美容室やネイルサロンなどでしょう。

自宅兼店舗のメリットで代表的なのは以下です。

  • ● 仕事と家事・育児の両立の助けとなる
  • ● 建築費などを経費に計上できる
  • ● テナント料を払わずに済む

以下は、自営・在宅ワークにおけるモチベーションの理由を尋ねたデータです。通勤時間ゼロで時間の使い方が自由になること、育児、家事とある程度の両立が可能な点が挙げられています。

自宅兼店舗でおすすめの間取り・工夫

自宅と店舗を兼ねる場合、間取り次第で暮らしやすさや店舗としての良さに違いが出ます。おすすめの間取りや工夫をご紹介します。

時間帯で公私をゾーン分け

治療院のエントランスと自宅玄関を視覚的にも完全に分離し、1階の自宅機能は寝室・浴室など、滞在時間が営業時間帯と被りません。業務の合間に洗濯物を取り込んだり畳んだりできます。2階キッチンはフロアの中心にあり、戸を開けていれば子ども部屋や和室など、全体に目が届きます。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

パントリーを公私共有した飲食店バックヤード

飲食店と居住部分を共有したパントリーでつなげた例です。パントリーからバックヤードを通って店舗の厨房に出られます。自宅側の食材保管の光熱費が節約でき、合理的です。また、平屋のためワンフロアで公私のすべてが完結できます。

平屋

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

ホール・廊下で公私分けを実現

自宅と美容院の店舗の間にホールや廊下で緩衝地帯を設け、お互いの音が伝わらないようになっています。学校から帰宅後の子どもの声も店舗には伝わりません。リビングは2階で、店舗と反対側にあるため、休日の営業時も、家族の生活音が店舗に干渉しない構造です。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

生活感をうまく隠した美容室で仕事と子育てを両立

キッズスペースや小屋裏収納も設けた33㎡の立派な美容室の店舗と、吹き抜けを備えた気持ちの良いリビングを両立しています。キッチンと洗面を軸にした家事動線の設計も、とても良く考えられています。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

アプローチまで分けた独立店舗のような兼用住宅

住居とはアプローチまで別々で、接する壁面の少ない設計です。店舗にロフトを設けて資材を置くなどは、スペース効率の追求でしょう。親との同居を視野に入れて1階に和室を設け、お世話をしながら自宅で仕事をするという構想を持たれています。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

エントランスと中庭で自宅を隔絶

事務スペースやミニキッチンを備え、不等定多数の顧客を応接する事務所のための間取りです。おしゃれな専用エントランスや中庭が背後にある自宅の存在を感じさせず、顧客に安心感があります。洗濯が夜間になるため、浴室や洗面所を含め、2階に配置されています。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

北東角のサロン・南に開けるプライベートエリア

北東角の通り沿いにサロン店舗と駐車場を配して、一見のお客様にもアピールできる間取りです。植栽で生活感やお客様の視線をうまくさえぎりながら、南側はウッドデッキや和室を含め、プライベートエリアとしてフル活用しています。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

公私は分けません!2階のネイルサロンスペース

2階にサロンスペースを設けた例です。日中の2階は家族は誰も利用せず、予約制で営業時間も限られるので、あえて2階としました。専用玄関もなく割り切った構造です。住居としては、家事動線や収納スペースなど、妥協のない作りになっています。

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

自宅兼店舗の間取り事例と建築費の目安

この項では、自宅兼店舗の間取り事例と建築費の目安などを解説します。費用の各項目は、立地や建材費、設備のグレード等で変動するため、あくまで目安です。

カフェ・飲食向き自宅兼店舗の事例

店舗上部に居住部分を持たない設計の、51坪3LDKの施工事例です。自宅兼店舗の本体工事費の相場は、坪単価で60〜120万円の範囲であることが多いでしょう。この事例では82万円で計算しています。

希望条件

  • ● 軽量鉄骨造2階建て 3LDK
  • ● 延床面積:51坪
  • ● 坪単価:82万円

費用のシミュレーション

  • ● 本体工事費:4,182万円=82万円×51坪
  • ● 付帯工事費:836万4,000円=4,182万円×20%
  • ● 諸費用  :418万2,000円=4,182万円×10%

建築費の総額:5,436万6,000円

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

美容室・エステサロン向き自宅兼店舗の事例

駅から近い住宅街の中の、コンパクトなサロン自宅兼店舗・30坪3LDKの事例です。完全予約制の営業であれば、店舗のサイズより立地を優先する方法も良いでしょう。

希望条件

  • ● 鉄骨造2階建て
  • ● 延床面積:30坪
  • ● 坪単価:85万円

費用のシミュレーション

  • ● 本体工事費:2,550万円=85万円×30坪
  • ● 付帯工事費:510万円=2,550万円×20%
  • ● 諸費用:255万円=2,550万円×10%

建築費の総額:3,315万円

1階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

2階

間取り図の掲載協力『madree(マドリー)』

自宅兼店舗の経費・維持費はどれくらい ?

店舗で得られた利益は所得税が課税されますが、所得税の節税のために、かかった経費を計上します。自宅兼店舗の経費・維持費で代表的なものは以下です。

  1. 1.ローン返済時の利息
  2. 2.自宅兼店舗の取得・維持費
  3. 3.保険料
  4. 4.管理・修繕費
  5. 5.減価償却費
  6. 6.水道光熱費・通信料
  7. 7.消耗品の購入費
  8. 8.接待交際費
  9. 9.広告宣伝費

上記のうち7.8.9を除く項目は、自宅と店舗の面積使用割合を店舗50%までの割合で決めておき、割合に応じて金額を按分して経費とします。水道光熱費・通信料は最初から分けられている場合、店舗分だけを計上してください。

なお、一般的な規模の自宅兼店舗の場合 、店舗面積の割合が50%を超えた場合、固定資産税の住宅用地に対する軽減措置が適用されず、高くなります。

自宅兼店舗の注意点

自宅兼店舗を作るうえで、以下の点には注意しましょう。

自宅用地として所有していた、あるいは選んだ場所が、商用の立地として適しているかは別です。通りがかりのお客様に負うところが大きい業種は、立地選定を意識しましょう。

店舗の面積が限られるため、事業拡大が難しい点も考える必要があります。また、店舗の分で家の広さが影響を受けること、プライバシーへの影響、公私の区別に配慮が必要な点も、事前に理解しておくべき問題でしょう。

以下は有業者(職業に就いている人)の平均睡眠時間の変遷です。通勤時間や仕事時間の増大、家事・子育てとの両立を通じて、年々少なくなっていることが分かります。

2016年 総務省統計局 社会生活基本調査

業種にもよりますが、仕事に没頭し、職住接近がデメリットとなって睡眠時間が削られないよう注意が必要です。

自宅兼店舗に関する決まり

自宅兼店舗は、法規制や税制、融資について、通常の住宅とはやや異なる点があります。何が異なるかを解説します。

1:建築法上の自宅兼店舗に関する決まり

建築基準法では、業種によって作れる場所を制限していますが、自宅兼店舗(店舗兼用住宅)の場合、単独で店舗や事務所が建てられる用途地域には建てることができます。

また、一定の条件を満たせば住環境としては最も好条件の「第一種低層住居専用地域」での建築が可能です。ただし店舗の面積は50㎡以下・店舗面積が2分の1以下の規制があります。50㎡はかなり小規模の店舗となるため、業種や事業企画の内容によっては、実現が厳しいかもしれません。

用途地域によって店舗の面積上限が変わり、第二種低層住居専用地域では、2階以下かつ床面積が150㎡以内で美容院や店舗、飲食店などを建てることが可能です。第一種中高層住居専用地域の場合は、500㎡以内の店舗や飲食店の建築まで可能となってきます。

このほか地区計画や建築協定など、地域の取り決めによる規制で、店舗の建築が制限されているエリアもあるので、注意しましょう。

なお、前述の店舗併用住宅(店舗と住居が内部で行き来できない)の場合は用途制限が厳しく、以下の9地域でのみ建築が可能 です。

店舗併用住宅が建築可能

住居系 建築可(一部条件あり)
  • ● 第一種低層住居専用地域
  • ● 第二種低層住居専用地域
  • ● 第一種中高層住居専用地域
  • ● 第二種中高層住居専用地域
  • ● 第一種住居地域
  • ● 第二種住居地域
  • ● 準住居地域
商業系 建築可
  • ● 近隣商業地域
  • ● 商業地域

2:住宅ローンの自宅兼店舗に関する決まり

自宅兼店舗で借り入れできるのは、現在一部のネット銀行となります。また、自宅兼店舗で住宅ローンの借り入れを起こす場合は、以下が基礎的な条件となります。

  • ● 店舗(事務所)部分を除く居住部分の床面積が、建物全体の床面積の2分の1以上
  • ● 店舗(事務所)部分は自己の使用目的のみ(テナント賃貸目的はNG)

もともと住宅ローンは居住用目的の建物借り入れが対象であることから、返済期間が事業用の20年に対して最長35年と長くとれ、返済月額が安くて済みます。また、金利も事業目的の建物に比べて低めに抑えられています。したがって、自宅兼店舗でその恩恵が受けられる限度が設けられていると考えましょう。

また、住宅ローンとして借りるものの、一部を事業用として使用することで、審査の内容 が変わってきます。その業種で過去に売り上げが立っていれば審査は通りやすいですが、いままで勤めた会社を退職して新規で事業を始める場合は、審査が辛くなる点は意識しておきましょう。

これは、事業を行うことで貸付金の回収リスクが高まるという見かたによるものです。

審査の際は、一部を店舗として利用することと、店舗は自己利用することを伝え、事業計画などを提出して相談する形となります。

なお、自宅兼店舗は火災保険も高額となり、住宅のみの場合の1.5~2倍の金額となる点も覚えておきましょう。

3:税金の自宅兼店舗に関する決まり

住宅の購入の際に受けられる住宅ローン控除は、住宅としてみなされる部分が対象となります。ただし以下の条件があります。

建物の条件
  • ● 住宅部分の床面積が全体の2分の1以上あること
  • ● 総延床面積(登記上)が50㎡以上あること
  • ● 主たる住居であること(別荘や賃貸する物件でない)
借入金の条件
  • ● 借入期間が10年以上の住宅ローンであること
  • ● 土地とそこに建てる住宅のための借入金であること
借り入れする人の条件
  • ● 住宅を取得してから6カ月以内に居住し、その年の12月31日まで継続して住んでいること
  • ● 控除を受ける年の所得が2,000万円以下
  • ● 特定居住用財産の買換え特例や3,000万円特別控除などを受けていないこと(利用年の要件もあり)

このほか固定資産税は、通常の住宅(専用住宅)と以下の違いがあります。

固定資産税
  • ● 建物:自宅部分の床面積2分の1以上の場合に限り、新築から3年間半額の優遇措置(中古物件の取得の場合はなし)
  • ● 土地:自宅部分の床面積割合4分の1以上2分の1未満の場合に、課税額が2分の1※一定規模以上の建物の例外あり
  • ● 建物内の動産:機械や備品などにかかる償却資産税が加算される

固定資産税は、建物の新築から3年間の優遇は自宅の按分比率が高ければ適用され、土地の課税額は自宅の按分比率が低いほうが優遇措置となります。

理想のお家探しなら、ハウジングステージ

自宅兼店舗や二世帯住宅など、2つの異なるゾーンを併せ持つ住まいは、分かれた部分、共有部分など、図面で見ているだけではイメージがつかみづらいところがあります。細かい仕様まで検討を進めるうえでは、実際に最新の家屋を見学することがおすすめです。

東京・埼玉・群馬など首都圏を中心に、多数の住宅展示場を開催するハウジングステージでは、最新の機能や安全性を備えた、一流ハウスメーカーのモデルハウスをご見学いただけます。

まとめ

主に自営に利用する方を対象に、自宅兼店舗の間取りの工夫やおすすめの事例、費用の目安などを解説しました。

自宅と店舗を併せ持つのは、自営の方にとって魅力的な選択肢です。ブログやSNSでうまく集客し、地域に根差した経営を安定軌道に乗せることは、とてもやり甲斐があるでしょう。

また、家族で助け合いながら家庭と仕事を両立していくきっかけにもなり得ます。メリットとデメリットを良く消化のうえ、成功されることを願ってやみません。

執筆・情報提供

滋野 陽造

保有資格:宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士。
マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産投資に従事。
実務経験をもとに、不動産の購入・売却、住まいの知恵、暮らしの法令などのジャンルを中心に記事の執筆を行う。

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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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