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住宅のマネーと制度

2023.04.27

生前贈与を受けて家を建てる際の非課税制度|要件や注意点を解説

住宅の購入を計画するなかで、親や祖父母からの資金援助を検討している方も多いでしょう。住宅購入での贈与は一定額までが非課税扱いとなるため、税制面でお得に贈与を受けられます。

しかし、非課税で贈与を受けるには要件を満たす必要があることに加え、将来の相続まで考慮しなければなりません。

そこで本記事では、生前贈与を受けて家を建てる際の制度の詳細や注意点を解説します。本記事を読んでいただければ制度の仕組みや受けられる贈与の額が分かり、具体的な資金計画を立てられるでしょう。

住宅購入で親族からの贈与を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

INDEX

生前贈与を受けて家を建てる際に利用できる特例

親や祖父母から住宅購入資金の贈与を受けた場合、一定額までが非課税になる制度があります。制度の名称は「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」です。

本章では「住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置」の概要を解説します。

制度の仕組みを理解することでお得に住宅を建てられるため、内容をしっかりとおさえましょう。

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置とは、親や祖父母などの直系尊属から贈与を受けて自己居住用の家屋の新築・取得・増改築をする際に、贈与の一定額が非課税になる制度です。

制度の適用は期間が定められており、2022年(令和4年)1月1日から2023年(令和5年)12月31日までです。

非課税限度額は物件の性能によって異なります。

  • ● 質の高い住宅:1,000万円
  • ● 一般住宅:500万円

質の高い住宅とは、以下のいずれかに該当する住宅です。

  • ● 断熱性能等級4以上もしくは一次エネルギー消費量等級4以上
  • ● 耐震等級2以上もしくは免震建築物
  • ● 高齢者等配慮対策等級3以上

一般住宅とは質の高い住宅以外の住宅を指します。購入する住宅がどちらに該当するのかを確認して、資金計画を立てましょう。

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の要件

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置は、住宅を「新たに購入」する際に適用される制度であり、既に住宅を購入している場合は適用されません。

なお、既に住宅を購入していたとしても「住宅リフォームの贈与」であれば非課税措置が適用されます。

本章では受贈者と住宅の要件を詳しく解説します。

【受贈者の要件】

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の適用を受けるための、受贈者の要件は以下の通りです。

  • ● 贈与者の直系卑属である
  • ● 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上である
  • ● 贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下である(新築家屋の床面積が40平米以上50平米未満の場合は1,000万円以下)
  • ● 2009年(平成21年)から2021年(令和3年)までの贈与税の申告で「住宅取得等資金の非課税」の適用を受けたことがない
  • ● 配偶者や親族など特別な関係がある人から購入した家屋でない
  • ● 贈与を受けた時に日本国内に住所を有している
  • ● 贈与を受けた年の翌年3月15日までにその家屋に居住する

非課税措置の適用を受けるには、受贈者が直系卑属に該当する必要があります。なお、非課税措置の適用を受けられるのは住宅の名義人のみです。

つまり、夫名義で購入する住宅に対して妻の親や祖父母から贈与を受けたとしても、非課税措置は適用されません。一方、夫婦共有名義の場合は夫婦それぞれが最大1,000万円(合計2,000万円)まで非課税で贈与を受けられます。

【住宅の要件】

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置の適用を受けるための、新築住宅の要件は以下の通りです。

  • ● 日本国内の住宅である
  • ● 住宅用家屋の登記簿上の床面積が40平米以上240平米以下である
  • ● 床面積の2分の1以上に相当する部分が受贈者の居住用である(店舗等併用住宅の場合)

中古住宅の場合は上記以外にも、建築年月日や耐震性能に関する基準が設けられています。

生前贈与の課税制度は2つのタイプがある

生前贈与の課税制度は以下2つのタイプがあります。

  • ● 暦年課税制度
  • ● 相続時精算課税制度

どちらを選択するかで将来相続が発生した際の対応なども異なるため、2つの課税制度の違いを把握しておきましょう。

暦年課税制度

暦年課税制度とは、1月1日から12月31日までの1年間の贈与に対して課税される制度です。贈与者の制限はありませんが、受贈者は基礎控除である年間110万円を超えた部分に対して課税されます。

贈与税率は以下の区分によって異なります。

  • ● 特定贈与財産:直系尊属からの贈与(贈与の年の1月1日時点で受贈者が18歳以上)
  • ● 一般贈与財産:特定贈与財産以外の贈与(夫婦間や兄弟間、未成年の子への贈与など)

各区分の税率は以下の表を参考にしてください。

【特定贈与財産】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円 640万円

【一般贈与財産】

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

参考:国税庁『贈与税の計算と税率(暦年課税)』

たとえば、特定贈与財産に該当する贈与で、父母それぞれから100万円受け取った場合贈与税は以下の通りです。

贈与税:(100万円 + 100万円 – 110万円) × 10% = 9万円

1年間で110万円を超える贈与を受けた場合は課税されますが、110万円以内の贈与であれば非課税であるため、毎年110万円以内の範囲で贈与を受ける方法もあります。

相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、贈与者1人ごとに最大2,500万円を非課税で贈与できる制度です。しかし、贈与した財産は相続時の相続財産に加算される点に注意しましょう。

たとえば、生前に2,500万円の株式の贈与を受けた場合、相続時に株式の評価額が500万円まで減少していたとしても2,500万円分の財産として課税されます。一方、3,000万円に上がったとしても2,500万円分の評価額となるため、価値が上がる資産に対しては有効な贈与方法です。

相続時精算課税制度は暦年課税制度と異なり、60歳以上の直系尊属からしか贈与を受けられません。また、一度相続時精算課税制度を利用すると、以後の贈与では暦年課税が適用されない点に注意しましょう。

相続時精算課税制度でまとまった金額を一度に贈与するよりも、暦年課税制度でコツコツと贈与したほうがお得な場合もあるため、財産総額を踏まえて判断する必要があります。

なお、父から相続時精算課税制度で贈与を受けた場合でも、相続時精算課税制度を使用していない母や祖父母からの贈与では暦年課税が適用されます。

家を建てるための生前贈与で適用される最大非課税額

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置や暦年課税制度、相続時精算課税制度に関する非課税額について解説しました。

家を建てる際は上記の制度を組み合わせることで、より多くの金額を非課税で受け取れます。具体的には以下の通りです。

【暦年課税制度 + 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置】
基礎控除額110万円 + 非課税枠1,000万円 = 1,110万円

【相続時精算課税制度 + 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置】
特別控除額2,500万円 + 非課税枠1,000万円 = 3,500万円

相続時精算課税制度は贈与者1人につき最大2,500万円であるため、他の方からも贈与を受ける場合、さらに多くの金額を非課税で受け取れます。

上記の仕組みを踏まえて、適切に贈与を受けましょう。

家を建てるために生前贈与を受ける際の注意点

生前贈与の仕組みについて解説しましたが、家を建てるための生前贈与では以下のような注意点があります。

  • ● 対象となるのは住宅購入のための「資金」のみ
  • ● 相続発生時に小規模宅地の特例が適用されない
  • ● 遺産分割で揉める可能性がある
  • ● 納税額が0円でも確定申告が必要
  • ● 現金で贈与を受けた場合も必ず申告する

上記の内容を知らずに贈与を受けると、トラブルに発展する可能性もあるため注意点を把握しておきましょう。各項目について詳しく解説します。

対象となるのは住宅購入のための「資金」のみ

住宅取得資金等の贈与税の非課税措置が適用されるのは、住宅購入のために必要な「資金」に限定されます。つまり、贈与者から土地や家屋の贈与を受ける場合には適用されません。

また、住宅購入のための資金であるため、土地のみの購入では適用されません。住宅を建てるための土地を先行購入する場合は、贈与を受けた年の翌年3月15日までに、取得した土地のうえに家屋を新築する必要があります。

上記のような条件があるため、余裕を持って建築するためにも年始の贈与が望ましいでしょう。

相続発生時に小規模宅地の特例が適用されない

親が亡くなり実家の相続が発生した場合、小規模宅地の特例が適用され、相続税が減額されます。

しかし、小規模宅地の特例を受けるには「3年以内に自己所有の家に住んだことがない」という要件を満たす必要があります。自己居住の持ち家に住んでいると上記の要件は満たせないため、特例は適用されません。

遺産分割で揉める可能性がある

兄弟姉妹など自分以外に法定相続人がいる場合、生前贈与の有無で相続争いが発生する可能性があります。

たとえば、自分だけが住宅購入のための贈与を受けていた場合などです。兄弟姉妹の法定相続分は同じであるため、生前贈与の有無に関わらず受け取れる相続財産は同額です。

しかし、上記のような状態では他の相続人は不満があるでしょう。一般的に住宅購入などで受け取った財産は「特別受益」といい、遺産の前渡しと判断されます。

相続でトラブルを避けるためにも、特別受益を加味して遺産分割をする必要があります。

納税額が0円でも確定申告が必要

110万円を超える生前贈与を受けた場合、非課税枠の範囲内であっても確定申告が必要です。

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置であれば、最大1,000万円まで非課税となりますが、確定申告をしなければ特例の適用を受けられません。

贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告書に戸籍謄本、契約書などを添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。

現金で贈与を受けた場合も必ず申告する

現金で贈与を受けた場合、申告しなければ課税されないのではないかと考える方もいますが、税務署から指摘を受けるため必ず申告しましょう。

不動産の登記簿謄本には抵当権額(住宅ローンの借入額)が記載されており、収入に対して自己資金額が多すぎると税務署から疑われるためです。

脱税行為でペナルティを受けると、本来よりも多くの税金を納めなければなりません。

まとめ

本記事では、生前贈与を受けて家を建てる際の制度の詳細や注意点を解説しました。

親や祖父母から住宅購入のための資金援助を受ける場合、住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置が適用されます。

住宅の性能によって最大1,000万円まで非課税で受け取れるため、お得に住宅を購入できるでしょう。また、暦年課税制度や相続時精算課税制度と組み合わせることで、さらに多くの資金を非課税で受け取れます。

しかし、相続時に小規模宅地の特例が適用されない、遺産分割で揉める可能性があるなどの注意点もあるため、制度の仕組みをしっかりと理解したうえで活用する必要があります。

税理士や不動産会社などの専門家とも相談しながら、住宅購入の資金計画を立てましょう。

執筆・情報提供

岡﨑渉(おかざきわたる)

国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はWebライターとして活動中。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとして主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。宅地建物取引士・FP3級の資格を保有。

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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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