2020.06.08
ガーデニングで健康促進 お庭をいろどる「和ハーブ」の魅力
インテリアの模様替えや家庭菜園などに取り組むことは、ひいてはリラックスできる生活空間を整えることにつながり、身体的にもメンタルヘルス的にも高い効果をもたらします。 そこで、今回から「お家健康学」として、家の中を整えることで健康的な暮らしをサポートする知識や知恵をシリーズでご紹介していきます。
INDEX
初回は「和ハーブ」の効能とその育て方についてお伝えします。ハーブというと、ラベンダーやミント、ローズマリーなどを思い浮かべる方も多いと思いますが、これらはもともと西洋から伝わってきたもので、日本には古くから日本の風土で育ってきた有用植物としての和ハーブがあります。「身体と土(環境)は一緒である」を意味する「身土(しんど)不二(ふじ)」という言葉があるように、日本人の身体に長く寄り添ってきた和ハーブの効能や取り入れ方、魅力をご紹介しましょう。
和ハーブの効能を知って取り入れたい健康
和ハーブは古来よりさまざまな使われ方をしてきました。飢饉のときは救荒食(*)や食養生の食材として、肌の保護や治癒のための塗り薬や飲用薬として、ほかにも温浴の際の入浴剤や防虫効果もある染色剤として、化粧品や布の繊維としても活用されてきました。ときには神事で利用したり、防風や防火、防潮、防砂など環境を整える役割も担ってきました。
*飢饉や災害、戦争に備えて備蓄、利用される代用食物のこと。
このように日本人は古来より和ハーブを多用してきましたが、今回はその中でも利用しやすく、健康維持に役立つ食やお茶、入浴剤として利用できる和ハーブについてご紹介します。
なお、健康習慣については、免疫活性に有効といわれる血液・リンパ液の流れの向上、生活習慣病の改善に有効といわれる抗酸化作用、糖質コントロールに効果のあるものを中心にセレクトしています。
お勧めの和ハーブ5選
効果効能が高いことに合わせて、育てやすく見た目も美しい、家庭園芸に適したイチオシのハーブ5種類をご紹介します。
カキドオシ
01 カキドオシ
垣根を通して成長するほど繁殖力が高いことからその名がついたシソ科のつる性多年草で、カーペット状に葉や茎が広がることからグランドカバーとして利用できます。またガーデンでよく使われるグレコマは同属で、西洋カキドオシとも呼ばれています。乾燥させてお茶の葉にするほか、フレッシュな葉や花をそのままお茶にしたり、料理にも利用できます。
●効能
飲用することで糖尿病や腎臓病の改善のほか、胃の糖化を抑えることからダイエットにも効果があるといわれています。主な有効成分は、ウルソール酸、コリン、サポニン、リモネンなど。
●育て方
半日陰の中で湿潤気味に育てるとよいでしょう。
02 カワミドリ
シソ科の多年草の一種で、薄紫色の穂状の花が美しく、ミントに似た香りがすることからコリアンミントと呼ばれることもありますが、日本の薬草です。日本のハーブの代表ともいわれており、薬草茶や入浴剤の基材として古くから用いられています。
●効能
頭痛、風邪、健胃に効くとされ、主な有効成分はメチルキャビコール、アニスアルデヒドです。
●育て方
半日陰~日向でも育ちます。
03 サンショウ
ミカン科の落葉低木で、和食でよく使われるおなじみの和ハーブですが、その最大の魅力は幅広く使えることです。新芽は料理のあしらいや佃煮に、青い実は塩漬けにして実山椒に、花は中華料理でも使われる花山椒にと、買えば値の張る高級食材が自宅で手軽に作れます。
●効能
有効成分であるサンショオールにより、整腸作用や内臓粘膜強化があるといわれます。
●育て方
半日陰で育ちますが、アゲハ蝶が産んだ卵が幼虫となって葉を食べつくしてしまうので、卵を見つけた時点で駆除します。サンショウは雌雄異株なので、実を付けたい場合は雌雄の両方を植えるようにしましょう。
04 クロモジ
クロモジはクスノキ科の落葉低木で、春には可憐な花を咲かせ、強い香りを放つ枝葉が特徴です。枝は生薬名を鳥樟(ウショウ)といい、薬用養命酒にも使われています。葉にも薬効があり、乾燥させてお茶や料理に使うことができます。
●効能
胃腸や自律神経を整えたり、殺菌効果や美肌効果があるといわれます。
●育て方
半日陰に植えて乾燥させ過ぎないように注意しましょう。地味な印象はありますが、ナチュラルな雰囲気を与えてくれるハーブなので、高木の脇などに適度な日陰を作り、脇役として植えるとよさが引き立ちます。
05 クコ
ナス科の落葉低木で、“ご長寿ハーブ”として親しまれてきました。紫色のかわいい花と実が同時に見られます。葉、花、実、根とすべて利用でき、中でも乾燥させた実はほんのり甘酸っぱく、さまざまな料理に使いやすい和ハーブです。
●効能
有効成分ベタインにより、抗脂肪肝や高血圧の予防に効果があるといわれます。また多くのビタミン、ポリフェノールなどの栄養素を含んでいるため抗酸化作用が高く、それが“ご長寿ハーブ”と呼ばれる所以にもなっています。
●育て方
日当たりのよいところが適していますが、生育が早く樹形が乱れやすいので、葉が落ちる2月ごろに剪定して整えましょう。
和ハーブを自宅の庭で育てよう
植えたい和ハーブを選んだら、実際に自宅の庭で育ててみましょう。和ハーブは繁殖力が高いものが多く、特に草本類(木ではない草など)は生育範囲が広がっていくので、舗装やブロック、レンガなどと組み合わせてエリアを区切って育てるといいでしょう。あまりスペースがとれない場合はプランターで育ててみるのもお勧めです。
植える場所は、日当たりや乾燥を好むか好まないかによって判断します。また、料理やお茶などに利用することを考えて、自然栽培の苗木を選び、なるべく肥料や農薬に頼らずに育てるとよいでしょう。
和ハーブは日本人の健康を支えるスパイスとして見直され始めています。そのため、まだ和ハーブを使った庭はそれほど多くはありませんが、住宅展示場ではヒントとなるガーデニングの実例がたくさん見られます。「そこに和ハーブを組み合わせたら」とイメージを膨らませることができるので、ぜひ、住宅展示場で体感してみてください。
執筆・情報提供
吉田美帆(一級建築士)
一級建築士/グリーンライフプロデューサー/インテリアコーディネーター/宅地建物取引士/LOHASスタイリスト(NPO法人ローハスクラブ認定/花育インストラクター(NPOフラワーハートセラピスト協会認定)武蔵工業大学建築学科(現東京都市大学)卒業、大手設計事務所にて小学校・保育園等の設計、マンションディベロッパーにて企画等を経て、2010年SUNIHA UNIHA(サニハユニハ)設立。
執筆やセミナー、講演会など幅広く活躍する。
・1996年 武蔵工業大学卒業設計蔵田賞受賞
・2011年 国際森林年間伐材利用コンクール審査員賞受賞。
・2016年 フランス国際映像コンペ(MCSD)受賞
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