2021.01.12
年始に家族で話そう! 二世帯住宅の必要性
・二世帯住宅注目の理由は、共働きや在宅ワークでの子育てを親に頼りたい。災害時など社会不安の中で家族同居の安心感が求められている。
国の社会保障費の限界に伴う在宅介護への政策シフト。などがあります。
・二世帯住宅の間取りは、「完全分離型」か「部分共用型」が人気。二世帯住宅は、「完全同居型」「部分共用型」「完全分離型」の3つのタイプに分けられます。昔ながらの完全同居型においては、親子世代間における生活スタイルや暮らしの価値観の違いが壁になり敬遠されていました。しかし、完全分離型、またはそれに近い部分共用型のプランにすることで、そうしたデメリットが解消され、二世帯住宅の良さを実現しやすくなっています。
・世帯間の暮らしの両立には、プランや仕様に工夫や配慮が必要です。
そして何よりも、暮らし方について二世帯間でしっかり話し合うことが重要です。
・二世帯住宅における税金面のメリットにも注目。
相続税の小規模宅地の特例が適用できることがあります。完全分離型の二世帯住宅の場合は、不動産取得税や固定資産税の軽減が多くなります。
適用のための諸条件については、早めの段階で専門家に相談することが大切です。
INDEX
将来性を考えた二世帯住宅の間取り
二世帯住宅の間取りには、大きく分けて3タイプあります。(図1)
図1
どのタイプの間取りがふさわしいかは、敷地条件や予算のほかに、両世帯の家族の暮らし方、関わり方、さらには将来の家族の変化も見すえて検討しましょう。
A.完全同居型
玄関をはじめ、リビングダイニングキッチンや水廻りは基本的に1ヶ所ずつで二世帯が共用する形態。二世帯が同じ生活空間で暮らす。
B.部分共用型
玄関は同じで、リビングダイニングキッチンや浴室など一部を共用にしつつも、住戸内で二世帯の生活空間が比較的明確に分かれている。
C.完全分離型
玄関をはじめ全て別々の独立した2戸の住戸が1棟になった状態。1階と2階で世帯を分けるタイプと、壁で隔てる縦割りタイプがある。
接する部分(廊下や部屋のドアなど)を一部開口にして建物内部で直接行き来ができるようにすることもある。
二世帯の暮らしを両立させる工夫
二世帯住宅の設計においては、親子がお互いの生活のリズムを邪魔しないよう、間取りや仕様に工夫が必要です。
上下階の部屋の配置では、子ども部屋の真下に親世帯の寝室を設けると、足音や音楽などが響く可能性があります。そうした配置を避けるか、あるいは1階天井裏に遮音シートや2階床に遮音効果の高いフローリングを使ったりするとよいでしょう。また、2階からの排水管を流れる水の音は、夜中など意外に響くものです。パイプシャフトの位置や遮音に配慮しておくとよいでしょう。(図2)
図2
いずれにしても、二世帯間で、暮らし方についてじっくり話し合い、お互いの価値観や希望をしっかり摺り合せておくことが大切です。
家族の変化に合わせて考える二世帯住宅
子どもが独立して家を出たり、親が亡くなる、あるいは高齢者施設に入居したり、夫が転勤になったりと、数十年の間に家族の人数やライフステージは刻々と変化します。
完全同居型や部分共用型の場合、将来家族の人数が減ると、使わなくなった部屋や水廻りを持て余すことになりかねません。こうした変化に対応できるのは、完全分離型になります。二世帯が完全に独立した住戸なので、世帯の状況によっては賃貸住宅にすることができます。子供世帯に兄弟が居れば、相続後は子供同士で住む事も可能でしょう。(図3)
図3
スープの冷めない距離感を維持しつつ、お互いに干渉しないように暮らせる完全分離型二世帯住宅は、将来の資産の継承もしやすいタイプと言えます。
二世帯住宅の節税効果
|
項 目 |
範 囲 |
軽 減 |
対象 と メリット |
|
相続税 |
①小規模宅地の特例 |
土地 |
330㎡まで |
80%評価減 |
二世帯住宅全般 |
地方税・都税 |
②不動産取得税 |
建物 |
評価控除額 1200万円 (長期優良住宅 : 1300万円 ) |
完全分離型二世帯住宅 ⇒1200万円×2戸=2400万円 |
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土地 |
45,000円または 土地の価格/㎡×1/2×床面積の倍(上限200㎡)×税率3% の大きい方減額 |
完全分離型二世帯住宅 ⇒最低45,000円×2戸=90,000円 または 合計100㎡超でも各戸で100㎡まで減額 計算対象 |
|||
⑤固定資産税 |
土地 |
200㎡まで |
課税標準額1/6 |
完全分離型二世帯住宅 ⇒200㎡×2戸=400㎡まで1/6 |
|
建物 |
120㎡まで |
50%減額 |
完全分離型二世帯住宅 ⇒合計120㎡超でも各戸で120㎡まで減額 計算対象 |
||
⑥都市計画税 |
土地 |
200㎡まで |
課税標準額1/3 |
完全分離型二世帯住宅 ⇒200㎡×2戸=400㎡まで1/3 |
相続税:小規模宅地の特例により最大80%の評価減
二世帯住宅に居住していて相続が発生した場合、小規模宅地の特例により、敷地面積330㎡まで80%の評価減を適用でき相続税の軽減が期待できます。但し、世帯別に区分登記していて生計を共にしていない場合、特例の対象が被相続人の居宅のみになります。ご両親との二世帯住宅の場合、たとえば父親が亡くなった一次相続においては配偶者控除により相続税がかからない場合でも、二次相続時には小規模宅地の特例による節税効果が期待できますので、前提条件等、早めに税理士など専門家に相談しておくことが大切です。
不動産取得税:1戸当たり1200万円控除
家を新築(取得)した際にかかる不動産取得税については、1戸当たりの評価額が1200万円(長期優良住宅1300万円)控除されます。完全分離型で2戸とみなされるタイプの場合は、二世帯住宅の各戸で1200万円ずつの控除が受けられますので計2400万円までの控除になります。土地を取得した場合は、土地の不動産取得税も2戸分の軽減の計算になります。
固定資産税:1戸につき課税評価額が6分の1に軽減
固定資産税は1戸につき土地面積200㎡まで課税標準額が6分の1に軽減されます。完全分離型二世帯で2戸の建物の土地とみなされた場合は、合計で400㎡が軽減対象になります。
建物も3年間、1戸当たり120㎡相当分まで税額が2分の1に減額されるので、合計120㎡超であっても、2戸の場合1戸ずつで120㎡までが減額対象になります。
ただし、不動産取得税、固定資産税などの軽減において2戸とみなされるためには、区分登記している必要があります。その場合、両区分を共有持分にしていないと相続税の小規模宅地の特例の対象が、被相続人の世帯分のみとなるので注意が必要です。なお、2戸に区分登記するには、登記費用も2戸分かかります。いずれのメリットを重視するかは、税理士など専門家に相談して慎重に判断しましょう。
二世帯住宅は、いま、完全分離型が注目されています。但し、ほぼ住宅2戸分のコストがかかることや、敷地の広さも必要になります。お互いの世帯の暮らし方、かかわり方、そして将来も見越して、我が家に合った二世帯住宅の間取りを親子で一緒に考えていきましょう。
住宅展示場には、二世帯を想定したモデルハウスもたくさんあります。実際に目で観て二世帯の暮らしをイメージすることから始めてみてはいかがでしょうか。また、身内の話し合いは、お互いに遠慮があったり逆に感情が先行してしまいがちですが、住宅展示場の営業マンが話し合いに立ち会うことで、冷静に客観的に話を整理できるかもしれませんね。
※本コラムは2020年12月時点での税制や各種制度に基づいたものです。ご計画の前には最新の情報をご確認ください。
執筆・情報提供
川道 恵子(一級建築士)
住宅メーカー設計部にて、戸建住宅の設計業務 デベロッパーにて、マンション等の企画・監理業務を経て設計事務所において不動産開発業務に携わる。土地の活かし方、住宅の間取り提案等、幅広い実績多数。
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