2021.12.23
街中の「ポツンと農地」が大量放出!?今年は土地探しのチャンス到来?
不動産業界で話題となっている生産緑地をめぐる「2022年問題」。
生産緑地法改正によって指定された生産緑地の多くが2022年に指定解除されるという予想から、一気に土地が売却されて市場相場に大きな影響を与えるのではないかといわれています。
そこで今回は、2022年問題を中心に生産緑地や指定解除後の土地探しについて解説します。
住宅を建築するための土地を探そうと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。
INDEX
2022年問題とは?
ここでは、生産緑地と2022年問題について解説します。
「指定解除後は一気に売却されるのではないか」と予想されている理由についても解説しますので、これから土地を探す人は理解しておくとよいでしょう。
生産緑地をめぐる「2022年問題」
生産緑地は、良好な都市環境を確保するために市街化区域内で指定された農地のことをいいます。
市街地の中でも環境や防災などの観点から一定の緑地が必要であるため、要件を満たす農地を「生産緑地地区」として保全しているのです。
生産緑地の指定を受けるメリットの1つとして、固定資産税が軽減されることが挙げられます。
通常、農地は宅地よりも安い固定資産税となっていますが、市街化区域内にある農地は宅地並み評価されるため納税額が高くなります。さらに、三大都市圏特定市の市街化区域内農地の場合は宅地並み課税とされており、一般市町村よりも高い納税額となっているのです。
しかし、生産緑地の場合は農地評価・農地課税となっています。
つまり、市街化区域内であっても、「農地」として課税がされるので支払う固定資産税が安くなるということ。特に三大都市圏特定市の場合は納税額が大きく変わるため、恩恵を受けやすいといえるでしょう。
他にも、生産緑地では相続税・贈与税の納税猶予を受けられる特徴があります。
このように、生産緑地は税制面での優遇措置というメリットがあるのです。
ただし、生産緑地の指定を受けると30年間農地として管理する義務が課されたり、農業用施設以外の建築が禁止されていたりするなどの制約があります。さらに、生産緑地は宅地転用して自由に売却することもできません。
生産緑地の指定を解除するためには、指定から30年経過もしくは主たる従事者の死亡等により市区町村に買取りの申し出を行う必要があります。市区町村や他の農業者等が買取りをしなかった場合は行為制限が解除されて、自由に売買ができるようになるのです。
生産緑地に指定されている間は様々な制約があるため、良い条件の土地であっても市場に流通しにくいといえるでしょう。
1992年に施行された生産緑地法改正により指定された生産緑地が、2022年で30年を迎えます。つまり、生産緑地を市区町村に買取りの申し出ができるようになるということです。
市区町村が必ず土地を買い取ると確約しているわけではないので、買取りされずに生産緑地の指定が解除されて、生産緑地であった土地が市場に流通するのではないかといわれています。
生産緑地指定解除後は売却が進むと予想される理由
先ほど解説したように、税制面での優遇措置が適用されることが生産緑地の指定を受ける大きなメリットだといえます。
しかし、生産緑地の解除要件を満たす期限は30年。特定生産緑地の指定を受ければ同様の優遇措置を受けられますが、引き続き農地として管理していかなければならないなどの制約を受けることにもなるでしょう。
ところで、農業の高齢化と後継者不足の問題が深刻であることは、みなさんも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
今後農業を続けていく意思がなく、後継者もいない人が市区町村への買取り申し出をすると予想されるため、市場への供給も増えるのではないかといわれているのです。
生産緑地は都市部に集中している
国土交通省が公表している「生産緑地地区の都市計画決定状況(令和2年12月31日現在) 」によると、全国にある生産緑地地区決定面積は12,160.10ha。そのうち東京都が2992.59ha、埼玉県が1623.02haなど、首都圏の特定市が約58%を占めています。
もちろん、すべての生産緑地が売却されるわけではありません。
しかし、今まで長らく市場に流通できなかった土地が供給される可能性はあるでしょう。
土地探しは一朝一夕では終わりません。これから住宅を建築するための土地を探す方は、良い条件の土地情報を手に入れたときに購入判断ができるよう、今から準備を始めることをおすすめします。
実際のところ、生産緑地指定解除後に土地の供給は増えるのか
先ほど解説したように、生産緑地に指定されて30年が経過すると市区町村への買取りの申し出ができるようになります。
今後も農地として残したい人などは、「特定生産緑地」の指定を受けることで買取り申し出期限を10年延長することが可能です。
実際のところ、2022年に入ってから土地の供給は増えるのでしょうか。
国土交通省が1992年に指定された生産緑地のある自治体を対象に行った、特定生産緑地の指定見込みについての調査を参照してみましょう。
令和3年9月末の時点で、特定生産緑地に指定済みもしくは指定が見込まれる生産緑地は全体の81%。指定の意向がないのは7%、残りの13%は指定の意向が未定・未把握となっています。ちなみに、調査の数字は面積ベースによるものです。
この調査からは、2022年に多くの生産緑地が市区町村への買取り申し出ができるようになるものの、全体の8割は特定生産緑地の指定を望んでいることが読み取れます。
特定生産緑地に指定されると、生産緑地と同様に建築などの面で制限を受けることになります。したがって、2022年に入ってから土地の供給が「大量に」増えるとは言い難いでしょう。
とはいえ、この調査結果からは指定の意向がない人や指定の意向が未定の人も一定数いることが読み取れます。
特に生産緑地は都市部に多く存在しているため、良い条件の土地が出てくる可能性も考えられるでしょう。そのため、住宅を建築するための土地を探している人は、今のうちから準備を始めておくことをおすすめします。
良い土地が出てきたときに備えて今から準備をしておこう
1992年に指定された生産緑地は2022年に30年を迎えます。
生産緑地に指定されてから30年が経過すると市区町村への買取りの申し出ができるようになるため、市場相場に影響を与えるのではないかという「2022年問題」として度々話題になっていました。
今回ご紹介した調査結果によれば、2022年に指定から30年を迎える生産緑地のうち、特定生産緑地に指定済みもしくは指定が見込まれる生産緑地は全体の81%となっています。したがって、指定から30年を迎えても、引き続き「特定生産緑地」として建築などの制限を受ける土地が多いといえるでしょう。
しかし、これまで生産緑地であった土地が指定解除され、市場に流れる可能性はあるでしょう。
特に生産緑地は都市部に集中しているため、今まで流通していなかった良い条件の土地を見つけることができるかもしれません。
住宅の建築において、土地選びは非常に重要なポイントとなります。
いざ良い土地を見つけたときに購入の判断ができるよう、今から準備をしていきましょう。
筆者・情報提供
小花 絵里(おばな えり)
不動産会社・住宅メーカーで働いていた経験から、不動産について初心者にもわかりやすく解説する不動産ライター。
ブログでは、賃貸併用住宅や戸建て投資に関する記事を更新しています。
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