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住宅のマネーと制度

2022.02.15

「税額の軽減」「期限の延期」などが受けられる! 災害で不動産に損害を受けた場合の税金の手続きとは

地震や台風などの自然災害を原因として、マイホームなどの不動産に損害がおよんだ場合、申告・納税手続き上の支援策のほか、税額の軽減や減免、さらには公的な補助制度などの支援策があります。知っているのと知らないのでは大きな違いです。
今回は、災害で不動産に損害を受けた場合に受けられる、主な支援策の概要についてご紹介します。

ポイント
●災害時に、申告期限や納付期限の延長を希望する場合、申請書の提出を忘れずに行ないましょう。
●所得税の計算上、雑損控除または災害減免法による控除のどちらか有利な方を選択できます。

INDEX

【1】災害時に必要な手続きとは?

災害が発生し日常生活もままならない状況では、たとえマイホームなどに大きな損害を受けたとしても、申告書提出や納税のことなど、考える余裕はないかもしれません。でも、さまざまな期限を延長してくれる支援策が用意されておりますので、ご自身のためにもその手続きをしておくといいでしょう。

■申告・納付期限の延長
災害を理由に期限までに申告・納税ができない場合には、申告書の提出期限(届書などを含む)や納付期限を延長できる制度が用意されています。この制度を利用する場合、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を所轄の税務署長に提出することで、申告・納税ができない状況が解消されてから2カ月以内の範囲で期限延長が認められます。
なお、災害被害が広い地域におよぶ場合などには、国税庁長官が延長する地域と期日を定めて申告・納付期限が延長されます。

■納税の猶予制度
災害を理由に、所轄の税務署長に申請をすることによって、次のとおり納税の猶予を受けることが可能です。

1.損失を受けた日に納期限が到来していない国税の猶予期間
「損失を受けた日以後1年以内に納付すべき国税については、納期限から1年以内」
この場合、災害のやんだ日から2カ月以内に申請する必要があります。
2.既に納期限の到来している国税の猶予期間
「一時に納付することができないと認められる国税については、原則として1年以内」

■そのほかの必要な手続きについて
災害が発生した場合の、おもな税金の救済措置について、図1にまとめましたのでご確認ください。それぞれの税目について、要件を満たせば、税額の軽減または減免措置を受けることが可能となっています。

図1:軽減・減免などを受けられる主な税目

税  目 概    要
所得税・住民税 自然災害などにより、住宅や家財などに損害を受けたときは、一定の要件のもと、
雑損控除」か「災害減免法による税額軽減」のどちらか有利な方法を選択し、
所得税・住民税の全部又は一部の軽減(住民税は、原則、「雑損控除」のみ可)
固定資産税等 災害などにより、滅失または甚大な被害を受けた不動産については、
一定の要件のもと、被災の程度に応じて減免
登録免許税 被災した建物の建替えなどにかかる登録免許について、
自然災害の発生した日以後5年を経過する日までに受けるものについては、
一定の要件のもと免除
不動産取得税 災害などにより滅失または損壊した不動産に代わる不動産を
災害等後3年以内に取得した場合などには、一定の要件のもと、
被災の程度に応じて減免
個人事業税 災害などにより事業用資産や住宅などに損害を受けた場合、
一定の要件のもと、損害の程度に応じ減免

これらの救済措置をうけるためには、下記の手続きが必要になります。

図1 ①の税目については、原則、通常の確定申告を行なうことで受けられます。
図1 ②〜⑤の税目については、減免措置を受けるためには、減免申請書に市区町村から発行された「罹災証明書」などを添付して提出する必要があります。

なお市区町村により取り扱いなどが異なりますので、利用される前に必ず、お住まいの市区町村にご確認ください。

【2】公的な補助や控除も確認しよう

災害によりマイホームなどに大きな損害が生じた場合、公的な補助制度や控除制度を利用できる場合があり、その主なものを下記に簡単にまとめてみました。

■災害時に利用できる主な補助制度
1.被災者生活再建支援制度
自然災害により10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村などにおいて、一定の要件のもと、最高300万円の支援金が支給される制度

2.住宅の応急修理制度
災害により住宅が半壊、半焼の被害を受け、応急的に修理すれば居住可能となる場合に、一定の要件のもと、市区町村が必要最小限度の修理を行なう制度

3.災害援護資金
災害により負傷または住宅などに一定の被害を受けた人のうち、所得金額が一定の範囲内の場合に受けられる災害援護資金の貸付制度(貸付限度額350万円、年利3%、10年償還)

給付金額や要件などの詳細については、ホームページや役所などにてご確認ください。

■所得税・住民税の雑損控除と所得税の災害減免法による税額軽減について
災害により住宅などに損害を受けた場合には、一定要件のもと、確定申告を行なうことで、「雑損控除」または「災害減免法に基づく税額軽減」のどちらか有利な方法を選択した上で、所得税・住民税の全部または一部を軽減することが可能です(図2参照)。

図2:雑損控除と災害減免法による税額軽減の比較

項目 雑損控除 災害減免法
損失の発生原因 災害、盗難、横領による損失 災害による損失
対象となる資産の
範囲など
住宅や家財を含む生活に通常必要な資産 住宅または家財の損失額が、その価額の1/2以上の場合
所得控除額の計算または所得税などの軽減額 【所得控除額】
次の①と②のうちいずれか多い方の金額
①損失額-所得金額の1/10
②損失額のうちの災害関連支出の金額※-5万円
※災害関連支出の金額:災害等により滅失した住宅等の取壊し、現状回復費用など災害に関連して支出したやむを得ない費用
【軽減額など】
(その年分の所得金額)     (所得税などの軽減額)
・500万円以下        →全額免除
・500万円超750万円以下    →1/2の軽減
・750万円超1000万円以下   →1/4の軽減
原則、災害を受けた年分の所得金額が1000万円以下の方に限る

※国税庁HPを参考

「雑損控除」は医療費控除などと同じ所得控除項目であり、所得税および住民税を軽減できます。一方、「災害減免法に基づく税額軽減」は、住宅ローン控除などと同じ税額控除項目であり所得税のみ軽減できます。災害減免法を選択した場合の住民税について、雑損控除の適用要件を満たしていれば、別途、住民税の申告を行なうことで、雑損控除により税額を軽減することが可能です。

■住宅ローン控除の適用について
災害によって住むことができなくなったこれまでの住宅については、住むことができなくなった年以後の残りの適用年においても、引き続き、住宅ローン控除の適用を受けることができます。さらに、その住宅の所在地が、被災者生活再建支援法が適用された市区町村の区域内にあった場合に限られますが、一定期間内に住宅を再取得などした場合の住宅ローン控除についても重複して適用することが可能です。この場合、それぞれの控除限度額のうちもっとも高い金額が控除限度額となります。

災害により予期せぬ損害を受けた場合、税金や再建のための支出を抑えられるような支援策がこれまでにもなされてきました。ここに記載したもの以外に災害に関する税制上の措置もありますので、適用要件などを確認するためにも、国税庁ホームページの「災害関連情報」にてご確認ください。

※本文で紹介させていただいた内容は概略となります。また、2022年2月1日時点の情報に基づいております。実際のお取引の際には、改めて該当制度の詳細をご確認ください。

執筆・情報提供

利根川 裕行(税理士)

利根川税理士事務所 代表。
大学卒業後、大手会計システム関連の会社に入社し、約8年間営業に従事。
その後、税理士を目指し会計事務所に転職してから、多業種の法人業務に携わる。
都内税理士法人の資産税部責任者として、多くの資産税案件に携わったのちに、令和元年12月に、池袋にて独立開業。

Ⓒ2022 Next Eyes.co.Ltd

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