2023.09.25
インナーガレージとは?メリットデメリットや費用を解説
最終更新日:2024/02/21
住宅の購入を検討するうえで、インナーガレージを作るべきか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。そこで本記事ではインナーガレージのメリット・デメリットや費用、作る際の注意点を解説します。
本記事を読めばインナーガレージの特徴が分かり、具体的な間取りを把握しやすくなるでしょう。
INDEX
インナーガレージとは?
インナーガレージとは、建物の内部に組み込まれたガレージです。戸建て住宅では、屋根がない青空駐車場、もしくはカーポートを設置して上部だけ屋根がある駐車場を作るのが一般的ですが、住宅とは別に駐車場を設けるには広い敷地が必要になります。
その点、インナーガレージでは建物の一部を駐車場(ガレージ)にするため、面積の小さな土地でも問題ありません。広い土地面積を確保しにくい都心部では、自家用車を所有している方はインナーガレージを設ける傾向にあります。また、雨風による車の劣化を避けたい方にも人気が高いです。
インナーガレージとビルトインガレージの違い
ビルトインガレージとは、住宅の1階部分に設けられたガレージです。インナーガレージとビルトインガレージはどちらも建物の内部に組み込まれたガレージを指し、それぞれ意味は以下のようにほぼ同じです。
- ● インナー:内側の、内部の
- ● ビルトイン:内蔵の、組み込みの
インナーガレージもしくはビルトインガレージを設けた家をガレージハウスと呼びます。
インナーガレージのメリットデメリット
インナーガレージの意味やビルトインガレージとの違いが分かったところで、本章ではインナーガレージのメリット・デメリットを解説します。メリット・デメリットを踏まえて、住宅にインナーガレージを設けるかどうか検討しましょう。
メリット
インナーガレージのメリットは、以下の通りです。
- ● 土地が狭くても作れる
- ● 容積率の緩和を受けられる
- ● 雨の日も濡れない
- ● 趣味のスペースにできる
インナーガレージは建物の内部に組み込まれるため、通常の駐車場のような広い敷地は不要です。土地を効率的に利用でき、土地の面積が限られた都心部などでは大きなメリットとなります。
また建築基準法によって、延べ床面積の1/5までのガレージは延べ床面積に算入されません。そのため容積率(敷地面積に占める延べ床面積の割合)の緩和を受けられ、実質的な居住スペースを広く確保できます。
さらに建物から直接ガレージに行けるため、雨の日でも濡れない点がメリットです。駐車場としてだけでなく、DIYやアウトドアグッズのメンテナンス場所としても利用でき、趣味のスペースとしても活用できます。
デメリット
インナーガレージのデメリットは、以下の通りです。
- ● 1階にリビングを置きにくい
- ● においや音への対策が必要
- ● 構法が限られる
インナーガレージは建物の1階部分に設けられるため、1階における居住スペースが少なくなります。そのため、リビングやダイニングなどの主要な生活空間は2階や3階などに設けるのが一般的です。階段での移動が増えるため、高齢の方がいる家庭や将来設計まで踏まえて間取りを考える必要があります。
またインナーガレージは建物の内部に作るため、車の出入りやエンジンの音、排気ガスのにおいが入りやすくなります。そのため、インナーガレージの実績が豊富なハウスメーカーに相談して防音や換気の対策を考えましょう。
さらに建物の強度を確保するために、構法が限られる可能性があります。なぜなら1階部分に空洞ができるため、他の部分で強度を補う必要があるからです。とくに間口が狭く建物が細長い住宅などでは、設計の自由度が下がる恐れがあります。
インナーガレージの間取りのポイント
インナーガレージは車からの動線や、収納スペースとしての機能を担います。また、1階の面積のうち相応の割合を占めるので、間取りの構成は事前によく考えましょう。以下のポイントを参考にしてください。
インナーガレージ付きの間取りで注意するポイント
- ● 将来の用途(車のニーズの変化)
- ● ガレージの設置面積(固定資産税)
- ● リビングは1階か2階か
- ● 車から室内への動線
将来の用途を考える
将来的に車の台数が増える、あるいは車を使用しなくなる、車のサイズを小さくするなど、さまざまな状況の変化があるでしょう。
また、バリアフリー対応に備えて、ガレージと居室の行き来をスムーズにできることも大切です。
使わなくなった場合は収納への転用、都市部の場合は時間貸しにすることが考えられます。居室として使う場合、次項で述べる容積率の緩和措置の枠を超える可能性が高く、超えた場合は違法建築となってしまうので要注意です。
面積に注意する
面積の目安として、国土交通省の指針では普通乗用車に必要なガレージの広さは長さ6m×幅2.5m、軽自動車は長さ3.6m×幅2m以上となっています。
収納や趣味のスペースも考慮に入れて広さを検討しますが、広くとりすぎると固定資産税が高くなります。
インナーガレージ部分の床面積が総延べ床面積の5分の1を超えなければ、優遇措置によって固定資産税はかかりません。固定資産税を抑えたい場合、5分の1を超えないように検討しましょう。
また、ガレージの電動シャッターなどの設備について、評価額に基づく固定資産税が課せられる点を事前に知っておきましょう。高価な設備は評価額が上がります。
固定資産税は所有期間中を通じて課税され続けるため、よく考えて検討するべき部分といえるでしょう。
リビングは1階か2階か
床面積が20坪台の家は、ビルトインガレージを設けた場合リビングを2階にするケースが増えます。
とくに住宅密集地の場合、2階にリビングを設けることで採光がより明るく、通風もよくなるメリットがある反面、2階への荷物の搬入が増えます。
高齢化にともなって、荷物を2階に運ぶ行為は身体の負担となりますので、事前に考えておきましょう。エレベーターの設置も考えられますが、約1坪のスペースが必要となります。
車から室内への動線を考える
日常の買い物を車でおこなう場合など、インナーガレージから室内への動線は、間取りのポイントとなります。
室内への移動や荷物の搬入、車の出入り口やトランクの開閉なども意識して、間取り設計を検討してください。
たとえば家族の人数が多い場合は、キッチンへの動線を便利にし、高齢者が同居する場合はリビングへの移動を楽にするなど、使いやすさを考えましょう。
【坪数別】インナーガレージの間取り例
ひとことでインナーガレージといっても、建坪や家族の暮らし、車に求めることなどで間取りのコンセプトは異なります。この項ではインナーガレージを含んだ間取り例を、坪数別でご紹介します。
インナーガレージ付き住宅・坪数ごとの間取り例
25坪 |
車1台・2LDK3階建て
1階:ガレージ、トイレ、バスルーム、クローゼットなど |
30坪 | 車1台・3~4LDK2階建てか3階建て
1階:ガレージ、トイレ、バスルーム、クローゼットなど |
40坪 |
車2台(庭にもう1台)・4~5LDK・2階建て
1階:ガレージと水回りやLDK・客間 |
60坪 |
車2台・4~5LDK・2階建て
1階:ガレージと水回りやLDK・客間 |
25坪の場合の間取り例
よい立地に広い土地を確保するのが困難な都市部でも、車が使えると行動や暮らしの幅が広がります。都市部の一戸建てではビルトインガレージか、1階カースペースが主流といってもいいくらい多くなっています。
25坪ほどの間取りでインナーガレージを設けることで、1階はガレージ以外にトイレ、バスルームなどの水回り、2階にLDK、3階に寝室などを設けるケースが多いでしょう。
1階はガレージ内のほか、居室部分にも収納を充実させて、2階や3階の居室や寝室をすっきりとさせます。
玄関土間からガレージに出入りできるので靴の置き場に無駄がない作りです。ガレージの奥行きは5.3mと、ミニバンクラスではリアハッチの開閉がすこし厳しくなりますが、横幅は余裕があり、収納からの物の出し入れに不自由がありません。
1階
2階
3階
30坪の場合の間取り例
30坪台の場合には、車1台と3~4LDKの2階建て、もしくは3階建てが目安となるでしょう。
25坪と同様に、1階部分にガレージと水回りやLDK、2階以上に個室や寝室を設置します。住宅密集地の場合、快適性を重視してLDKを2階部分にするのもおすすめです。
エレベーターを設置する場合には、前述の通り1坪程度のスペースとエレベーター用の予算が必要となります。
3階建ての場合には1階にガレージと収納、2階に水回りや個室・寝室、日当たりのよい3階部分にLDKという間取りもよいです。ただし、バリアフリー対応のことは事前に考えておきましょう。
下図の間取り例では1階にリモートワークのできる書斎スペースや主寝室、大きなウォークインクローゼットを配し、2階にLDKです。3階に浴室とともに子ども用の個室を設け、子どもを湯冷めさせない優しさが感じられます。
1階
2階
3階
40坪の場合の間取り例
40坪の建築が可能な土地を確保できる郊外や地方の場合は、車は必需品であることも多く、2台の需要も増えてきます。
40坪なら車2台を収容可能なガレージ、あるいは庭にもう1台置く場所も作りやすく、車1~2台と4~5LDK・2階建てが平均的な間取りとなるでしょう。
インナーガレージを作っても1階に大きめのLDKを設けることが可能で、要望しだいではリビングの上部を吹き抜けにするような、おしゃれで開放感のある構成も検討ができます。
車でスーパーに買い物に行くことが多い場合、1階のキッチンとガレージを隣接させると動線が合理的です。夜間に車の出入りがしやすいことも意識しましょう。
下図の間取りでは、ガレージの上部を広めのウッドデッキにして、アウトドアリビング的な用途を意識しています。
1階
2階
60坪の場合の間取り例
60坪では、趣味のスペースも意識したガレージスペースの確保も可能となります。ただし前述のように、ガレージの面積による固定資産税の優遇枠はありますので、その点は意識しましょう。
車は耐久消費財の側面もありますが、近年では1台の所有期間が長くなっていて、長持ちさせる傾向が強くなっています。車を長持ちさせるために有効な方法として暖機運転、定期的なオイル交換とともに重要なのは「雨や紫外線にあてないこと」とされています。
その点でインナーガレージは、趣味のための車を維持保管するのにも向いているといえます。
下図の間取り例では、バイクや自転車まですべて屋内収納で、出し入れもやりやすい構造となっています。部品などの保管も充分なスペースがあります。
1階
2階
インナーガレージの費用は?
インナーガレージの費用相場は、1坪あたり50〜80万円 です。車1台を収容するのに必要な坪数は4〜5坪程度であるため、200〜400万円ほどの費用がかかると考えましょう。2台分のスペースを作る場合は10坪程度必要なため、500〜800万円ほどかかります。
なお、新築ではなくガレージを追加増築するケースや使わなくなった1階部分の部屋を解体してインナーガレージにする方法もあります。ガレージを追加増築する場合は、1台あたり150〜350万円 ほどの費用がかかると考えましょう。使わなくなった部屋を解体してインナーガレージにする場合の費用は、60〜240万円 ほどです。ただし、建物を解体して耐震強度が下がる場合は、補強工事 が発生する可能性もあるため、事前に建物の検査や見積もりを依頼しましょう。
インナーガレージを作る際の注意点
インナーガレージを作る際の注意点は、以下の通りです。
- ● 将来を想像したうえで計画する
- ● 動線を考慮した間取り
- ● におい対策をする
- ● 音の対策をする
インナーガレージは注意点を踏まえて、しっかりと対策してから作りましょう。それぞれの注意点について詳しく解説します。
将来を想像したうえで計画する
インナーガレージを作る際は、将来の生活スタイルや車のサイズ変更、家族構成の変化などを考慮に入れた計画が必要です。たとえば、老後のためにバリアフリー化を考える場合、ガレージから室内への移動をスムーズにするための動線設計が重要となります。必要に応じてスロープなどを設ける必要もあるでしょう。
とくにインナーガレージを設ける場合、2階や3階がリビングになるケースが多い点に注意しましょう。若い時は不便に感じる機会は少ないかもしれませんが、高齢になると階段の上り下りが大変になり、リビングから寝室までの移動が苦に感じる可能性があります。また水まわりが上下階で離れていると、トイレに行くまでの移動も大変になるため、将来のことを踏まえて各階に水まわりを設けるなどの対策が必要です。
さらにインナーガレージのサイズにも注意しましょう。将来電気自動車(EV)を購入する予定があるならば、充電設備の設置スペースの確保が必要です。そして家族構成の変化によって、サイズの大きな車に乗り換える可能性も踏まえなければなりません。
動線を考慮した間取り
動線を考慮した間取りを考えれば、生活の満足度が高くなります。たとえば、日常的に車で買い物に行く場合、インナーガレージとキッチンの距離を近くすれば重い荷物を運ぶのが楽になるでしょう。
2階にキッチンを設ける場合は、インナーガレージと階段の距離を近くするのもおすすめです。帰宅後すぐにリビングやキッチンに向かえるだけでなく、外出時の動線もスムーズになります。
間取りや動線を考える際は、ライフスタイルをもとに優先度を決めるのがおすすめです。たとえば、都心部に住んでおり車の使用頻度が高くない場合はインナーガレージを中心にした間取りにする必要はないでしょう。そのためインナーガレージを設ける際には、まずは家族で理想の生活について話し合うことがおすすめです。
におい対策をする
インナーガレージは建物内にあるため、車の排気ガスのにおいが室内に入ってくる可能性があります。またシャッターを閉めていると、排気ガスがガレージ内に充満するケースもあります。
快適な住環境を作るためには、換気対策を徹底しましょう。インナーガレージに大きな窓を設けたり、工業用の換気扇を設置したりするのがおすすめです。インナーガレージの実績が豊富なハウスメーカーに依頼し、適切な対策を施したインナーガレージを作りましょう。
音の対策をする
車のエンジン音やシャッターの開閉音などは、家の中に響く場合があります。車の使用頻度が多い家庭や深夜・早朝帯に車を利用する家庭にとっては、ストレスを感じるケースもあるでしょう。とくにガレージとリビングや寝室が隣接している場合は注意が必要です。また小さな子どもがいる家庭では、せっかく寝かしつけても音で起きてしまう可能性があります。
防音対策には、壁や床に防音材を使って音が伝わりにくくなる対策を講じましょう。
まとめ
本記事ではインナーガレージのメリット・デメリットや費用、作る際の注意点を解説しました。インナーガレージとは、建物の内部に組み込まれたガレージであり、ビルトインガレージとほぼ同義です。
インナーガレージは都心部のように広い土地を確保しにくいエリアで重宝されます。ただし、面積の都合上1階にリビングを設置できない可能性がある点には注意が必要です。
動線設計や音・におい対策に注意して、理想的なインナーガレージを作りましょう。
執筆・情報提供
岡﨑渉(おかざきわたる)
© Housing Stage All rights reserved.
この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。