2023.09.26
防火地域・準防火地域とは?建てられる家の種類や調べ方を解説!
住宅の購入を検討するなかで、防火地域や準防火地域という言葉が気になった方も多いのではないでしょうか。
本記事では防火地域・準防火地域の概要と建てられる家の種類を解説します。防火地域・準防火地域に指定されているかを調べる方法も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
INDEX
防火地域・準防火地域は火災の危険を防除するためのエリア
防火地域・準防火地域とは、火災の発生や被害の拡大を防ぐことを目的として、都市計画法第9条21項で指定された地域です。
防火地域や準防火地域内の土地に建物を建てる際は、防火の観点から建物の規模や構造、使われる素材、隣地からの距離などが厳しく制限されます。
たとえば、建物が密集した駅前などの市街地は、火災が発生すると大きな被害につながる恐れがあるため、防火地域や準防火地域に指定することで安全性を高めています。
また、幹線道路付近も防火地域・準防火地域に指定される場合が多いです。交通量が多いことや消防車などの緊急車両が通ることから、通行を妨げないよう防火対策をする必要性が高いためです。
参照元:e-Gov|都市計画法第9条21項 防火地域・準防火地域
法22条区域や新たな防火規制区域との違い
防火地域・準防火地域とよく比較される地域として、法22条区域や新たな防火規制区域が挙げられます。
地域 | 防火地域 | 準防火地域 | 法22条区域 | 新たな防火規制区域 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
延べ床面積 | 100㎡以下 | 100㎡以上 | 500㎡以下 | 500㎡超え1,500㎡以下 | 1,500㎡以上 | – | 500㎡以下 | 500㎡超え1,500㎡以下 | 1,500㎡以上 |
階数と構造 | 3階以上:耐火建築物 | 耐火建築物 | 4階以上:耐火建築物 | 4階以上:耐火建築物 | 耐火建築物 | 一定の防火措置が必要 | 4階以上:耐火建築物 | 耐火建築物 | 耐火建築物 |
2階以下:耐火建築物または準耐火建築物 | 3階:耐火建築物または準耐火建築物(一定の技術基準に適合) | 3階以下:耐火建築物または準耐火建築物 | 3階以下:準耐火建築物 | ||||||
2階以下:木造建築物は一定の防火措置が必要 |
法22条区域とは、名前の通り建築基準法22条で指定された区域であり、防火地域や準防火地域以外で、火災の被害が拡大しやすい地域が指定されています。
人口が密集した場所の中心付近が防火地域、その周辺が準防火地域、さらにその外側が法22条地域に指定されているとイメージすると分かりやすいでしょう。
新たな防火規制区域とは、東京都内で震災時の火災の危険性が高い地域として、東京都建築安全条例第7条の3により指定された区域です。
東京都は他の都道府県より人口密度が高く、密集した市街地が多いため、防火地域、準防火地域、法22条地域だけでは火災の被害を防ぐには不十分です。
そのため、木造住宅が密集した地域を中心に新たな防火規制区域を拡大し、防火面の規制を強めています。
なお、建物に対する制限は、防火地域>新たな防火規制区域>準防火地域>法22条区域の順番に厳しく設定されています。
参照元:
e-Gov|建築基準法第22条
東京都都市整備局|新たな防火規制について(制度の概要)
防火地域と準防火地域に建てられる家の違いは?
防火地域と準防火地域では、建てられる家が異なります。以下、具体的な制限の内容を見ていきましょう。
【防火地域の制限】
建物の規模 | 制限の内容 |
---|---|
● 3階建て以上(地階を含む) または ● 延べ床面積が100㎡を超える |
耐火建築物にすること |
上記以外の建物 | 耐火建築物 または 準耐火建築物にすること |
【準防火地域の制限】
建物の規模 | 制限の内容 |
---|---|
● 4階建て以上(地階を含まない) または ● 延べ床面積が1,500㎡超を超える |
耐火建築物にすること |
● 3階建て(地階を含まない)かつ延べ床面積が1,500㎡以下 または ● 2階建て以下(地階を含まない)かつ延べ床面積が500㎡超〜1,500㎡以下 |
耐火建築物 または 準耐火建築物にすること |
防火地域のほうが準防火地域よりも制限が厳しく、規模が小さい家でも準耐火建築物以上の性能が必要です。耐火建築物・準耐火建築物とは、以下のように定義された建物です。
【耐火建築物】
一般的な規模の火災が終了するまで、倒壊したり延焼したりしないだけの性能を有する建物
【準耐火建築物】
一般的な規模の火災において、延焼を抑制するために十分な性能を有する建物
耐火建築物の条件を満たすには、壁や柱などの主要構造部を鉄筋コンクリートや鉄骨で作る必要があります。
なお、準防火地域では、延床面積500㎡以下の平屋もしくは木造2階建てであれば、外壁や軒裏、開口部などに一定の防火措置を講じることで建築できます。
防火地域・準防火地域の制限により希望の間取りや構造にできない可能性があるため、事前に上記の条件を確認しておきましょう。
関連記事:狭小住宅はどんな家?メリット・デメリットや建てる際のポイントを紹介
耐火構造物や準耐火構造物は火災保険が安くなる
防火地域や準防火地域では、耐火構造物または準耐火構造物を建てる場合が多いです。厳しい基準を求められるため建築コストがかかりますが、一方で火災保険料が安くなるメリットもあります。
耐火構造物や準耐火構造物は火災に対する耐性が高く、火災が発生した場合の損害が少ないと保険会社から判断されるためです。
なお、火災保険の見積もりを依頼する際に、以下のような耐火性能が確認できる書類の提出を求められます。
- ● 建築確認申請書(建物が建築基準法などを遵守しているか検査する際に提出する書類)
- ● 設計仕様書(建物の構造や内装材などが記載された書類)
- ● 設計図面
施工会社に相談し、用意してもらいましょう。
防火地域と準防火地域の調べ方は?
住宅を建てたい土地が防火地域や準防火地域に指定されているかを調べるには、自治体のホームページから確認する方法が最も簡単です。
インターネットで「〇〇県 都市計画」と検索し、自治体の都市計画情報システムにアクセスしましょう。
調べたい土地の住所情報を入力すると、防火地域や準防火地域の範囲が地図上に色で表示されます。不明点がある場合は、自治体の都市計画課や建築指導課などの窓口に問い合わせると良いでしょう。
なお、防火地域や準防火地域の指定の有無は、設計会社や施工会社がプランを作成する際に事前に確認している場合が大半です。土地を購入する場合は、不動産会社に問い合わせれば確認できるでしょう。
ただし、東京都で築年数の古い住宅を建て替える場合は注意が必要です。新たな防火規制区域は2003年以降に指定されており、元の住宅と同じ仕様で建てられない可能性があります。
以下のサイトから最新情報を確認することをおすすめします。
まとめ
本記事では防火地域と準防火地域について解説しました。
防火地域・準防火地域とは、都市計画法で定められた特に防火面の規制が厳しいエリアです。建物が密集した駅前の市街地などに主に指定されています。
防火地域>準防火地域の順番に規制が厳しく、防火地域では耐火建築物や準耐火建築物しか建てられません。
ただし、防火性能の高い建物を建てられるため、火災保険が安くなるメリットがあります。
防火地域や準防火地域の調べ方は、自治体のホームページを確認する方法が最も簡単です。必ず最新情報を確認し、不明点があれば自治体の窓口や施工会社に相談しましょう。
執筆・情報提供
吉本えり
二級建築士・整理収納アドバイザー1級資格保有。
大学院まで建築学を専攻し、ハウスメーカーでの勤務を経てWebライターとして独立。
主に建築、不動産、インテリアなど住まいに関する記事を執筆。執筆実績100記事以上。
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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。