2023.09.27
容積率とは?建ぺい率との違いや緩和の特例をわかりやすく解説!
住宅の購入を検討するなかで、容積率という言葉に触れた方も多いのではないでしょうか。容積率は土地やプランを決める際の重要な指標になります。
本記事では、容積率の調べ方や計算方法、建ぺい率との違い、制限や緩和の特例について解説します。
INDEX
容積率とは?
住宅を建てる際は、建築基準法や都市計画法で定められた容積率の制限を守らなければなりません。本章では、容積率の考え方や計算方法、制限の内容について解説します。
容積率とは建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合
容積率とは、敷地面積に対する建物の延べ床面積の割合です。具体的には、以下の計算式を用いて求めます。
● 容積率 = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)
延べ床面積とは、建物の各階の床面積を合計した面積です。
たとえば、以下の条件で容積率を計算してみましょう。
- ● 階数:2階建て
- ● 各階の床面積:1階60㎡、2階30㎡
- ● 敷地面積:180㎡
容積率の求め方は以下の通りです。
- ● 延べ床面積:60㎡ + 30㎡ = 90㎡
- ● 容積率:90㎡ ÷ 180㎡ × 100 = 50%
また、住宅を設計する際は、「容積率 × 敷地面積」で延べ床面積を求める場面がよくあります。
たとえば、敷地面積が150㎡で容積率が150%の場合、建物の延べ床面積は「150% × 150㎡ = 225㎡」です。
用途地域ごとの容積率の違い(最大容積率)
土地に対して無制限に大きな建物を建てないように、都市計画法では容積率の上限(最大容積率)が定められています。最大容積率は、用途地域により異なります。
用途地域とは、建てられる建物の用途や規模を定めた都市計画法上の地域区分です。用途地域について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
用途地域別の最大容積率は、以下の通りです。
用途地域 | 最大容積率(%) |
---|---|
● 第一種低層住居専用地域 ● 第二種低層住居専用地域 ● 田園住居地域 |
50、60、80、100、150、200のいずれか |
● 第一種中高層住居専用地域 ● 第二種中高層住居専用地域 ● 第一種住居地域 ● 第二種住居地域 ● 準住居地域 ● 近隣商業地域 ● 準工業地域 |
100、150、200、300、400、500のいずれか |
● 商業地域 | 200〜1,300(100刻み)のいずれか |
● 工業地域 ● 工業専用地域 |
100、150、200、300、400のいずれか |
● 用途地域の指定のない区域 | 50、80、100、200、300、400のいずれか |
土地の最大容積率を個別に知りたい場合は、自治体のホームページに公開されている都市計画情報から確認できます。
参照元:国土交通省|容積率の限度 p.2
接する道路の幅員ごとの容積率の違い(基準容積率)
敷地に接する道路がせまい場合、規模の大きな建物を建てると利便性や安全性が損なわれます。
そのため、幅員(ふくいん)が12m未満の道路に接する敷地では、以下の容積率の上限(基準容積率) を超えてはなりません。
用途地域 | 基準容積率(%) |
---|---|
● 第一種低層住居専用地域 ● 第二種低層住居専用地域 |
40(%) × 道路幅員(m) |
● 第一種中高層住居専用地域 ● 第二種中高層住居専用地域 ● 第一種住居地域 ● 第二種住居地域 ● 準住居地域 |
40または60(%) × 道路幅員(m) |
● 上記以外の用途地域 | 40、60、80のいずれか(%) × 道路幅員(m) |
なお、用途地域による容積率の制限と道路幅員による制限では、厳しいほうの基準が適用されます。
たとえば、第一種低層住居専用地域内の敷地で前面道路が6mの場合、基準容積率は「40(%) × 6(m) = 240(%)」です。
しかし用途地域により指定された最大容積率が200%の場合、この敷地では容積率を200%以内におさめる必要があります。
参照元:国土交通省|前面道路の幅員による容積率の限度 p.2
建ぺい率とは
建ぺい率とは、「建築面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)」で求められる割合を指します。
たとえば、建築面積が50㎡で敷地面積が100㎡の場合、建ぺい率は「50 ÷ 100 × 100 = 50%」です。
建築面積とは、建物を真上から見たときの水平投影面積です。建物に真上から光を当てたときにできる影の面積と考えるとイメージしやすいでしょう。
1階が上の階よりも広い場合は1階の床面積が、上の階のほうが1階よりも広い(オーバーハングの家など)場合は最も広い階の床面積が、そのまま建築面積になる場合が多いです。
容積率と建ぺい率の違いは?
容積率と建ぺい率はどちらも敷地に対する建物の規模の割合ですが、以下の点が異なります。
- ● 建ぺい率:建物と周辺との余白を確保するための指標
- ● 容積率:建物の階数(容積)が無秩序に増えるのを防ぐための指標
建ぺい率の規制だけでは極端に階数の多い建物が建つ恐れがあるため、容積率にも制限が設けられています。
容積率緩和の特例は?
容積率には制限が設けられていますが、特例で緩和できる場合があります。ここでは、主な特例を5つ紹介します。
- 1. 地階に関する特例
- 2. 車庫に関する特例
- 3. 小屋裏やロフト空間に関する特例
- 4. 特定道路に関する特例
- 5. 共同住宅の共用部分に関する特例
順番に見ていきましょう。
【特例1】地階に関する特例
建物に地階(地下)を作る場合は、住宅の延べ床面積の3分の1 に相当する分を除いて容積率を計算できます。たとえば、以下の条件で考えてみましょう。
- ● 敷地面積:200㎡
- ● 容積率の上限:100%(最大延べ床面積:200㎡)
容積率の上限を考えると、建物の広さは1階100㎡、2階100㎡までしか確保できません。ところが、地階の特例を適用すれば、さらに100㎡の地階を増やすことが可能です。
なお、建築基準法上の地階 とは、以下の条件を満たす空間を指します。
- ● 天井の位置が地盤面から1m以内
- ● 床面から天井までの高さの3分の1以上が地盤面より低い位置にある
地階の条件を満たしていなければ特例は適用されず、全面積を延べ床面積に含めて容積率を計算する必要があります。
【特例2】車庫に関する特例
敷地内に駐輪場やカーポート、ビルトインガレージなどの車庫スペースがある場合、建物の延べ床面積の5分の1 に相当する分を限度に、車庫部分を除いて容積率を計算できます。
たとえば、建物の延べ床面積が100㎡の場合、5分の1の20㎡までの車庫が延べ床面積から除外されます。
なお、自転車や自動車を置く専用のスペースとして使っていれば、構造に関係なく特例を受けることが可能です。
物置など別の用途と併用して使う場合は、容積率の緩和の特例の対象外です。
【特例3】小屋裏収納やロフト空間に関する特例
小屋裏収納やロフト空間は、延べ床面積に含めません。そのため、容積率の制限に関係なく収納スペースを確保でき、空間を有効活用できます。
建築基準法上の小屋裏収納やロフト空間とは、以下の条件をすべて満たすものです。
- ● 天井高さが1.4m以下
- ● 直下の部屋の天井高さが2.1m以上
- ● 面積が直下の部屋の床面積に対して2分の1未満
なお、この特例はあくまで小屋裏などを収納として使う場合に適用できます。
上記の条件を満たしていても、居室(寝室や書斎などのように継続して使用する部屋)は作れないため注意しましょう。
【特例4】特定道路に関する特例
特定道路とは、15m以上の幅が広い道路です。特定道路の周辺の土地は、容積率の緩和の特例を受けられます。
具体的には、以下の条件を満たす土地が対象です。
- ● 特定道路から分岐した道路に接している
- ● 特定道路までの距離が70m以内
- ● 敷地に接する道路の幅が6m以上12m未満
特定道路の特例を適用すると、道路の幅員による制限(基準容積率)が緩和されます。緩和した容積率の上限の求め方は、以下の通りです。
W:敷地に接する道路の幅(m)
L:特定道路までの距離(m)
- ● 容積率 = (W + 加算値) × 係数
- ● 加算値 = (12 ー W) × (70 ー L) ÷ 70
幅が広く利用量の多い道路の周辺には、ある程度規模が大きな建物を建てる必要があるため、このような容積率の緩和の特例が設けられています。
【特例5】共同住宅の共用部分の特例
マンションやアパートなどの共同住宅では、共用部分の床面積を除いて容積率を計算できます。共用部分とは、以下のような場所です。
- ● 廊下
- ● 階段
- ● エレベーター
- ● エレベーターホール
- ● エントランスホール
- ● バルコニー
- ● 車椅子用のスロープ など
つまり、共同住宅を建てる場合は、専有部分(個別の部屋)のみが容積率の制限を受けます。
この特例により、容積率の制限を受けることなく充実した共用部分を作れるため、バリアフリー化などが進めやすいメリットがあります。
まとめ
本記事では容積率の計算方法や制限、緩和の特例について解説しました。
容積率とは、「延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100(%)」で求められる割合です。用途地域や敷地に接する道路の幅により、容積率には上限の値が定められています。
容積率と建ぺい率はどちらも敷地に対する建物の規模を示す指標ですが、建ぺい率は建物と周囲の間の余白を確保するための指標、容積率は建物の階数を制限するための指標という点が違いです。
なお、容積率の制限は、特定の条件を満たした場合に緩和の特例を受けられます。土地選びやプランを決める際は、容積率の制限や特例の対象になるかを確認しておきましょう。
執筆・情報提供
吉本えり
二級建築士・整理収納アドバイザー1級資格保有。
大学院まで建築学を専攻し、ハウスメーカーでの勤務を経てWebライターとして独立。
主に建築、不動産、インテリアなど住まいに関する記事を執筆。執筆実績100記事以上。
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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。