2023.10.19
建築基準法42条2項道路とは?セットバックの方法や注意点などを解説
住宅を建てるための土地選びでは、「2項道路」という単語を聞いたことがある方もいるでしょう。2項道路とは道路種別の一つであり、道路幅員の狭い道路を指します。前面道路が2項道路の土地の場合、建築に制限がかかり希望の建物プランが入らない恐れがあるため注意が必要です。
そこで本記事では、2項道路の詳しい内容やセットバックとの関係、購入時の注意点について詳しく解説します。
INDEX
法42条2項道路とは何か
法42条2項道路とは、建築基準法第42条2項で定められている道路であり、「みなし道路」とも呼ばれます。建築基準法において、建物は幅員4m以上の道路に2m以上接してなければ建てられないようになっています。しかし、昔の道路は幅員が狭い道路も多かったため既に建物が建っている道路に関しては、幅員が4m未満でも地方自治体の条例によって道路とみなされているのです。
土地の前面道路が法42条2項道路であっても建物は建てられますが、建てる際に緊急車両などが通れるように敷地の一部を道路として提供しなければいけません。これを「セットバック(道路後退)」と呼びます。
なお、類似している道路の種別に「位置指定道路」が挙げられます。位置指定道路とは、特定の行政機関に位置が指定されている道路です。
本来建物を建てるには土地が建築基準法上の道路に接している必要がありますが、私道のなかには「通路」としては認められているものの「道路」としては認められていないものもあります。
その場合は家を建てられないため、特定行政庁に位置を指定してもらう必要があるのです。
そもそも建築基準法とは
建築基準法とは、建築物の敷地や構造、設備等に関する基準を定めた法律で、安全で良好な建築物の建築と住環境の確保を図ることを目的としています。建築基準法と道路との関係は、大きく分けて以下の2つが挙げられます。
- 接道義務
- 道路後退
建築基準法では、建物を建築する敷地は建築基準法上の道路に2m以上接していなければならないと定められています。なぜなら建物の火災や災害時の避難、消防車両や救急車両の進入を円滑に行うためです。
「建築基準法上の道路」とは、道路法や都市計画法などの法律で道路として定められている道路、または地方自治体の条例で道路として定められている道路を指します。また法42条2項道路に接する敷地に建物を建築する場合、道路境界線とみなされる位置まで後退して建物を建てなければならないとされています。
法42条2項道路における敷地のセットバック
法42条2項道路における敷地のセットバックについて、以下の3つの要素について分かりやすく解説します。
- セットバックについて
- 法42条2項道路におけるセットバック
- 狭あい道路拡幅整備事業制とは
それぞれ詳しく解説します。
セットバックについて
セットバックとは、土地の境界線から一定の間隔を確保して建物を建てることを指します。セットバックした部分は道路として提供されるため、花壇や柵を設置するなど、通行の妨げになるような使い方はできません。
自己の所有地であっても、自己利用はできないと考えましょう。またセットバックした部分が公道ではなく私道の場合は、自分で工事を手配して舗装しなければならない場合があります。
なお、私有地部分を自治体に買い取ってもらえる場合もあるため、自治体の窓口や不動産会社に相談してみましょう。
法42条2項道路におけるセットバック
法42条2項道路におけるセットバックとは、道路の中心線から外側にそれぞれ水平距離2メートルの位置を道路境界線とみなし、その位置まで後退して建物を建てなければならないルールを指します。
たとえば、道路が3mで向かい側に建物がある場合は、互いに50cmずつ後退して4mの道路を確保しなければなりません。セットバックしないで建物を建ててしまった場合には、建築基準法違反となって罰則を受ける恐れがあります。
また隣地や向かい側の住宅とトラブルになる可能性があるため、必ずセットバックしましょう。購入を検討している土地がセットバックしなければならないかどうかは、不動産会社に確認する方法がおすすめです。
狭あい道路拡幅整備事業とは
狭あい道路拡幅整備事業とは、狭あい道路(幅員が4m未満の道路)の拡幅整備を促進するために、地方公共団体が行う事業です。狭あい道路拡幅整備事業では、自治体が拡幅部分の整備工事や塀などの撤去費用の一部助成を行ったり後退用地を買い取ったりします。
なお、道路が公道の場合はその後自治体が管理するために「道路敷地無償使用承諾書」や「寄付申出書」の提出が求められる場合があります。道路が私道の場合、管理責任は所有者にあるため自分で管理しなければならない点に注意しましょう。
土地や中古住宅の購入には注意が必要
土地や中古住宅を購入する際は、法42条2項道路に注意する必要があります。具体的に注意すべきポイントを2つ紹介します。
法42条2項道路に接地する土地・建物
法42条2項道路に接地する土地・建物はセットバックの必要性が生じるため、利用できる土地が少なくなってしまいます。道路に提供する部分であるため、柵や花壇などの設置もできません。
またセットバック部分は、建築時の敷地面積に算入できない点に注意が必要です。たとえば、容積率80%の100㎡の土地があった場合は本来80㎡の建物を建築できますが、10㎡分セットバックする場合には土地面積は90㎡となり、72㎡までしか建てられません。
希望の間取りプランが入らない可能性があるため、セットバックが生じる場合は土地面積だけでなく、最終的な敷地面積を確認しましょう。役所でも確認できますが、各種書類が必要になるため、不動産会社を経由して確認する方法が良いでしょう。
一方が川などに接する法42条2項道路に接地する場合
土地の反対側に川や崖があり、セットバックができない場合は、片側で負担しなければいけません。このセットバック方法を一方後退といいます。
たとえば、道路幅員が3mの場合、本来であれば両側で50cmずつ負担しますが、川や崖がある場合片側で1m負担しなければなりません。道路幅員によっては多くの面積を負担しなければならないため、道路幅員や川や崖との位置関係を把握しておきましょう。
また中古住宅を購入して建て替えを行うときも同様です。新たに建物を建てる際にセットバックが求められるため、以前の建物よりも面積が小さくなると考えましょう。
まとめ
本記事では2項道路の詳しい内容やセットバックとの関係、購入時の注意点について詳しく解説しました。法42条2項道路とは、建築基準法第42条2項で定められている道路のことで、「みなし道路」とも呼ばれます。建物は幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があるため、道路が4m未満の場合は、道路を広げるために土地の一部を道路として提供しなければいけません。
その分敷地面積が減り、建てられる建物が小さくなってしまうため、購入時にはどの程度の影響が出るのか不動産会社に連絡してしっかり把握しておきましょう。
執筆・情報提供
岡﨑渉(おかざきわたる)
国立大学卒業後新卒で大手不動産仲介会社に入社。約3年間勤務した後に独立。現在はWebライターとして活動中。不動産営業時代は、実需・投資用の幅広い物件を扱っていた経験から、Webライターとして主に不動産・投資系の記事を扱う。さまざまなメディアにて多数の執筆実績あり。宅地建物取引士の資格を保有。
© Housing Stage All rights reserved.
この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。