2024.02.09
ベタ基礎・布基礎とは?違いやメリット・デメリットを解説
住宅の基礎部分は、普段は意識することはありませんが、住まいを新しく購入するにあたっては、知っておいた方が良いことがあります。
この記事では、日本の住宅の基礎のほとんどを占めるベタ基礎と布基礎の違いや、それぞれのメリットやデメリットを解説しますので、住まい選びの参考に役立ててください。
INDEX
家づくりにおいて基礎が重要な理由
住宅の基礎とは、建物の最下部で全体を支えるコンクリート部分のことをいいます。家全体を支える重要な役割を果たします。
地盤(地面)と建物をつなぐ位置を占めるため、住宅を建てる際はまず「基礎」が完成しないと工事が進みません。
基礎は建物の荷重や、地震・風などでかかる力をバランスよく地盤に伝えるほか、建物の一部分が沈むことで傾く不同沈下(ふどうちんか)を防ぐ、建物を湿気から守るなどの機能があります。
住宅で多く採用されているベタ基礎と布(ぬの)基礎の違いをご説明します。
ベタ基礎とは?メリット・デメリットを理解しよう
昭和時代の初期から普及をし始めた布基礎を、阪神大震災以降に増え始めたベタ基礎がとってかわるようで、必ずしもそうではありません。それぞれのメリットとデメリットをご説明します。
ベタ基礎の構造・工法
ベタ基礎は、建物の土台となる基礎の立ち上がりだけでなく、床一面が鉄筋コンクリートになっている基礎です。
基礎の水平部分にコンクリートが打ってあるうえに、中に鉄筋が入っていて建物の構造を担っており、この部分のことをスラブといいます。
ベタ基礎は現在日本の住宅では一番多く用いられる工法で、建物の荷重を水平の大きな面積でも支えられるため、荷重が基礎の全体にわたって分散されます。
したがって、地盤が比較的弱い場所や、重量のある建物を建てる際に適しています。
ベタ基礎のメリット
ベタ基礎は建物を面で支えることができるため、耐震性で有利です。地震の揺れの力を効率良く地盤に伝えられ、地震による建物の傾きを防ぐためにも有効な構造といえるでしょう。
ベタ基礎は床下の地面全体を厚いコンクリートで覆い、建物の内部と地面が直接接することがないため、地面からの湿気が建物に上がりにくく、住宅に使用される木材の腐りや痛みが少なくなります。
また、このコンクリートが約15cmの厚みがあるためにシロアリが侵入しづらく、シロアリによる被害も起きにくいでしょう。
したがってシロアリの点検も10年に一回ほどで良いといわれています。
ベタ基礎のデメリット
ベタ基礎は布基礎に比べ、多くの鉄筋とコンクリートを使用する分のコストが高くなり、その使用量の差は、同じ面積の布基礎の約2倍となります。
また、基礎工事のために掘った残土を処理する費用も高くなるでしょう。ベタ基礎は掘る部分の面積が広いため、掘り出した残土量も布基礎に比べて多くなり、運搬や処理の費用、人件費などが増加します。
一方でベタ基礎は不同沈下を起こしにくいことから、布基礎で必要となる地盤改良工事が不要と判断される場合も多く、その場合は工事費用が抑えられるでしょう。
また、多くのコンクリートを打つと、地域差はありますが完全に乾燥するまでに2年ほどを要し、その間は「養生水分」が水蒸気として出続けるとされています。
新築時のベタ基礎では、この養生水分が床下の湿害発生につながらないよう、注意をする必要があります。
また、ベタ基礎は北海道などの寒冷地で施工すると、凍結対策のために温暖な地域よりも基礎を地中に深く埋める必要があり、費用が高額となります。これが理由で、寒冷地でベタ基礎は向きません。
基礎よりも下で地面が凍った場合、地中の水分の容積が増えて基礎が持ち上げられ、不同沈下などが起きて建物を損傷するリスクが生じることを知っておきましょう。建築基準法でも「寒冷地の住宅の基礎は凍結深度(冬季に凍りやすい地面の深さ)よりも深いところに作らなければいけない」と定められています。
布基礎とは?メリット・デメリットを理解しよう
続いて、歴史の古い布基礎の特徴をご説明します。布基礎は柱の部分以外は地面がむき出しと考えがちですが、近年の住宅はそうではありません。
布基礎の構造・工法
布基礎は鉄筋コンクリートを入れた基礎を柱や壁の位置に施工します。ベタ基礎は面で建物を支えますが、布基礎は点と線とで建物を支える構造といえるでしょう。
築年数が経過した家では、床下の通風口を覗くと土の地面が確認できますが、近年は布基礎の場合でも、逆T字状の鉄筋の入った立ち上がり以外の箇所は防水シートを敷き、その上から厚さ5~6cm位のコンクリートを打ちます。
近年では布基礎の水平面もコンクリートで覆われるため、見た目はベタ基礎と同じように思えますが、建物を支えるのは立ち上がりにある基礎部分のみです。
水平部分は鉄筋が入らず、コンクリートの厚さもベタ基礎の約15cmに対して、布基礎は5~6cmで、建物を支える役割は担いません。
布基礎のメリット
布基礎は床の部分に鉄筋を使わずコンクリートの量も少ないため、その分コストを抑えられます。ベタ基礎の項で触れた残土の輸送費・人件費なども比較的安くなるのもメリットでしょう。
耐震性ではベタ基礎に一歩譲る布基礎ですが、強度面で必ずしも不利というわけではありません。
基礎は深く掘って入れた場所ほど、地震の揺れに対する抵抗力が上げられます。布基礎はもともとベタ基礎の倍以上の深さで基礎の立ち上がりを作るうえ、深度の施工に柔軟性があるので、部分的な強度を高くとることもできます。
また、柱の深さのほかに、コンクリートの厚さや鉄筋の太さなどによっても強度を調整できるでしょう。
布基礎は寒冷地の住宅のほかに、鉄骨部分に荷重が集まる鉄骨造の建築にも適しています。
布基礎のデメリット
布基礎は柱部分の強度を高められますが、面で支えるベタ基礎と比較しすると建物の安定性が地盤の強さに左右されやすくなります。この点では耐震性はベタ基礎よりやや劣るといえるでしょう。
布基礎は点と線で支える構造で、建物を面全体で支えるベタ基礎に比べて、地盤が弱い場合に基礎の一部が沈んで建物が傾いたり、ゆがんだりする可能性が高い点は知っておきましょう。
また、布基礎の床下は地面がむき出しになっている箇所もあるため、コンクリートで厚く完全に地面を覆うベタ基礎よりも地面の湿気が建物に伝わりやすいです。
室内の湿度は基礎だけでなく土地の地盤や高低、住宅の密集度、水源の近さなどにも左右されるでしょう。エアコンや換気だけでは充分に湿度管理がおこなえないこともあり、床下を対策し直すことで改善される場合があります。
また、湿度が高く地面の露出が多い分、木材が腐食やシロアリ被害に遭うリスクがベタ基礎よりも高く、2~3年に1回程度のこまめな点検が必要です。
シロアリの対策は防蟻シートを敷く、通気口を設けるなどが考えられます。ハウスメーカーと新築時から相談し、事前の対策をおこなうと良いでしょう。
ベタ基礎と布基礎の見た目の違い・見分け方
専門家ではない一般の人が、家のベタ基礎と布基礎を見分ける方法はあるのでしょうか?
ベタ基礎の見た目と見分けるポイント
外見だけでこれはベタ基礎と判断する方法は、家の外から基礎に沿って25cmほど土を堀り、まだ基礎が真っ直ぐ下に続く場合は布基礎といえます。
ただし、1971年以前の建物の場合、布基礎でも25cm以上真っ直ぐ続く場合があります。
布基礎の見た目と見分けるポイント
まず前述のように築年数の経った家の場合、点検口から床下を覗くと、柱や壁以外の部分に土の地面が見えます。築年が新しめの物件では、布基礎も床面全体にコンクリートが打たれている場合があるので、外見だけでは判別は難しいかもしれません。
ベタ基礎と同じように家の基礎に沿って土を掘り、コンクリートの形がL字型になっている場合は布基礎と判断できます。(但し1971年以降の場合)
土を掘る、点検口から見るなど目で確認する以外に、はっきりと判別する方法は以下です。
- ● 建設業者に確認する
- ● 新築現場の「建設計画のお知らせ」看板を見る
- ● ホームインスペクションを依頼する
- ● 構造計算書を確認する
工事現場に掲示する「建設計画のお知らせ」の看板には、基礎工法が記載されているため、確認することが可能です。
また、ホームインスペクション(住宅診断)を依頼する際、事前に「基礎の種類を知りたい」と住宅診断士に依頼しておくと、結果を確認できるでしょう。
このほか構造計算を実施した家の場合に限りますが、構造計算書には基礎の種類が記載されているため、確認可能です。
ベタ基礎と布基礎はどちらが良い?後悔しないためのポイント
では、ベタと布基礎を選ぶことがあるとすれば、どの様な基準で考えれば良いのでしょうか?
関連記事:首都圏では一戸建ての基礎は「べた基礎」が95.3%に|住宅展示場のハウジングステージ
このように、ベタ基礎が布基礎に替わって急速にシェアを伸ばしていることが分かりますが、前述のように寒冷地である北海道では80%が布基礎となるほか、東北や北陸でも布基礎が20%前後のシェアを持ちます。
耐震性
前述のように、揺れから建物を守るという意味で、耐震性の総合点ではベタ基礎の方がやや勝っています。
しかし、深い基礎を作り、建物をしっかり支えるのは布基礎の方が得意なため、土地の地盤や作る建物の構造で判断することになるでしょう。
地盤が軟弱な場合、自重が重いベタ基礎は地盤への負荷が大きくなる分不利となります。したがって家の荷重が全体に均等な木造住宅は不同沈下を防ぐ目的でもベタ基礎が向いているといえます。
反面、家の荷重が一部の鉄骨部分に集中する鉄骨住宅は、布基礎の施工のほう重量をしっかり支えられ、適しているでしょう。
コスト
コスト上は基本的に、布基礎を採用したほうが安いのですが、ベタ基礎の目覚ましい普及によって工事の熟練度が上がるなどした結果、施工費の差はあまり差が出ないまでに圧縮されています。
ただし、コンクリートや鉄筋などの部材については、ベタ基礎は大量に消費するためコストがかかることは間違いありません。
ここで、建築の坪単価と基礎の仕様との関係が気になります。高級な家にベタ基礎が多いのかという点です。
以下はハウスメーカーごとの基礎タイプの採用状況ですが、坪単価の高いメーカーやシリーズが必ずしもベタ基礎を採用しているとは限らないことが分かります。
家の重量が重くなる鉄骨施工のプランでは、布基礎を標準とするところが多いでしょう。独自の考え方や技術上の理由で、布基礎で施工するケースもまだ多いようです。
メーカー | 基礎タイプ | 建物の構造 |
---|---|---|
積水ハウス | 布基礎 | 鉄骨造、木造 |
ダイワハウス | 布基礎 | 鉄骨造、木造 |
ヘーベルハウス | 布基礎 | 鉄骨造 |
パナソニックホームズ | 布基礎 | 鉄骨造 |
トヨタホーム | 布基礎 | 鉄骨造 |
セキスイハイム | ベタ基礎 | 鉄骨造、木造 |
住友林業 | ベタ基礎 | 木造 |
三井ホーム | ベタ基礎 | 木造 |
一条工務店 | 布基礎orベタ基礎 ※地盤調査により決定 |
木造 |
ミサワホーム | 布基礎 | 木造 |
タマホーム | ベタ基礎 | 木造 |
工期
基礎の工期はベタ基礎も布基礎も変わりがなく、したがって工期も大きな違いはありません。ベタ基礎と布基礎の違いを含む、基礎の施工の工程は以下です。
工程 | 内容 |
---|---|
地盤調査を行う | 建築予定の土地を調査し、必要に応じて地盤改良をおこなう。耐震性の向上と不同沈下を防ぐため。
ベタ基礎の場合は不要と判断されることもある。 |
地縄張り・遣り方工事 | 地縄張りとは、建物の位置を決めるように、縄やビニール紐、ロープなどを張って目印とすること。
続いて、図面に記載されている建物の位置や基礎の高さなどの情報を、実際の敷地に反映する遣り方工事をおこなう。 |
掘削工事 | 基礎を作るため、重機や手作業などで地表を掘り起こす。(根切り)
ベタ基礎の場合建物予定箇所の全ての土を、布基礎の場合は立ち上がりの部分の土を、必要な深さまで掘削する。 |
砕石(さいせき)を敷く | ベタ基礎は全面にわたり、布基礎は立ち上がり部分に砕石を敷いたあとに、機械を使って地盤を締め固める。 |
捨てコンクリートを打つ | 捨てコンクリートとは、砕石を敷き地盤を固めたあと、再度建物を建築する位置の目印を付けるなどの目的でコンクリートを流すこと。
工事をスムーズに進めるためにおこなう。 |
配筋 | 建物の位置に鉄筋を組む。基礎の強度に大きな影響の出る工程。
建築基準法には配筋の仕様が細かく規定されている。 |
型枠を組みコンクリートを流す | 基礎の外周に型枠を組みコンクリートを流し込む。 |
型枠を外してチェックや補正 | 一定の日数を置いたあと、コンクリートが固まった状況を確認して型枠を外す。
型枠を外したら、コンクリートの不良や仕上がりの状態を確認する。 |
家を建てる地域
前述のように寒冷地かそれ以外か、地域に根差した工法はどちらか、地盤の状態などが判断要素となるでしょう。
寒冷地では布基礎、地盤の柔らかい場所では布基礎が定番となっています。
シロアリ・湿気
シロアリの害は、築年数と地域に影響を受けます。以下は築年数と蟻害の相関関係です。
つまり木造建築であれば、築20年前後で1割以上がシロアリの害を受けることになります。
住宅を食害するシロアリは、おもにヤマトシロアリとイエシロアリです。生息範囲の広いヤマトシロアリに比べ、イエシロアリは千葉県以西の太平洋岸と九州にのみ生息しますが、イエシロアリのほうが大きな集団を作り、甚大な被害をもたらします。
イエシロアリの生息範囲の施工は、シロアリの進入路の少なくなるベタ基礎が向いているといえるでしょう。
また、湿度の高い場所に建築する場合は、建物内の地面をコンクリートで厚く覆うベタ基礎の方が適しますが、特にコンクリートが乾燥するまでの間は、床下に水分が溜まらないように注意しましょう。
まとめ
住宅の基礎についてベタ基礎と布基礎の違いや、それぞれのメリット・デメリットを解説しました。
建築業者も、ベタ基礎と布基礎のどちらで施工するかは十分なノウハウを持っていて、商品のシリーズによってどちらで施工するかも決まっています。
「こっちの基礎のほうがいい!」とこだわるというよりも、この記事の知識をもとにして、選んだ土地での施工はどちらがふさわしいのか、施工業者の方に質問してみるのが良いでしょう。
執筆・情報提供
滋野 陽造
マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産投資に従事。
実務経験をもとに、不動産の賃貸業・売却・購入、暮らしの法令などのジャンルで記事の執筆を行う。