2024.06.11
瑕疵保証とは?種類、特徴、新築と中古での期間の違いを紹介
購入した家に不具合が見つかり、住むのに困るようなトラブルになる場合があります。施工者や販売者が気づけなかった不具合に、買主はどう対処すればよいのでしょうか?
本記事では住宅の不具合に対応する瑕疵保証の種類や特徴などについてご説明します。
INDEX
瑕疵担保責任と瑕疵保証
不動産の売主が持つ瑕疵担保責任と、住まいのトラブルに対応できる瑕疵保証をご説明します。
瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)とは
瑕疵担保責任とは、誰も気づけなかった隠れた瑕疵(不具合)に対しての責任です。
事前に分かっている不具合について、売主には告知義務があり、売買契約に先だって、不具合の告知をおこないます。
瑕疵担保責任は契約書に記載された事項について、後日発生したものを一定期間売主が保証します。
2020年の民法改正施行で、瑕疵担保責任は契約不適合責任と名称を変え、契約書に記載していないことでも、契約内容を果たせない不具合は対処する義務が生じました。
たとえばシロアリで倒壊の危険が出たり、家の構造の問題で住めなくなったりした場合、保証が受けられます。
瑕疵保証(かしほしょう)とは
瑕疵保証は上記のような、売買契約の目的を果たせなくなるような際に、買主が保証を受けられる制度です。不動産売買の際に、売主が買主に対して負う責任により、一定の内容の損害を保証会社に負担してもらえます。
したがって買主は、補修費用の請求や代物請求(代わりの物件への変更など)、損害賠償や契約解除を求めることが可能になります。
瑕疵保証の種類
瑕疵は、以下の4種類に分類されます。
- ● 物理的瑕疵
- ● 環境的瑕疵
- ● 心理的瑕疵
- ● 法的瑕疵
実際にどのような内容を瑕疵とするのか、以下で具体例をご説明します。
物理的瑕疵
物理的瑕疵は文字通り物理的不具合を指し、シロアリ・雨漏り・地盤沈下・土壌汚染など、問題箇所が特定できれば、目視で確認できる欠陥です。
ただし隠れた物理的瑕疵を発見するのは困難なため、売主は専門の業者にチェックを依頼することが推奨されています。
環境的瑕疵
環境的瑕疵は、周辺の環境による瑕疵です。たとえば悪臭や騒音、周囲にある嫌悪施設(工場や暴力団事務所)などが環境的瑕疵に挙げられる可能性があります。
環境的瑕疵は感じ方に個人差があるため判断が難しく、売買契約の際にあらかじめ説明をおこない、納得して買ってもらうのが一般的です。
それでもあとになってから「この環境には納得がいかない。聞いていなかった」というケースもあり得ます。この場合には保証制度は使えないため、話し合いによる解決を目指します。
心理的瑕疵
心理的瑕疵は、物件の敷地内で過去に起きた事故や事件、自殺など住む方に心理的なストレスをもたらす瑕疵のことです。事故物件とも呼ばれ、こだわりのない方は安さを理由にあえて探す場合もあります。
心理的瑕疵は過去の事象なので、契約前に告知義務があり、告知を怠ると、損害賠償につながる可能性があります。
売買物件の場合、心理的瑕疵の告知義務が必要な期間は、事故等が起きてから5~6年ほどが目安といわれていますが、気になる方は、過去に何かなかったかを確認するのがおすすめです。
法的瑕疵
法的瑕疵は、法律上不動産の自由な使用が制限される物件で、充分な理解を得ないで、あるいは気づかないまま販売され、トラブルとなるケースです。対象となりやすいのは以下の法律です。
- ・都市計画法
- ・建築基準法
- ・消防法
これらの法律に違反した物件、あるいは法律によって面積や用途の制限される物件を買うことで、のちに建て替えや建築そのものができなかったり、住宅ローンの融資を受けられなかったりします。
一般の方が事前に法令上の確認をするのは難しいため、分かった時点で契約の白紙撤回に向け話し合いとなるでしょう。
新築と中古における瑕疵保証の内容と期間
不動産の瑕疵保証は、新築や中古の別で物件の状態や販売体制に違いが出るため、保証条件も一律ではありません。以下でその違いをご確認ください。
新築の場合
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の第95条では、住宅施工会社は新築住宅の引き渡しより10年間、瑕疵担保責任を負う義務を規定しています。
この保証範囲は、雨漏りなどの基本構造部の欠陥で生じた不具合が対象とされています。具体的には下図の指定箇所が対象です。
上記品確法の規定とは別に、宅地建物取引業法の第40条で、売主に対して瑕疵担保責任の義務が規定されています。宅地建物取引業法では住宅の引き渡しより2年間、住宅全体の瑕疵を保証する内容になっています。
2つの法律が規定する瑕疵保証内容
法令 | 保証内容 | 保証期間 |
---|---|---|
品確法95条 | 住宅の基本構造部の瑕疵を保証 | 引き渡しから10年間 |
宅地建物取引業法第40条 | 住宅全体の瑕疵を保証 | 引き渡しから2年間 |
中古の場合
中古住宅は自然な経年劣化もあり、新築と同様の条件では売主が不利になるため、品確法の対象外となります。宅地建物取引業法上の保証期間も短めで、売主が個人か不動産会社かで保証期間が変わります。
売主が不動産会社
不動産会社が売主の場合、宅地建物取引業法の規定で、最低2年が保証期間となります。
不動産会社は専門知識を持ち、消費者を保護する立場で物件の取引をおこなうのが前提なので、長めの保証期間が設けられています。
売主が個人
売主が個人の場合は、一般的に3ヶ月を保証期間とすることが多いですが、契約の内容によって、期間設定に幅が出ます。
また、保証期間に不具合が生じた場合も、買主が可能なのは修復費用の請求のみとなり、売買契約の解除はできません。
また、契約不適合免責、つまり「瑕疵については保証できない現状販売で、安くお譲りします」という契約も、双方の合意によって可能です。
瑕疵保険とは
瑕疵保険は、物件の状態の専門的な検査と、それでも瑕疵が見つかった場合の保証が一つになった保険です。保証に加入するためには検査で合格するか、補修をおこなって品質を満たす必要があります。
近年では中古住宅の売買、とくに個人間の売買でも利用がさかんになっています。
買主側の注意点
不動産を購入する方は、保証の期間と保証の対象となる部分をよく把握しておきましょう。
瑕疵保険の保証対象は、基本構造部=構造耐力上主要な部分と、雨水の浸入を防止する部分に限られます。
もう少し広範囲にわたってチェックをおこない、保証も受けたい場合は、ホームインスペクションを売主に依頼するか、買主の負担で実施することをおすすめします。費用は30坪の一戸建てで5~7万円が相場です。
売主側の注意点
瑕疵保険は検査事業者が加入し、検査料を支払った中から保険に加入する形です。
今後のトラブルを避けるために保険の加入を希望すれば、検査が実施されて保険に加入できます。保証が必要となった際に、検査事業者が倒産や経営破綻していた場合でも、保険事業者から修繕費などが直接保証されます。
前述のように、より詳細にわたる検査を希望する場合は、ホームインスペクションの依頼も可能です。
まとめ
住宅の不具合に対応する瑕疵保証の種類や特徴などについてご説明しました。
まず、瑕疵の種類によって保証や対応策が異なる点と、一般的な瑕疵保証とホームインスペクションでは検査の範囲が異なる点に注目しましょう。
新築住宅であっても、施工する方の何気ない小さなミスが、将来の建材の湿害や構造の欠陥につながることも、ないわけではありません。
クレームやトラブルのためではなく、早めに手を打つという感覚で検査を依頼するのがおすすめです。
執筆・情報提供
滋野 陽造
マスコミ広報宣伝・大手メーカーのWebディレクター・不動産仲介業を経て、ライター業・不動産投資に従事。
実務経験をもとに、不動産の賃貸業・売却・購入、暮らしの法令などのジャンルで記事の執筆を行う。
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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。