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家づくりの雑学

2024.07.02

【土地は借地で家は持ち家】とは?メリット・デメリットや借地権を相続する際の注意点を解説!

実家などを相続する段階になって、持ち家の土地が借地だったのを知る場合もあります。本記事では、土地は借地で家は持ち家の場合のメリット・デメリットや、借地権を相続する際の注意点を解説しますので、参考にしてください。

INDEX

「土地は借地、家は持ち家」ってどんな状態?

土地を買って家を建てる場合は、土地も家も所有権は自分のもので、固定資産税を払って住み続けます。一方、借地の上に家を建てて住む場合、家は持ち家で所有権がありますが、土地は借地料を払って借りている状態です。

借地権とは

借地権とは、簡単に表現すると借地に建物を所有するための権利です。借地権には、地上権と賃借権の2種類があります。

内容 地上権 賃借権
目的 建物や工作物、樹木などを所有する目的で第三者の土地を使用する。 建物を所有する目的で第三者の土地を使用する。
権利の種類 物権 債権
登記の義務 必須(土地所有者の義務) 不要
抵当権の設定 できる できない
地代 あり(ない場合も) あり
譲渡・増改築・転貸時 地主の承諾は不要 地主の承諾が必要
存続期間 30年以上 最長50年(種類による)

地上権のほうが、土地活用や第三者に対抗できる権利の幅が広く、借地を活用しやすいです。しかし、借地に建てた持ち家の権利のほとんどは、賃借権で設定されています。

地上権か賃借権かの確認方法は、土地の謄本です。「地上権設定」と記載されていれば地上権です。賃借権の登記も可能ですが、地主の協力義務がないため、登記されていることはほぼありません。

普通借地権・定期借地権とは

現在施行されている借地借家法でも、借地権は別の2種類のタイプに分けられます。

普通借地権とは、契約期間を定めない場合始期から30年、更新後20年、以降の更新は10年ずつとなり、地主に正当事由が認められないかぎり、借主は土地を借り続けられます。

定期借地権は、契約期間50年以上を設定して土地を借りる権利です。

1992年8月以前の契約には定期借地権が存在しなかったため、当時の相場に近い安価な借地料で、資産価値の高い立地に土地を借り続けるという契約が、今も多数存在しています。

借地権のメリットとは

通常の所有権に比べて、借地権が持つメリットをご説明します。

1. 土地の固定資産税がかからない

土地に課税される固定資産税や、都市計画税は地主の負担となるため、借地権者は支払う必要がありません。また、新たに借地権を取得する方は、土地の分の不動産取得税や登録免許税を支払うことなく、土地の利用ができます。

2. 所有権よりも安く得ることができる

借地権の土地は、所有権の土地よりも安価で売買されるため、安く購入できます。気に入った立地があっても予算が届かないという買主にとっては、借地権上の売家は、魅力的な選択肢になるでしょう。その意味では、借地の販売は人気があります。

3. 相続や売買を行える

借地権は、借地権の土地のまま家の所有権と一緒に相続も売買も可能です。売買に際しては地主の承諾が必要ですが、相続は承諾なしに行えます。したがって、借地は資産の一種と見なされます。

ただし、借地権付きの家を売買する手続きや交渉には、通常の土地建物の売買に比べて交渉や知識が必要です。

借地権のデメリットとは

反面、借地権の所有や管理、相続などにはデメリットもある点を知っておきましょう。

1. 地代を負担する必要がある

借地権で借りている土地には固定資産税が不要な代わりに、地代=借地料がかかります。地代の相場は、エリアや土地の利用価値によってさまざまです。地代は値上げを要求される可能性もあるので、その点も注意が必要となります。

2. 建て替えや売却時に地主の許可が必要になる

土地を第三者に売却したり、建物の建て替え、増改築したりできますが、その際には地主の承諾が必要です。承諾の際には、承諾料が発生する場合が多いです。

3. 借地契約の更新料を支払わなければいけない場合も

借地の契約更新の際には、更新料の支払い義務が生じるケースがあります。契約書に更新料の件が明記されていなくても、慣習的に支払いが求められることが多いでしょう。

4. 売却時に買い手がみつかりにくい

借地権の物件は人気がある反面、購入できる人が限られる面があります。借地権の物件は、金融機関から融資を引き出しづらいためです。そのため、現金か、自己資金比率が高いなど、資金力のある買主が対象になります。

上記の事情から、売り出してもなかなか買い手がみつからないという場合も想定しておきましょう。

借地権を相続する場合の流れ

借地権の物件を相続することになった場合、どのような流れで進めれば良いかを解説します。まず、借地権の内容についてしっかり調べましょう。

1.借地権の内容を確認

借地権がどのような内容か、以下の点を確認しましょう。

  • ● 賃借権か地上権か
  • ● 定期借地権か普通借地権か
  • ● 地代はいくらか
  • ● 更新料の取り決めなどはあるか
  • ● その他地主との取り決めや約束はないか

この時点で地主にコンタクトすることがあれば、相続が発生したことと、誰が受け継ぐかや、どのような方針で借地を扱うかは後日報告する旨、伝えておきましょう。

2.遺産分割協議

調べた借地権の内容や、売却した場合の価格と売却益の見積もりが分かったら、遺産分割協議で、借地は相続人の誰がどのように引き継ぐかを決めます。

不動産は金額の大きい資産なので、相続人の誰かがすべて引き継ぐのが困難な場合は、以下の4つの方法 で分けます。

  • ● 代償分割(特定の誰かがすべて受け継ぎ、対価を支払って分ける)
  • ● 換価分割(不動産を売却し、その代金を分ける)
  • ● 現物分割(土地を分筆し、物理的に分ける)
  • ● 共有資産(分けないで、相続人全員で共有する)

共有資産化は、後年相続人の間でのトラブルにつながりやすいため、極力避けたほうが無難です。

3.地主への連絡

相続の結果を地主に連絡します。借地を今後どのようにしたいかも、併せて伝えます。相続自体に地主への承諾を得る義務はありませんが、関係維持のためにも、地主との情報共有はしっかり行っておきましょう。

4.建物の相続登記

借地上の建物は売却、取り壊し、建て替えなどさまざまな方向が考えられます。しかし、先に相続登記を行わないかぎり、所有権移転の登記はできません。借地上の建物について、生きている方への名義変更を行いましょう。

相続人で話し合った結果、建物の取り壊しとなった場合、事前の相続登記は不要です。

土地の賃借権の登記があれば、併せて書き換えの必要がありますが、前述のように、登記されていることは稀です。

借地権を相続する場合の注意点

借地権を相続する方が注意すべき点をまとめました。損をせず、トラブルになりにくい進め方のコツを知っておきましょう。

相続の際は、下記のアンケートのように不安要素が多数あるものです。安心して相談できる不動産会社などを見つけるのも大切です。

2023年 AlbaLink調べ

借地権の資産価値は要確認

相続が起きた時点で、地主から「土地を返して欲しい」と言われて、そのまま応じてしまうのは禁物です。

地価の高いエリアは借地も高額で取引されるため、その資産価値をまず確認したうえで対応する必要があります。たとえば相続後に賃貸すれば、利益を生むことができるかもしれません。

あるいは、相続人にとって利用価値がない場合でも、地主と交渉して建物を取り壊さずに返還したり、立ち退き料を得られたりすることもあります。

地主と借地権者の関係はあくまで対等ですが、良い関係を保ち、有効な話し合いにつなげたいものです。

建物の名義変更は速やかに行う

借地上の建物を相続する人が決定したら、速やかに相続登記を済ませましょう。登記せずに放置していた状態で、地主が該当の土地を売却すると、新しい地主への対抗要件が不十分となり、借地権が主張できなくなるケースもあります。

2024年4月から、相続登記の義務化もスタートしており、放置には罰則も科せられるため、名義書き換えの登記は速やかに行いましょう。

地主とは良好な関係を維持する

相続する人が決定するまで、借地権が誰のものかがあいまいになる期間がありますが、地代は相続人の誰かが一時的に立て替えるなどして支払い、滞納がないようにしておきます。

今後、借地権を売却するなどに備えて、地主との信頼関係は維持しましょう。

借地権を放棄したい場合はどうしたらいい?

相続しても相続人の誰も利用の予定がない場合、借地権の扱いに困ることがあるでしょう。借地契約を終わりにする際は、借地上の建物を解体して更地で返還するのが原則なので、それだけで多額の費用がかかります。

借地の悩みについてのアンケート結果をご覧ください。借地の相続が、4割に達しています。

AIKEY株式会社調べ

借地権の扱いには、どのような選択肢があるかをご紹介します。

1.第三者への売却

借地権付きの建物を第三者に売却すれば、建物の取り壊しは不要となります。売却にあたっての地主の承諾や承諾料の交渉は、不動産会社にサポートを依頼するのが無難です。

また、前述のように住宅ローン借り入れの難易度の高さなどから顧客層が限られるため、需要の少ないエリアでは売却に時間がかかることがあります。

なお、地主が理由なく譲渡の承諾を出さないなどの場合は、裁判所の借地非訟事件手続 を経て、承諾に代わる許可が得られる場合があります。

2.借地権と底地権の同時売却

地主にも土地の底地権を売却する意思がある場合は、借主の借地権と地主の底地権を同時に売却することもできます。

この場合買主は、両方を取得すると土地と建物に通常の所有権を得られることになり、融資も得やすくなります。

このケースでハードルとなるのは、地主と借地権者が売却価格をどのように設定するかの話し合いです。非現実的な値付けでは、いつまでも売れないことにもなりかねません。

資産価値の高いエリアでは、公的な不動産鑑定も依頼して、本格的な交渉になることもあるでしょう。

3.地主への借地権売却

地主に買い取ってもらうというより、正確には、地主へ借地権相当の補償をしてもらうという表現にもなるでしょう。もし地主に土地を自分で利用したい意思があるなら、立ち退き料という名目になるかもしれません。

土地の利用価値が高いエリアの場合、地主にとって、とても価値のある借地権買取となることがあります。

ただし、地主に土地利用の意思がない場合は、価格は安価になる可能性もあります。また、原則として建物の解体は借地権者の負担です。地主に建物を利用する意思がないか、交渉してみましょう。

4.等価交換をする

等価交換はたとえば以下のように行いましょう。まず土地を分筆して2分割し、AとBに分けます。借地権者のBの借地権と、地主のAの底地権を交換した形を取れば、それぞれがAとBの所有者となり、借地権者は地主の承諾なしにAの土地を売却できます。

土地の評価や分筆登記は、専門的な知識を持つ不動産会社のサポートのもとに行いましょう。

5.底地を買い取る

地主から借地すべての底地権を買い取り、完全な所有権にできれば、土地の活用や処分は自由となります。

この方法も、まず地主の意思ありきとなります。地主に後継者が不在で、土地よりもお金で持っていたいと考える場合、進めることが可能でしょう。底地権の買取価格の交渉や、所有権移転登記が必要です。

6.建物を賃貸する

借地上の建物を賃貸して収益としたり、土地返還に備えて建物取り壊しの費用の蓄えにしたりできます。賃貸する際に地主の承諾は不要です。

注意点として、借り手を決めやすくするためにリフォームが必要となれば、そのための費用を要します。また、大規模なリノベーションや増築などの場合は、地主の承諾が必要です。

7.相続放棄をする

相続した借地は、赤字だけを生む「負動産」だったということもあり得ます。地代や更新料の負担、建物の解体費用などがかさみ、賃貸するのも難しいというケースです。

相続財産を総計すると負債だけが残る場合は、相続放棄をすることも考えられるでしょう。

ただし、相続放棄をする人は被相続人の全財産を引き継ぐ権利を放棄します。つまり、「借地だけ放棄」はできません。また、建物を取り壊した場合、借地権の相続放棄は認められなくなります。

他の相続人への影響も考え、専門家のサポートを得ながらよく話し合いをしましょう。

処分する場合の費用負担

もっとも基本的な借地の処分の場合、建物は取り壊しが必要となりますが、そのためにかかる費用は主に以下の2つです。

  • ● 建物の解体工事の費用
  • ● 建物の滅失登記の土地家屋調査士報酬

かかる費用の相場について見てみましょう。

建物取り壊しの費用

建物の取り壊し=解体の費用の相場は、下記の表を参考にしてください。

建物の種類 20坪 30坪 40坪 50坪
木造 80~100万円 120~150万円 160~200万円 200~250万円
鉄骨造 100~120万円 150~180万円 200~240万円 250~300万円
RC造/SRC造 120~160万円 180~240万円 240~320万円 300~400万円

木造家屋の取り壊しの坪単価は、3~5万円が相場ですが、よりしっかりした構造の鉄骨やRCは、木造よりも費用が高くなります。

また、構造や坪数だけではなく、解体作業の立地も、費用に影響する要素です。都市部の借地上の建物に多い、狭小な路地や、周囲を建物に囲まれた環境では、重機の搬入が困難で手作業の比率が増えるため、価格は高くなります。

高圧線のそばの土地も、重機が利用できないことがあるでしょう。また、2006年以前の家屋で、アスベストを使用している場合、撤去作業や手続きが加算されて高額となります。

建物滅失登記の費用

建物の滅失登記は、印紙税も登録免許税も課税されません。 滅失登記前の相続登記も不要ですが、建物の所有者と手続き者との関係を示す戸籍謄本の取得費用は必要となります。

あとは登記手続きを依頼する土地家屋調査士への報酬支払いですが、平均的な相場は4~6万円 です。借地上の建物の滅失登記手続きは別途費用が発生しやすく、あと1~2万円加算される可能性もあります。

建物の滅失登記は、解体から1か月以内と定められており、申請を怠っていると10万円の過料を科せられることもあります。また、取り壊した建物が存在していることになっていれば、固定資産税や都市計画税はかかり続けるので、速やかに登記申請を行いましょう。

まとめ

土地は借地で家は持ち家の場合のメリット・デメリットや、借地権を相続する際の注意点を解説しました。

相続するうえで借地上の家のほうが、通常の所有権の土地に建てられた家よりも、さまざまな選択肢を持っています。前述の法改正の一環で相続登記は3年以内というルールができ、それまでに権利移転の方針を決めなければなりません。

相続人同士や地主との話し合いなど、面倒な点はありますが、ベストの方法を決めたうえで、早めの手続きを進めましょう。

© Housing Stage All rights reserved.

この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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