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特集・コラム

2024.07.26

気密性の高い家とは?気密性の高い家のメリット・デメリットを紹介

近年では家づくりをする上での住宅性能の指標として、気密性の高さが今注目です。今回は気密性の高い家の特徴について、暮らしにかかわるメリット・デメリット、建てる際の注意点などをご紹介します。

INDEX

家づくりでは気密性が重要?そもそも気密性とは?

気密性とは、屋内と屋外の間の空気の出入りの少なさのことです。住宅の場合、気密性はすき間風が少ない状態を指し、隙間風が通わなければ、室温を維持しやすい環境が可能です。

気密性が高いと、室内の空気は外に漏れにくくなり、逆に外の空気が室内に入りにくくなるため、室温が一定に保ちやすくなるでしょう。

暖房や冷房で一度作った室内と外気との温度差は、気密性が高いことで逃がさずに保たれるため、気密は住宅のエコ性能や快適性に大切な役割を果たす要素です。

したがって、家づくりの上で、気密性はとても重要な要素です。

最近の家は、目に見えるような隙間を見つけることは不可能ですが、私達の気付かない間に、家のほんのわずかなすき間から、大量の空気が出入りしています。これを抑えることで、お得で暮らしよい家にすることが可能です。

気密性と並行して、家の外壁や窓ほか、あらゆる場所から屋内の温度を逃がさないための性能が、断熱性能です。気密性能と断熱性能は、家の性能を高める大切な要素となっています。

以下は戸建住宅の施主が設備の選択理由について回答したデータです。デザインや防災よりも、高気密・高断熱が優先されています。

国土交通省 平成29年度住宅市場動向調査

気密性とは

気密性の違いで、家の特徴には以下の違いが出ます。

高気密な住宅の特徴

高気密の住宅 低気密の住宅
室内温度 冬暖かく、夏涼しい 冬寒く、夏暑い
光熱費 安価になる 高額になる
家屋の傷み 傷みにくい 傷みやすい

高気密で室内の温度を一定に保てるため、光熱費は安価になります。また、家の傷みに違いが出る理由は、高気密の家が結露の発生を抑えられることによるものです。また、気密度が高いと換気の効率もよくなるため、湿度の籠もりも少なくすることができます。

高気密住宅の施工方法は、壁の内側や床下などに断熱材や防湿シート・気密テープなどを使用して気密度を上げます。住宅内の隙間をしっかりと埋め、外気が通さないようにするのがポイントです。気密性が高いことから、冷暖房などで温度をコントロールした空気を室内にとどめて、外気をシャットアウトします。

気密性の基準について

気密性を数値で表す場合、「C値」で表現します。C値とは隙間相当面積を指し、家にどの程度の隙間があるかを数値にしたものです。C値は以下の式で求めます。

C値=家全体の隙間の合計(c㎡) ÷ 建物の延床面積(㎡)

C値が低いほど家の隙間の量は少なく、気密性の高い家となります。

以前は地域ごとのC値の基準値が国で定められていました。C値が北海道で2.0以下、その他の地域で5.0以下とされ、この値よりも小さければ高気密の家でした。この規定は現在はなくなっています。

C値5.0とは500c㎡(はがき3.3枚相当)ですが、現在では技術が進んで、1.0を切るのが一般的な目標です。中には0.08の数値を達成している工務店もあります。

C値にすぐれた家にするには、建築の各工程ですき間ができやすい箇所に気密処理をし、細かい点検を行いながらすき間を埋める作業が必要です。C値を測定するための、気密検査専用の機械もあります。

C値の比較※隙間の大きさを床面積100㎡(約30坪)で比較した場合

家の種類 C値 すき間の大きさの例
一般的な家 10㎠/㎡ A3用紙
省エネ基準の家(全国) 5㎠/㎡ B5用紙
省エネ基準の家(北海道・東北) 2㎠/㎡ はがき用紙
現在の平均的な目標値 1㎠/㎡ はがき用紙半分強

気密性能を対策していない一般的な住宅の場合、C値は「10㎠/㎡」ほどで、家の壁には合計でA3用紙1枚分の穴が空いているのに相当します。

また、近年の気密性能を高める住宅の平均的なC値の目標は「1㎠/㎡」ほどで、家の壁にはがき用紙半分強に相当するすき間が空いてる理屈です。

断熱性能の指標となるUA値(外皮1㎡あたりどのくらいの熱が逃げるか)は、以下の式で求めます。

UA値(w/㎡・k)=熱損失量の合計(w/k)÷外皮面積(㎡)

気密性の高い家の5つのメリット

高気密の家のメリットを、暮らしの中で体感できるのは、以下の事がらでしょう。

  • ● 季節を問わず快適
  • ● 冷暖房費が安くなる 
  • ● 遮音性が高くなる
  • ● 結露・カビが発生しづらい
  • ● 外気の汚染物質の侵入を防ぐ

以下項目ごとにご説明します。

季節を問わず快適

高気密の家は、外気の影響を受けにくく、年間を通して室内の温度差を少なくできます。季節を問わず家の中が快適なのは、大きなメリットでしょう。

また、家の中の温度ムラをなくすことも可能です。断熱性が高くても、気密性の低い家では1階と2階の温度差が大きかったり、廊下やトイレ、脱衣場だけは寒かったりなど、温度のムラが発生します。

屋内の温度ムラが激しい場合、寒暖差疲労から体調不良を起こしやすくなり、風邪を引きやすくなったり、夜に寝付きが悪いなどの症状が出ることがあります。温度差疲労 は自律神経失調から、心の不調へもつながる恐れもあるでしょう。

気密性と断熱性を高くして家の中の温度ムラをなくせば、急激な温度差で心臓や血管の疾患が起こる「ヒートショック」も防ぐことができます。

冷暖房費が安くなる

高気密の状態は、外気を遮断してくれることから、室温を逃がしにくくすることが可能です。冷暖房機器の稼働も緩やかで済むので、冷暖房費を抑えることができるようになります。

逆に気密の低い家では、隙間風の外気が絶えず室温に影響し、外気と室温を近づけてしまう状態です。つまり、高気密の家はそれだけで断熱性も上がることになります。

近年は電気代や原油価格が高騰しているため、冷暖房費用の節約は、家計にとっては有難いでしょう。

ただし、24時間暖房・換気前提で設計されている高気密住宅の場合は、光熱費節約目的で中途半端に暖房や換気を停めると、かえって光熱費が高くなったり、家が傷むので要注意です。

遮音性が高くなる

音は空気の振動で伝わるため、気密性が高いと遮音性も高くなります。

住宅の防音では、外の音の遮断と、家の中の音が外に漏れることの両方が対象です。気密性が良いと、道路の車の音や雨の音がほとんど聞こえないと感じるレベルにすることもでき、同じく室内の音も外に漏れにくくなります。

高気密の遮音性は、子どもやペットがいるご家庭と、家の中で静かに過ごしたい方の両方にメリットになるでしょう。

結露・カビが発生しづらい

高気密の住宅は、温度だけでなく湿度も一定にコントロールしやすくなります。そのため、カビや結露が発生しにくくできるでしょう。

結露は空気が冷やされることで、水蒸気が凝縮されて水滴が生じる現象です。窓のそばの暖かい空気が冷やされて絶えず水滴を生じ、カビを発生させてしまいます。

外気温の影響が少なければ結露と、結露から発生するカビを抑えることが可能です。同時に、結露やカビが影響して起きる建物の傷みも抑えられるでしょう。

外気の汚染物質を防ぐ

花粉症やアレルギーの方にとって、花粉やPM2.5のシーズンは、洗濯物も外に干したくないものです。外気の汚染物質は粒子がとても小さいため、ドアや窓だけではなく隙間風を通じても屋内に侵入してきます。換気口などはフィルターがありますが、隙間風は粒子を防ぐことができません。

下図は、花粉症の症状の最もひどい時期についてのアンケートです。空気が乾燥して細かい粒子が飛散しやすい春先が、もっとも症状が出やすい結果となっています。

2022年 ダイキン調べ

隙間風の遮断は、アレルギー対策と症状の緩和に効果があるといわれています。カビが少なくなれば、多湿な時期のカビアレルギーも出にくくなるでしょう。

気密性の高い家の4つのデメリット

つづいて、高気密の家で感じやすい以下のようなデメリットと、その対策方法をお伝えします。

  • ● 空気が乾燥しやすい
  • ● ハウスダスト対策が必要
  • ● 内部結露が発生するリスク
  • ● 住宅の建築費が高くなる可能性

空気が乾燥しやすい

高気密の状態は、室内の空気が乾燥しやすいため、乾燥肌やドライアイの方には、加湿器などの対策が必要になることがあります。

冬季の暖房では、燃焼する時に水蒸気の出る石油ファンヒーターのほうが、エアコンよりも加湿が可能です。しかし石油ストーブは高気密の住宅では一酸化炭素中毒のリスクが高まり、窓開け換気などが必要になる点でおすすめできません。

室内干しの洗濯物は良く乾くため、室内の加湿を兼ねて、対策にするのも良いでしょう。

ハウスダスト対策が必要

気密性が高い室内では、自然換気が抑制されるため、ハウスダストが溜まりやすくなります。こまめな清掃をしやすい環境を整えるほか、換気にも留意しましょう。

内部結露が発生するリスク

内部結露とは、室内の結露とは違い、屋根裏や壁の中で起きる結露のことです。施工のトラブルで断熱材のわずかなすき間から空気の通う隙間ができた場合、外気との温度差で結露してしまいます。

対策は、工事の際によく確認し、壁の中などの空間はしっかり断熱材で埋めてもらうようにしましょう。

建築費が高くなる可能性

断熱性や気密性を高めるためには、専用の資材や工法が必要となるため、一般的な住宅に比べて工事費用は高価となる可能性があります。高くなる費用は、建築会社で違いがあるため、事前に確認しておきましょう。

しかし、高気密にすることで冷暖房費用が抑えられ、長い目で見れば節約することも可能です。

また、高気密・高断熱の住宅は、地域型住宅グリーン化事業やネット・ゼロ・エネルギーハウス(ZEH)支援事業などの助成金を申請することもできます。一般的にZEHへの申請の場合、高気密の性能は、C値で1.0前後が必要です。

これらの制度は、年度による実施の有無や、内容の変更の可能性がありますので、申請の際は最新の情報を確認しましょう。

気密性・断熱性が高い家を建てる際の注意点

技術的にとても進んだ高気密の住宅ですが、以下の点は注意しながら建てたり、暮らしたりしたいものです。

会社・業者選びを重視する

高気密の性能は施工会社の技術力や、経験度によっても左右されます。前述のように壁内に少しでも隙間をつくれば、内部結露が発生しやすくなる場合があり、建物の傷みが起きるでしょう。信頼できる会社を選ぶためには、以下の3点を考慮しましょう。

  • ● 施工実績の豊富さ(特に寒冷地)
  • ● ZEH(ゼッチ)の施工に対応している
  • ● 気密測定が実施できる

ZEHは高気密や高断熱に優れ、高効率な設備の導入、再生可能エネルギーの利用などで年間のエネルギー消費量をゼロにすることを目指した住宅です。総合的な住宅性能の実現にたけた施工会社を選べば、技術力の証明になります。

気密測定は前述のとおり、C値の測定気を使った気密度測定のことです。施主様同行で測定結果のチェックを行います。

換気システムの設置が必要になる

高気密高断熱の住宅はその性質上、外気や湿度を遮断できるかわりに、室内の空気がこもりやすくなります。施工時に使用する化学物質やハウスダストなども室内に留まりやすくなり、シックハウス症候群やアレルギーの発症リスクが高くなることも考えられるでしょう。

エコ性能や快適性を得ながら、健康面に配慮して暮らすために、正しい換気や窓開けなどの配慮が必要です。

このため高気密住宅は、2003年以降の施工から、24時間換気システムの設置が義務付けられています。

まとめ

気密性の高い家の特徴について、暮らしにかかわるメリット・デメリット、建てる際の注意点などをご紹介しました。

これまで暮らしてきた普通の気密度の家との違いや、暮らしてみた感じなど興味は尽きません。しかしメリットを考えると、将来的にはどのタイプの家も、気密度を上げた施工に近づいていくことが予想されます。

室内の温度や湿度の管理は健康に直結するので、気密や自動換気に頼り過ぎない暮らしを心がけましょう。

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