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家づくりの雑学

2025.01.09

鉄骨造の耐用年数は?寿命や法定耐用年数、管理方法を解説

鉄骨造というと、大規模なビルや公共建築物などに用いられるという印象がありますが、住宅用にも多く採用されています。

木造や鉄筋コンクリート造に比べて長持ちするのか、耐久性はどうかなど気になるところです。本記事では、鉄骨造の耐用年数や寿命、法定耐用年数、管理方法などについて解説します。

以下は、これから家づくりをする人に、住みたい構造について質問したものです。木造と2択の質問では、自然災害などに対する耐久性のイメージから6割以上の人が鉄骨を選ぶ結果となったようです。

2015年 いえらぶ 調べ

INDEX

鉄骨造の耐用年数はどのくらい?

鉄骨造は耐久性・耐震性にすぐれ、工場生産できるため品質が安定しているのが特徴です。反面熱伝導率が高いことから火災などの熱に弱く、熱で曲がってしまうのが弱点でしょう。

耐用年数とは、その構造の建物の寿命を表したもので、いくつかの種類があり要注意です。鉄骨造にも厚みによっていくつかの種類があり、また住宅か事務所かによっても規定上の耐用年数は異なります。

鉄骨造の住宅の耐用年数は、鉄骨の厚みが4mm超の場合で34年、4mm以下は27年です。

木造や鉄筋コンクリート造を含めた耐用年数の比較を、以下でご覧ください。(以下は法定耐用年数)

建物の構造ごとの法定耐用年数

建物の構造 住宅の耐用年数 事務所などの耐用年数
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造 47年 50年
金属造で鉄骨の厚さが4mm超 34年 38年
金属造で鉄骨の厚みが3mm超4mm以下 27年 30年
金属造で鉄骨の厚みが3mm以下 19年 22年
木造 22年 24年

鉄骨の厚み6mmを境に、厚いものを重量鉄骨、薄いものを軽量鉄骨と呼びます。

鉄骨造の耐用年数には種類がある

前述の耐用年数の種類などについて、もう少し詳しくご説明します。前項でご紹介した年数で、鉄骨造やほかの構造である建物の寿命が終わるということではありません。

前項でご紹介した軽量鉄骨と重量鉄骨の厚さの違いは、具体的には下図の通りです。

①法定耐用年数

法定耐用年数とは税制上、減価償却の計算時などに使用する指標です。つまり減価償却の対象となる期間がいつまでかを規定している年数で、建物の寿命を表しているわけではありません。

居住用の建物では、住宅ローン査定の際の担保価値に用いられる基準です。

鉄骨造の中でも、軽量・重量、建物の用途などによってさらに細かい法定耐用年数の指定があります。(下表)

鉄骨造の建物の法定耐用年数

鋼材の厚さ 用途 法定耐用年数
4mmを超えるもの 事務所用 38年
店舗・住宅用 34年
飲食店・車庫用 31年
旅館・ホテル・病院用 29年
公衆浴場用 27年
工場・倉庫用 31年
3mmを超え、4mm以下のもの 事務所用 30年
店舗・住宅用 27年
飲食店・車庫用 25年
旅館・ホテル・病院用 24年
公衆浴場用 19年
工場・倉庫用 24年
3mm以下のもの 事務所用 22年
店舗・住宅用 19年
飲食店・車庫用 19年
旅館・ホテル・病院用 17年
公衆浴場用 15年
工場・倉庫用 17年

参考:国税庁「耐用年数(建物/建物附属設備)

②経済的耐用年数

経済的耐用年数は建物の経済的価値に注目した耐用年数です。つまり建物の経済的価値がなくなるまでの年数の指標なのですが、建物の経過年数や劣化度合いだけでは一律で測れません。

その理由は建物の立地によって、不動産市場での利用価値に差が出るためです。経済的耐用年数は競売や相続の争議などで、不動産鑑定士によって正式に計算されるなどの例があります。

鉄骨造の場合、平均的には法定耐用年数と同じくらいに判断されるケースが多いようですが、立地や過去の修繕状況、被災の有無なども加味されて建物ごとに算出されるのが正式です。

③物理的耐用年数(寿命)

物理的な耐用年数が、一般的に考える寿命=「建物がいつまで使用できるか」に相当します。

以下は建物の構造別の物理的耐用年数を算出したデータです。

建物の平均寿命の推計(年数)

構造・用途 1997 2005
全国(除東京) 東京特別区 全国
RC造専用住宅 49.94 41.00 56.76
RC造共同住宅 45.26 43.23 45.17
RC造事務所 45.63 45.61 51.39
鉄骨造専用住宅 40.56 35.04 51.85
鉄骨造共同住宅 41.00 35.25 49.94
鉄骨造事務所 32.95 29.70 41.70
鉄骨造工場 45.81
鉄骨造倉庫 45.16
木造専用住宅 43.53 43.53 54.00
木造共同住宅 37.73 33.10 43.74
43.74 43.82 34.31 53.89

早稲田大学・小松幸夫教授 研究資料「1997年と2005年における家屋の寿命推計

赤字部分の鉄骨造専用住宅の2005年データによれば、鉄骨の家は罹災などの要因がなければ、51.85年の寿命があると考えられるようです。

同時に木造の戸建て住宅も54.00年と50年以上の寿命を示し、1997年当時と比較して飛躍的に長く使えるようになったことが分かります。

いうまでもありませんが、構造を問わず上記の平均寿命を超えて使われ続けている住宅が大多数です。

耐用年数が過ぎている建物におけるリスク・注意点

耐用年数が過ぎていてもまだまだ使えるという考え方は、できるかもしれません。しかし古い建物は相応のデメリットを背負うことも確かです。耐用年数が過ぎた建物のリスク・注意点をご紹介します。

売却が難しくなる

耐用年数を過ぎた建物は、購入者もさまざまなデメリットを引き継ぐことになるため、売却はしにくくなり、価格をかなり下げることとなるでしょう。

鉄骨造は頑丈ではありますが、鉄鋼は水分に弱いため、腐食がもとで雨漏りが生じやすく なるほか、外壁や屋根との隙間のシーリングが劣化することで浸水しやすくなることもあります。

補修の必要だけでなく、構造としての性質が建物の評価につながる点に注意が必要です。

住宅ローンが通らなくなる

前述のように、住宅ローン貸し付けの際の担保価値は、法定耐用年数が基準 となります。ほかのさまざまな要素から融資を受けることに成功しても、金利が高かったり、融資の期間を短く設定する必要があったりと、不利な条件の融資となってしまうでしょう。

融資を受けづらい物件は自己資金比率を上げざるを得ないため、売りにくい・買いにくい物件となります。

節税しづらくなる

減価償却の期間が過ぎた建物は、節税できる経費がそれだけ減ってしまうため、納める税金が高くなります。買い手からも敬遠され、売りづらくなります。リフォームや立地など、ほかのセールスポイントで宣伝する以外にありません。

修繕などの維持費がかかる

鉄骨の経年変化は前述の通りですが、内外装や設備も、定期的なメンテナンスが行われていない部分は劣化が進んでいるため、修繕や交換に予算が必要となるでしょう。

築年数の古い鉄骨造の物件を買う場合は、築年数以外に大規模修繕の履歴をチェックすることが大切です。

耐用年数を超えた鉄骨造物件の活用方法

耐用年数を超えた鉄骨造の建物を持っている場合、どのようにすれば良いでしょうか。この項ではそのオーソドックスな選択肢をご紹介します。

大規模修繕で対応

大規模修繕は、構造体を残して建物の内装や設備を新しくする工事です。普段目の届かない部分まで解体するため、構造体に起こっている問題もある程度対策でき、内外装自体は新築同様となります。

費用はかかるものの、建て替えに比べると安く上げることができるでしょう。耐震性や耐久性の改善をはかることもでき、資産価値を回復することにつながります。

建て替えする

根本的な解決策が建て替えです。その場所をまだ末長く利用する意思がある場合、耐用年数が約50年プラスされることになります。

最新の設備や住まいの仕様も取り入れられ、経済的かつ快適な暮らしにつながる点も魅力です。

売却する

売却する場合はトラブル防止のため、建物の状態をよく把握したうえで細かく告知できるようにすることが、早くてスムーズな売却につながります。

また、建物がなくとも立地としてどの程度の価値があるか、どんな利用法が想定できるかを不動産会社と相談したうえで、売却の方針を検討しましょう。

贈与や寄付

使い道のない土地・建物の場合は、贈与や寄付も検討しましょう。自分は土地活用のために尽力する気はないものの、子どもに頑張ってもらおうという場合は贈与の話し合いをします。

ただし資産価値の高い土地は高額の贈与税が発生するため、駐車場や資材置き場などの借地にして相続まで待つという結論となるかもしれません。

寄付の相手先は自治体が主流です。寄付であれば、贈与税はかかりません。受け入れがないこともあるため、隣接する土地の所有者に相談することもできますが、譲り受けた隣接地の所有者に贈与税が発生します。

また、寄付の場合には建物は取り壊しておくことが必要です。

耐用年数を超えた鉄骨造物件を売却する方法

売却する場合、主に3つのパターンが考えられます。それぞれのメリット・デメリットを把握してください。

建物ごと売却する

手間が少なくシンプルなのが、建物を残したまま売却する方法です。前述の理由で価格は安くなってしまいますが、買い手さえ見つかれば、注意が必要なのは契約適合の責任のみでしょう。

現状販売で契約不適合を免責とするか、ホームインスペクションを行って、買主の安心を担保するのも良いです。

また、新しい住居のための費用が必要となるため、建て替えとのメリット比較はよく行うことが必要となります。

更地にして売却する

法定・経済・物理的の3つの耐用年数いずれも過ぎているような建物は、土地の立地によっては壊して更地にして売るほうが、早く・高く売れることもあります。

ただし、鉄骨造の住宅は30坪で120~180万円の解体費用がかかるため、それを販売価格にどこまで乗せられるかは、不動産会社とよく相談のうえ、解体を検討しましょう。

不動産会社に売却する

不動産会社への売却は「買取」とも呼ばれています。建物ごとの売却の媒介を不動産会社に依頼するよりもさらに手続きなどがシンプルで、トラブルなどの可能性ももっとも低い方法です。

買取は仲介手数料、売主への契約不適合責任、残置物の片づけとその費用、売り出しとそれに伴う広告宣伝期間などがすべて不要になります。

一般の買主ではなく不動産の専門家に売るため、免除される事柄が多いのが魅力です。

ただし、買い取った不動産会社はほとんどの場合、建物を取り壊し、リスクを負って売り出して利益を出す必要があるため、通常の売買の7割程度と、安い価格での取引となります。

耐用年数(寿命)を伸ばす方法

法定耐用年数は動かしようがありませんが、建物本来の寿命と、経済的な耐用年数の価値を延ばす方法は、メンテナンスと修繕です。どのような点に留意すれば良いのでしょうか。

定期的なメンテナンス

前述のように、建物の大敵は外壁や屋根のひび割れ・隙間です。そこから雨水や風が侵入して傷みが進行します。

新築当初から計画し、10年を節目としてあらかじめ修繕計画を立てておきましょう。使われている建材や塗料などで耐久性が異なるため、何年おきに補修が必要かなどは、最初から把握しておけば簡単です。

内装の床やクロス、水回りの設備などにも寿命があります。定期的に新しくすることは性能の回復だけでなく、美観も復活して気持ちよく過ごせるのも利点です。

大規模修繕工事

集合住宅で支払っている修繕積立金は、外壁などの共有部分など大きな出費を伴う修繕に備えるものです。

マンションでは構造部を残して建物を刷新する規模の修繕は不可能ですが、定期的な塗装や外壁補修、防水の再工事などで、建物の傷みを防いでいます。

鉄骨造の法定耐用年数を用いた減価償却の計算方法

お持ちの建物は、どのくらいの減価償却率となっているのでしょうか。この項では減価償却できる年数の計算方法をご紹介します。

法定耐用年数を一部経過している場合の計算方法

新築から法定耐用年数以内の建物の場合、経過年数に応じて以下の数式で計算します。

(法定耐用年数-経過年数)+(経過年数×20%)=耐用年数

たとえば、築10年の鉄骨造の建物の耐用年数は以下です。

(34年-10年)+(10年×20%)=26年

法定耐用年数をすべて経過している場合の計算方法

法定耐用年数を消化し終わった建物の場合は、経過年数に関わらず以下の数式で計算します。

(法定耐用年数×20%)=耐用年数

たとえば、築34年目以降の鉄骨造の建物の耐用年数は以下です。

(34年×20%)=6年(端数切り捨て)

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まとめ

鉄骨造の耐用年数や寿命、法定耐用年数、管理方法などについて解説しました。

住宅の構造は、坪単価の高価な重量鉄骨や鉄筋コンクリートがすぐれているということではありません。暮らしに対する希望や住まいの手触りに対する好み、風土や立地とのマッチングなどさまざまな要素から選ばれるものでしょう。

それぞれの構造の良さをひととおりご理解のうえ、検討されるのをおすすめします。

© Housing Stage All rights reserved.

この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。

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