2025.03.28
ZEH(ゼッチ)の住宅とは?メリット・デメリットや補助金について解説

ZEH(ゼッチ)の住宅が、徐々に知名度を高めています。ZEHは現在、家づくりの際に選ぶ性能の選択肢ですが、2030年から新築のすべての住宅が装備する省エネルギー基準の目標とされています。(太陽光発電の設置は2030年で新築の6割が目標)
これから家づくりをするうえで、ZEHとは何かよく分からない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ZEHとはどのようなものか、メリット・デメリットやコスト、補助金などについて解説します。
INDEX
ZEHとは?定義と基本要素

ZEHはゼロ・エネルギー・ハウスの略で、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスといわれることもあります。前述の国における省エネルギー推進のためのエネルギー基本計画で定められた政策目標で、「使うエネルギー≦創るエネルギー」の実現を目指すものです。
下図のように、家庭の単位で消費するエネルギーに対して、従来より消費量を減らすことと、太陽光発電などによって創り出すことで収支ゼロを目標とします。

ZEHに必要な基本要素とは、「断熱」「省エネ」「創エネ」の3つを指します。
断熱は冬季に屋内の熱を外に逃がさず、夏季には外気の熱を屋内に入れないよう遮断する性能のことです。ZEHとして認定を受けるためには、季節や気候による屋内の温度差を小さくして、冷暖房に消費するエネルギーの量を減らす必要があります。窓や壁面ほかの断熱性能・気密性能が対象です。
省エネルギー化を進めるために、給湯・空調のほかに照明や家電製品に省エネタイプを使用します。高効率の給湯器やLED照明、省エネタイプのエアコンなどです。
そのほかに、消費エネルギーと太陽光発電などで創るエネルギーの双方を確認できるHEMS(ヘムス)というシステムを設置します。
以下は、ZEHを導入することでどの程度光熱費が下げられたかというアンケートへの回答です。8,562円が月の平均節約額ですが、1万5,000円以上という回答も15%あります。

創エネルギーは、太陽光発電システムなど、再生可能エネルギーシステムを備えることで可能となります。創り出すエネルギーが、消費するエネルギーを上回ることが目標です。
家計にやさしい省エネの仕組み
省エネルギーと創エネルギーで削減できた光熱費は、家計にプラスとなります。以下は年間平均のエネルギーコストの収支をZEH住宅・一般住宅で比較したものです。
ZEH住宅 | 一般住宅 | |
---|---|---|
年間平均売電額 | 11万7,089円 | 0円 |
年間平均エネルギーコスト収支 | -5万9,245円 | -17万6,334円 |
環境共創イニシアチブ「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス実証事業調査発表会2023」より
ZEH住宅・一般住宅で年間のエネルギー購入額を同等としていますが、断熱性能や家電製品の消費電力差を考えると、実際には一般住宅のほうがより高額となるでしょう。
省エネに貢献する設備や機器の基準は、具体的に以下のようなものがあります。
- ● エアコン: エネルギー消費性能計算プログラムを備えた機種を主たる居室に設置
- ● 照明器具: 一定の基準・安全性に準拠したLED機種
- ● 換気設備: 一定の交換効率・消費電力基準を満たす各種換気設備
- ● 節湯型水栓: キッチン・バスルームに設置
- ● 電気ヒートポンプ給湯器: 自然冷媒(CO2)を用いた電気ヒートポンプ給湯器
また、これらの設備や機器の働きをモニター・制御するのがHEMS(ホーム エネルギー マネジメント システム)です。HEMSを使用することで家庭で使うエネルギーを節約できます。
家電や電気設備と接続し、電気やガスなどの使用量をモニター画面などで「見える化」するほか、家電機器の使用量を最適化するように自動制御します。
見える化することによって、住まう人の意思で「節約しよう!」という使い方の見直しにも貢献できる仕組みです。
政府は2030年までにすべての家庭におけるHEMSの導入を目指しています。
エネルギー収支ゼロの実現方法
創エネルギーの主役は、稼働に二酸化炭素を排出しない太陽光発電です。太陽光のエネルギーを電気エネルギーに変換する太陽光発電は、20%の発電効率といわれます。
この効率は、ほかの再生可能エネルギーと比較しても標準的なものといえ、住宅に比較的容易に設置可能なことも利点です。
発電方法 | 発電効率(目安) | 発電コスト(kWhあたり) |
地熱発電 | 約10% | 16.7円 |
バイオマス発電 | 約15~30% | 13.2~29.8円 |
風力発電 | 約20~40% | 19.8~30.0円程度 |
太陽光発電 | 約20% | 12.9~17.7円程度 |
蓄電池システムは太陽光パネルなどで発電した電気を蓄えておける設備です。電力会社から供給された電気を蓄えることもでき、光熱費の節約のほか、災害などの非常時の備えにもなります。発電したまま消費できない状況を抑えることでエネルギー収支を改善可能です。
なお、今後エネルギーの自給自足を推進していくうえでは、以下の課題のクリアが必要となると考えられます。
- ● 太陽光発電を実装した世帯の増加
- ● 各世帯での節電の推進
- ● 発電のためのコストの削減
- ● 発電効率上昇による電気の安定供給
ZEH住宅のメリット

ここであらためてZEHの住宅に暮らすことのメリットをまとめ、ご紹介します。
光熱費の支出を減らせる
省エネルギーへの取り組み、断熱の強化、太陽光発電による創エネルギーの3つすべてが、家庭での光熱費削減につながります。また、発電電力の余剰分を電力会社に売った収益も、光熱費から差し引いて考えられるでしょう。
さらに、断熱性能がアップすれば、節電下の環境でも我慢することなく快適に過ごすことが可能となり、むしろ生活のクオリティを上げることができます。
補助金や控除などの制度の対象になる
ZEHの住宅や、ZEHの性能に準ずると認められるNearly ZEH、ZEH Orientedなどの住宅は、政府の推進する政策に基づき、補助金や税額控除などの制度が設けられています。
上手に利用することで、導入の際の初期費用や維持費を抑えることが可能です。
高値で売れる可能性がある
ZEHの住宅は快適性が高く、光熱費も安く抑えられることから、高値で売却できる可能性があります。
ZEHは一般社団法人「住宅性能評価・表示協会」の「BELS」という認証制度において、省エネ性能の基準で高評価を得られます。これは具体的な資産価値の指標にでき、すべての新築住宅でZEHの基準が標準化されるまでの恩恵となるでしょう。
災害・非常時に電力を備えられる
蓄電池を設置していれば、停電や災害時の非常用電力としても利用が可能で、電気自動車の充電、あるいは電気自動車からの給電など、柔軟な対応ができるようになります。
また、オール電化を導入した場合は、災害時の電気インフラの復旧はとても早い点や、エコキュートの貯水タンクの水が非常用に利用できるなど、ZEH基準の住宅は災害に強い面も利点です。
このほかにも、屋内の気温を一定に保てることでヒートショックのリスクを下げられる点は、小さな子どもや高齢者にも安心なメリットでしょう。
ZEH住宅のデメリットと注意点

ZEHの住宅にも、現時点で一般の住宅と比べたデメリットがないわけではありません。
天候の影響を受ける
太陽光を利用する創電のシステムは、天候によって発電量が左右され、年間の日照量の変動によって季節の差や地域差が生じるのが難点です。「冬場のソーラーは意味ない」といわれる地方もあります。
余剰な電気を売る売電も、現在価格相場が下がっており、以前のような収益から購入する電気代を埋め合わせるまでには至りません。
常に安定した発電量を得ることは難しいため、ソーラーパネルの高効率化や蓄電池の高性能化で対応していくこととなるでしょう。
設備維持・投資費用がかかる
ZEHの設備は、故障した際や交換の際にメンテナンス費用がかかります。
太陽光発電のパネルは飛来物・屋根修繕のトラブルなどによる破損や経年劣化から、修理や交換が必要となるほか、点検や清掃のコストも必要です。
パネルの寿命は30年以上はあるといわれていますが、細かい費用も含めた出費を事前に予定しておきましょう。メンテナンス費用を抑えるために、アフターサービスや保証の手厚いハウスメーカーを選ぶことをおすすめします。
このほかに、ZEH住宅では住宅性能を高めるための設備導入に関して、間取りやデザインに一部制限がかかることもあるでしょう。
たとえば大きな窓や天窓、吹き抜けなどが断熱性能向上のために作れない場合や、ソーラーパネルの設置のために、屋根の形や角度が制限を受ける可能性があります。
希望の間取りやデザインにこだわりたい場合、複数に設計依頼して提案を受けてみましょう。
ZEH住宅の補助金制度

ZEH住宅に関する補助金制度の申請は、どのようにして行えばいいのでしょうか。
ZEH住宅の補助金は、以下のような内容で事業が行われています。(事業内容は年度によって金額や基準の変更、実施の有無までさまざまな変更の可能性があるので、常に最新の情報を確認してください。)
戸建住宅向けZEH補助金(2025年度参考)
種別 | 補助対象設備 | 補助額 |
---|---|---|
基本 | ZEH基準 | 55万円 |
ZEH+基準 | 90万円 | |
追加 | 蓄電システム | 上限20万円 |
直交集成板(CLT) | 定額90万円 | |
地中熱ヒートポンプ・システム | 定額90万円 | |
PVTシステム | 65~90万円 方式やパネル面積で異なる |
|
液体集熱式太陽熱利用システム | 12~15万円 パネル面積で異なる |
申請手続きの具体的な流れ
申請手続きの流れについては、以下のとおりです。
- 1. ZEHポータルを利用した電子申請(施主か施工業者)
↓ - 2. 受付・審査(事務局)
↓ - 3. 交付決定通知を受理 ⇒ 工事請負契約(施主・施工業者)
↓ - 4. 着工前撮影・BELS取得・着工(施主・施工業者)
↓ - 5. 中間報告・中間検査
↓ - 6. 実績報告(施主・施工業者)
↓ - 7. 交付額確定通知(事務局)
↓ - 8. 精算払請求書(施主・施工業者⇒事務局)
↓ - 9. 支払い・引き渡し
補助金を申請する場合は、対象となる指定住宅施工業者が限定されるため、事前に確認が必要です。
ご参考:
ZEHビルダー/プランナー一覧|ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス補助事業
また、「戸建住宅ZEH化等支援事業」と「子育てグリーン住宅支援事業」は併用できません。
「子育てエコホーム支援事業」の申請資格のある方は、予定されるZEH基準の施工レベルによって、どちらに申請するかを決めましょう。追加設備を設置しない場合は「子育てエコホーム支援事業」のほうがお得です。
ZEH住宅に関するよくある質問

ここまでのまとめを兼ねて、ZEHに関するよくある質問をご覧ください。
1. ZEHとはどんな住宅ですか?
A: ZEH住宅(ゼッチ住宅)とは、(ネット・)ゼロ・エネルギー・ハウスの略です。年間で消費するエネルギー量と、太陽光発電などの再生可能エネルギーによって自宅で生成するエネルギー量が合計でゼロ以下を目指す住宅です。
2. ZEH住宅は割高ですか?
A: 一般的な住宅に比べて初期費用への投資は高額です。しかし長期的には光熱費の削減により、投資額を回収していく方向となります。
3. ZEH住宅で注意する点は何ですか?
A: 居住開始以降も設備のメンテナンスのために費用を計上しておく点や、申請の際に、施工できる業者が限られる点などです。
4. 土地の名義が申請者と異なる場合でも、補助金の申請は可能ですか?
A: 土地の名義は不問です。ただし、使用貸借や借地権など土地の権利関係が明確となっていることが条件となります。
まとめ

ZEHとはどのようなものか、メリット・デメリットやコスト、補助金などについて解説しました。
家づくりの際は、さまざまな要素の中から家族のこだわりを実現するべく優先順位を付けていくことになります。
そこで近年の電気料金の高騰や、大規模地震の増えている状況を考えると、省エネ性能が高く災害に強いZEH仕様の家は、魅力的な選択肢となるでしょう。
地球環境の保全を考えることも大切ですが、家族が健康で快適に過ごせて、いざというときに困らない家のイメージをふくらませてみるのも良いのではないでしょうか。
また、「メンテナンスコストがかさんでしまった場合、もとが取れるのだろうか?」という心配については、普及が進むことで設備の調達コストが下がる側面はあるので、そこに期待したいところです。
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この記事はハウジングステージ編集部が提供しています。